三温帯と四温帯の違いを徹底解説!倉庫管理のポイント

2024.11.28物流・フルフィルメント
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物流業界では、食品や医薬品など温度管理が必要な商品が増加しており、それに伴い「三温帯」(常温、冷蔵、冷凍)の管理が欠かせない重要課題となっています。特に、倉庫管理者や物流担当者にとっては、温度帯ごとに異なる設備や管理方法、コスト負担が大きな悩みの種です。「どの温度帯に対応した倉庫や輸送手段を選ぶべきか」「エネルギーコストを抑えながら品質を確保する方法はあるか」「三温帯と四温帯の違いを理解し、最適な選択ができるようになりたい」といった声も多く聞かれます。

この記事では、三温帯の基本概念から各温度帯の特徴、管理におけるメリットとデメリット、さらに実践的な管理方法やコスト削減のポイントをわかりやすく解説します。温度管理に悩む方々が実際の現場で活かせる情報を提供し、三温帯管理の成功事例や導入時の注意点も紹介することで、最適な温度管理と効率的な物流運営を実現するサポートをします。

三温帯(常温・冷蔵・冷凍)の定義と目的

三温帯とは、物流において商品の品質を保つために管理する「常温」「冷蔵」「冷凍」の3つの温度帯を指します。これらは、商品ごとの特性に応じて適切な温度を維持することで、品質保持、鮮度維持、さらには消費者への安心感を提供することを目的としています。

三温帯の温度範囲と対象商品

以下は、各温度帯の範囲と対象商品を表にまとめたものです。

温度帯 温度範囲 主な対象商品
常温 15℃~25℃ 乾物、缶詰、電子機器、医薬品の一部など
冷蔵 0℃~15℃ 生鮮食品、乳製品、冷蔵保存が必要な医薬品など
冷凍 -15℃以下 冷凍食品、冷凍保存が必要な医薬品や試薬など

温度管理物流において、三温帯は商品ごとの特性に合わせた適切な管理が求められます。不適切な温度管理は、商品の劣化や品質低下を招くため、食品物流やコールドチェーンにおける温度管理は特に重要です。

四温帯と三温帯の違いとは?

三温帯(常温・冷蔵・冷凍)は多くの物流現場で採用されている一般的な温度管理体系ですが、近年、より高度な温度管理が求められる状況に対応するため、四温帯という概念が注目されています。四温帯には「定温帯(10℃~20℃)」が加わり、特定の商品の鮮度や品質保持に対応するための新たな選択肢を提供します。以下に、三温帯と四温帯の主な違いについて解説します。

四温帯の定義と特徴

四温帯は、三温帯に「定温帯」が追加された温度管理体系です。この定温帯は、三温帯の中で不足していた温度範囲をカバーすることで、より精密な温度管理が可能になります。特に、以下のような商品や状況での利用が適しています

  1. 鮮度保持が重要な高品質商品
    • 果物や野菜、特に低温障害を受けやすい商品(例:バナナやマンゴー)
    • チョコレートなど、極端な低温や高温で品質が劣化しやすい食品
  2. 特殊な医薬品やバイオ製品
    • 保存温度に厳しい条件がある試薬やバイオ医薬品
    • 一部のワクチンや細胞培養製品
  3. 特殊用途での物流
    • 化学製品や精密機器など、一定の温度範囲を超えると性能が損なわれる製品

定温帯では、温度を10℃~20℃に保つことを目的とした「定温倉庫」や「定温配送」が必要になります。この温度範囲は、極端な冷却や加温を避けることで、商品劣化のリスクを最小限に抑えられるという利点があります。

項目 三温帯 四温帯
構成温度帯 常温・冷蔵・冷凍 常温・定温・冷蔵・冷凍
対応温度範囲 常温(15℃~25℃)
冷蔵(0℃~15℃)
冷凍(-15℃以下)
常温(15℃~25℃)
定温(10℃~20℃)
冷蔵(0℃~15℃)
冷凍(-15℃以下)
適用商品 幅広い一般商品に対応 特定温度範囲に敏感な商品に対応
管理精度 汎用的な温度管理で対応可能 より精密な温度管理が求められる
導入コスト 比較的低コスト 定温帯の追加によりやや高コスト
主な活用分野 食品物流、医薬品輸送 高品質食品、バイオ医薬品、精密機器の物流
温度帯別輸送
手段の必要性
冷蔵・冷凍車が中心 定温対応トラックが必要

各温度帯の特徴と違い

物流における温度管理は、商品の品質を保持するための重要な要素です。常温・冷蔵・冷凍という三温帯それぞれには、異なる管理目的や特徴があり、保管する商品や利用する設備も異なります。この章では、各温度帯の専門的な特徴や適した商品の例を深掘りして解説します。

項目 常温 冷蔵 冷凍
温度範囲 15℃~25℃ 0℃~15℃ -15℃以下
主な対象商品 乾物、缶詰、電子機器 生鮮食品、乳製品、医薬品 冷凍食品、バイオ医薬品
管理の焦点 湿度管理、換気 冷却設備、温度安定性 冷却効率、冷気漏れ防止
導入コスト
主な課題 温湿度変動 湿度管理、冷却装置の維持 高コスト、解凍時の品質低下

常温の特徴と適した商品

定義と概要
常温は、15℃~25℃の温度範囲で管理される環境を指します。乾物や缶詰、電子機器など、温度変動に対する耐性が比較的高い商品が対象です。この温度帯では、温度よりも湿度管理が品質維持の鍵となります。

常温倉庫の専門的な特徴

  1. 空調と湿度管理が中心
    常温倉庫では、商品を劣化させないための湿度管理が重要です。特に食品物流においては、湿度が高すぎるとカビの発生や風味劣化、低すぎると乾燥や変色が発生します。
  2. 年間を通じた安定した運用が可能
    外気温の影響を受けにくい地域では、比較的安定した管理が可能です。ただし、季節ごとの温度変動が激しい地域では、加湿・除湿設備を導入し、環境を整える必要があります。
  3. 低コストでの運用
    常温倉庫は、冷却設備が不要であるため、導入コストや運用コストが低いことが特徴です。ただし、湿度管理装置の導入や維持には注意が必要です。

適した商品例

  • 食品:乾物(パスタ、米、豆類)、缶詰
  • 工業製品:電子機器、精密機械
  • 医薬品:湿気に敏感でない錠剤やカプセル型医薬品

冷蔵の特徴と適した商品

定義と概要
冷蔵は、0℃~15℃の温度範囲で、鮮度保持が求められる商品に適しています。温度変動による品質劣化を防ぐため、生鮮食品や医薬品、乳製品などが対象となります。この温度帯は、品質保持と消費期限の延長に直接関係します。

冷蔵倉庫の専門的な特徴

  1. 冷却設備が必須
    冷蔵倉庫では、温度を一定に保つための冷却装置が必須です。温度センサーや湿度管理システムを活用することで、商品に適した環境を維持します。
  2. 湿度管理の重要性
    生鮮食品や乳製品は湿度にも影響を受けやすいため、冷却だけでなく湿度調整が不可欠です。過度な乾燥を防ぐためにミストシステムが導入されることもあります。
  3. 温度分布の均一性
    冷蔵倉庫では、倉庫内の温度分布が均一であることが求められます。倉庫内の冷気循環システムや棚の配置が、温度の偏りを防ぐ鍵となります。

適した商品例

  • 食品:果物、野菜、乳製品(ヨーグルト、チーズ)、飲料
  • 医薬品:ワクチン、インスリン、保存温度が厳密に規定されている薬剤
  • 化学製品:温度依存性のある試薬、特殊液体

より冷蔵温度帯について知りたい方、EC冷蔵倉庫に興味がある方はこちらの記事もぜひご覧ください。
>>EC向け冷蔵倉庫ガイド|物流代行サービスの利用で効率化する方法

冷凍の特徴と適した商品

定義と概要
冷凍は、-15℃以下の温度で管理され、長期保存が必要な商品に適しています。低温での保存により、微生物の活動を抑え、食品の鮮度や医薬品の有効成分を維持します。この温度帯は、長期間にわたる保存を可能にし、品質劣化を最小限に抑えることを目的としています。

冷凍倉庫の専門的な特徴

  1. 高性能冷却設備
    冷凍倉庫では、-15℃以下を維持するための冷却設備が導入されます。断熱性能が高い倉庫構造と合わせて、冷却効率を最大化することが重要です。
  2. 冷気漏れ防止のための特殊構造
    ドアの開閉時に冷気が漏れるのを防ぐため、エアカーテンや二重扉が採用されています。これにより、内部温度の安定が確保されます。
  3. 品質保持期間の延長
    冷凍保存は微生物の活動を抑制するだけでなく、食品の栄養価や風味を長期間維持することが可能です。ただし、一度解凍すると品質が大幅に低下するため、輸送時にも徹底した温度管理が必要です。

適した商品例

  • 食品:冷凍肉、冷凍魚介類、冷凍野菜、冷凍調理食品
  • 医薬品:バイオ医薬品、一部の希少薬剤
  • 特殊製品:長期保存が必要な研究用試薬、冷却が必須な化学品

上記のような冷凍倉庫を使用したEC物流や物流代行に興味のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
>>ECにおける冷凍倉庫の役割と効率的な活用方法

 

各温度帯の適切な選択と運用の重要性

各温度帯の特性を正しく理解し、商品特性に応じた倉庫や輸送手段を選択することが、品質保持とコスト効率化の鍵となります。また、温度帯別輸送を活用し、倉庫から配送まで一貫して温度管理を徹底することで、商品の価値を最大化し、廃棄リスクを最小化することが可能です。これにより、食品物流や医薬品輸送における信頼性を高めることができます。

温度帯ごとの物流倉庫の設備と管理システム

物流倉庫の設備と管理システムは、温度帯ごとに大きく異なります。それぞれの温度帯で求められる機能や技術は、商品品質を維持するための基盤となる重要な要素です。

常温倉庫の設備と温度管理システム

常温倉庫は、温度変動の影響を受けにくい商品を保管するために設計されています。

  • 基本設備:空調設備や換気システムを導入し、温度と湿度のバランスを保つことが中心です。
  • 湿度管理:特に食品物流では湿度が品質に影響するため、加湿・除湿装置が利用されます。
  • 管理システム:センサーを用いて温湿度をリアルタイムで監視し、変動がある場合は自動的に調整します。

冷蔵倉庫の設備と温度管理システム

冷蔵倉庫では、生鮮食品や医薬品の鮮度保持が重要です。温度を0℃~15℃に安定させることが求められます。

  • 冷却設備:冷蔵ユニットと断熱材を使用して、外気温の影響を最小限に抑えます。
  • 湿度調整:果物や野菜の鮮度を保つため、ミストシステムを活用した高精度な湿度管理が行われます。
  • 温度センサー:IoT技術を活用したセンサーで、温度変動をリアルタイムで監視します。

冷凍倉庫の設備と温度管理システム

冷凍倉庫は、-15℃以下の厳密な温度管理が必要です。冷凍食品や医薬品などの長期保存に適しています。

  • 高性能冷却装置:強力な冷凍機が設置され、内部温度を一定に保つための効率的な冷却が行われます。
  • 冷気漏れ対策:二重扉やエアカーテンを使用し、冷気の損失を防ぐ設計です。
  • 断熱性能:厚い断熱材や冷却性能を強化した壁構造が導入されています。
  • 監視システム:温度データをクラウドで管理し、異常発生時に即時アラートを発するシステムが普及しています。

温度センサーとIoTの活用

全温度帯において、IoT技術の活用が進んでいます。倉庫内の温度・湿度データをリアルタイムで収集・分析し、異常時にはアラートを送信することで、迅速な対応が可能です。また、AIを組み込んだシステムにより、最適な冷却スケジュールを自動調整する技術も導入され始めています。

三温帯管理におけるコストと効率化の課題

三温帯(常温・冷蔵・冷凍)の管理は、商品品質を維持するために不可欠な要素ですが、同時にエネルギーコストや運用効率の課題も抱えています。それぞれの温度帯で異なる設備や運用体制が求められるため、課題を理解し、効率的な対策を講じることが重要です。

常温倉庫のコストと管理のメリット

常温倉庫は、冷却設備が不要なため、導入コストや運用コストが比較的低いのが特徴です。自然換気システムを活用することで、エネルギー消費を抑えたり、湿度センサーを導入し、自動的に調整を行うシステムを活用することで効率的な管理が可能です。
ただ、高湿度環境ではカビや腐敗、低湿度環境では乾燥や品質劣化のリスクが高まります。湿度センサーや除湿・加湿設備が必要になる場合があります。

冷蔵倉庫のコストと管理上の注意点

冷蔵倉庫では、0℃~15℃を維持するために冷却設備が必須であり、その維持費用が運用コストの大部分を占めます。特に高温多湿な季節の電力消費や、設備の老朽化を防ぐための定期的なメンテナンスが必要です。
効率化するには、断熱材を強化することで、冷却効率を向上を行うことが一つの方法です。また、ピークシフト運用を採用し、電力料金が安い時間帯に冷却を強化する、冷蔵ユニットにIoTセンサーを取り付け、稼働状況をモニタリングし、無駄な運転を削減することも有効となっています。

冷凍倉庫のコストと課題

冷凍倉庫では、-15℃以下を維持するための高性能な冷却設備が必要です。エネルギー消費が急激に増加しやすくメンテナンスコストも他の温度帯より頻繁に発生します。

また、大きなリスクの一つとして、冷凍食品や医薬品では、一度解凍されると品質が大きく低下します。このため、輸送時や保管時の温度変動リスクを最小限に抑える必要があります。

エアカーテンや二重扉を導入し、冷気漏れを防ぐことや、自動ドアシステムを採用し、必要最小限の開閉に抑えてエネルギーの消費を押さえることができます。
また、冷却システムの効率を最大化するために、断熱材の強化と冷却器の配置を最適化するのも効率化ポイントとなっています。

エネルギーコスト削減のポイント

三温帯管理全体の効率化を図るためには、エネルギー消費を削減する取り組みが不可欠です。

  1. IoTによるエネルギー管理
    • 温度センサーや湿度センサーを活用してリアルタイムデータを取得し、冷却装置や空調設備の稼働を最適化します。
    • AIを利用した需要予測システムを導入することで、エネルギー使用を予測し、ピーク負荷を回避します。
  2. 再生可能エネルギーの活用
    • ソーラーパネルや風力発電を導入することで、倉庫全体の電力消費を補助的に賄います。
  3. 高効率冷却設備の導入
    • インバータ式冷却ユニットや最新型の冷却システムを採用することで、従来型設備よりも大幅なエネルギー削減が可能です。

温度帯管理の導入時の重要ポイント
三温帯管理を導入する企業の多くは、物流コストや商品品質の向上に成功しています。以下に、三温帯管理の導入時の注意点を紹介します。

導入プロセスでの注意点

  1. 商品の特性に合わせた温度帯の選定:温度帯を誤ると品質が低下するリスクがあるため、商品特性に合わせて最適な温度帯を選定することが重要です。
  2. 設備投資とコストのバランス:冷蔵・冷凍設備には多額のコストがかかるため、必要な範囲に限定して導入し、ROI(投資収益率)を考慮することがポイントです。
  3. システムの運用監視体制の整備:自動化された温度管理システムでも、万一の異常に対応するための監視体制が必要です。人的な確認と連携することで、さらに精度の高い管理が可能です。

まとめ

三温帯管理は、物流業界において商品品質を維持するために不可欠な温度管理手法です。常温・冷蔵・冷凍それぞれの温度帯の特徴と対応する商品を理解し、適切な倉庫や設備を導入することで、エネルギーコストを抑えつつ品質を維持することが可能になります。コストや設備投資が必要となりますが、IoTを活用した自動化や断熱強化などの取り組みにより、効率的な運営も期待できます。

今後、物流の温度管理技術はますます進化する見込みがあり、企業にとって最適な管理方法を選択することで、競争力の向上や顧客満足度の向上にもつながります。

ウルロジでは冷凍・冷蔵食品商材に特化した専用の物流体制を構築。冷凍・冷蔵食品ならではの物流課題を解決し、要望としてあがりやすい特殊梱包作業にも応える柔軟性を実現しています。冷凍・冷蔵でお悩みがありましたらお気軽にご相談ください

タグ : コスト削減 在庫管理 EC物流用語 EC物流 冷凍冷蔵
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からSNSウェビナー等での情報発信を行う。