脱炭素社会とは?物流が果たす役割とその具体的な解決策を解説
2025.08.01物流・フルフィルメント地球規模で気候変動への対応が急務となる中、「脱炭素社会」の実現はあらゆる業界にとって避けて通れない課題となっています。特に、エネルギー消費やCO₂排出量が多いとされる物流業界では、その社会的責任がますます大きくなってきました。
本記事では、まず「脱炭素社会」や「カーボンニュートラル」といった基本的な概念を整理したうえで、
炭素税や排出量取引制度といった政策的な枠組みにも触れながら、脱炭素の全体像を明らかにします。
さらに、物流業界における現状の課題を踏まえつつ、モーダルシフトやAIによる最適ルートの活用、越境EC物流の効率化など、実際に取り組まれている具体策をご紹介します。また、ヤマト運輸や佐川急便といった先進企業の事例を通じて、実現可能なステップをわかりやすく解説していきます。
脱炭素社会への移行は、もはや大企業だけの課題ではありません。
中小規模の事業者にとっても、物流の最適化や環境配慮は今後のビジネスを左右する重要なテーマです。
しかし、「現状把握や改善策の検討に手が回らない」「脱炭素を意識した物流の仕組みを自社で構築するのは難しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
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目次
脱炭素社会とは?
脱炭素社会とは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする社会のことを指します。これは、地球温暖化を抑えるための世界的な取り組みの一環であり、2020年の菅元首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、日本でも本格的に議論が進められています。
参照:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)やパリ協定の枠組みにもとづき、多くの国や企業が自発的・義務的に排出削減に取り組む中、日本の産業界でも“脱炭素”は経営の重要テーマとなっています。とりわけ、エネルギーや交通といったインフラに直結する業界では、自社の環境負荷を正確に把握し、持続可能な業務設計を行うことが急務となっています。
脱炭素とともに聞く「カーボンニュートラル」とは何か
カーボンニュートラルとは、CO2排出量から森林などによる吸収量を差し引いた「実質ゼロ」の状態を指します。脱炭素社会のゴールがこのカーボンニュートラルの実現であり、そのために企業や自治体は排出量削減と吸収・オフセットの両面からアプローチしていく必要があります。
では、この「脱炭素」に向けた政策とはどのようなものなのでしょうか。
次章では、現在注目されているカーボンプライシングの仕組みと制度について解説します。
現状の有効な手段であるカーボンプライシングと今後の展望について
カーボンプライシングとは、CO2排出に対して「価格(コスト)」を設けることで、経済活動における環境負荷を可視化・抑制する仕組みです。企業が排出量に応じた費用を負担することで、排出量削減のインセンティブを働かせる政策手段として注目されています。
炭素税
炭素税は、主に化石燃料の使用量に応じて課税される制度です。日本でも2012年から「地球温暖化対策税」として導入されており、燃料取引価格に上乗せする形で徴収されています。税負担が増すことで、企業は再生可能エネルギーや省エネ機器への切り替えを促されるという仕組みです。
参照:地球温暖化対策のための税の導入 | 総合環境政策
排出量取引制度
排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)は、国や自治体が総排出量の上限(キャップ)を設定し、企業がその枠内で排出権を取引する仕組みです。EUではすでに運用されており、日本でも東京都や埼玉県で先行導入されています。
参照:キャップ・アンド・トレード方式による 国内排出量取引制度について
これにより、企業間で「排出削減の進んだ企業から、進んでいない企業へ排出枠を譲渡する」といった柔軟な対応が可能となり、全体最適を促進します。
脱炭素の今後の動き
今後、脱炭素に関する政策や規制は一層高度化・国際化していくと予想されています。特に注目されているのが「炭素価格」の国際的な標準化の動きです。これにより、国や地域による価格差をなくし、公平かつ効率的に温室効果ガスの排出削減を促す仕組みが整えられると期待されています。
また、企業にはスコープ1・2(スコープ1=自社の施設や車両からの直接排出、スコープ2=購入した電力などの間接排出)だけでなく、バリューチェーン全体を対象とするスコープ3(自社以外の排出)の対応が求められるようになってきています。加えて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠した気候リスク情報の開示も、投資家や取引先から強く求められるようになっており、企業価値や信用にも直結する課題です。
参照:Scope1、2排出量とは | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
こうした背景から、単なる制度順守にとどまらず、脱炭素は経営戦略の中核に据えるべきテーマとなっています。業種や規模にかかわらず、脱炭素への取り組みは「コスト」ではなく「競争力強化」と捉え、先行して対応を進めることが今後の持続可能な成長のカギとなるでしょう。
次に、これらの政策が物流業界にどのような影響を与えているのかを見ていきましょう。
脱炭素に向けた物流業界の現状と直面する課題
この章では、物流業界が直面している脱炭素化の障壁について具体的に解説します。
物流業界は、日本のCO2排出量のうち、運輸部門からの排出量は17.7%となっています。(出典:物流をめぐる状況について)
社会全体の脱炭素化に向けて削減の対応が不可欠なセクターです。しかし、現場レベルではさまざまな実務的・構造的課題に直面しています。
モーダルシフトの困難さ
トラック輸送から鉄道・船舶輸送への転換は理想的ですが、インフラの整備状況や積載効率、納期への影響などの要因でスムーズに移行できないケースが多く見られます。
人手不足と効率化の両立
たとえば、2024年4月に施行された「働き方改革関連法」(参照:「働き方改革関連法」の概要)によって、ドライバーの時間外労働が大幅に制限されることで発生した「2024年問題」は、物流の供給能力に大きな影響を与えています。
ただ、ウルロジが実施した意識調査によれば、消費者の84.8%がこの問題に課題意識を持ち、7割が到着遅延を受け入れると回答しています。また、価格転嫁においても3人に1人は受け入れるという少し意外な結果となっています。
ウルロジでは、消費者500人超を対象にした「2024年問題に関する意識調査」を実施しました。
この資料では、
・消費者が「配送遅延を許容する」本当の理由
・再配達や送料負担に対する期待値
・物流の脱炭素化と2024年問題の意外な関係
実務者目線でのヒントが詰まった調査資料はこちらからダウンロード可能となっています。
物流2024年問題消費者意識調査2点セットをダウンロードしてみる
また、以下の記事でも上記の問題について解説しており、物流の2024年問題における「宅配」と「企業間物流」についてより深く知りたい場合はこちらをぜひご覧ください。
物流の2024年問題の影響と対策【物流ライターがわかりやすく解説】
投資負担の大きさ
EVトラックの導入、倉庫の再エネ対応、ITシステムの導入など、脱炭素に必要な設備投資には多額の初期費用が発生し、とくに中小事業者にはハードルが高いのが現状です。
こうした課題を乗り越えるためには、技術革新や制度的支援の活用とともに、現場の工夫と段階的な改善が求められます。次章では、実際に物流現場で取り組まれている脱炭素施策を紹介します。
物流においての脱炭素への取り組み方
脱炭素社会の実現に向けて、これまで見てきたように物流業界が果たすべき役割は大きく、各企業に求められる対応も年々高度化しています。そのような背景のもと、物流現場では実効性の高い脱炭素施策が模索され、実際に取り組みが加速しています。
中でも、環境負荷を抑えつつ効率性を高めるアプローチとして注目されているのが、モーダルシフト、AIを活用した発送ルートの最適化、そして越境ECにおける発送業務の効率化です。以下では、これら3つの具体策について、それぞれの特徴と導入メリットを詳しく紹介します。
① モーダルシフト
トラック輸送から、CO2排出量が少ない鉄道や船舶といった輸送手段に切り替える「モーダルシフト」は、物流業界が脱炭素を実現するうえで非常に効果的な方法の一つです。国土交通省のデータによると、10トントラックによる輸送と比較した場合、鉄道輸送のCO2排出量は約1/9、内航船は約1/4とされており、大量輸送を行う際の環境負荷低減に大きく貢献します。
引用:環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 – 国土交通省
例えば、ネスレ日本株式会社は、JR貨物グループ(日本貨物鉄道・全国通運・日本運輸倉庫)と連携し、2024年2月から静岡県島田市の島田工場と大阪府の百済貨物ターミナル駅を結ぶ中距離帯(200〜350km)での定期貨物鉄道輸送を開始しました。対象製品は「ネスカフェボトルコーヒー」で、1日あたり200トンの輸送量を、トラックから鉄道へと切り替えます。
参照:ネスレ日本(JR貨物グループと連携し 食品・飲料業界初(※1)の中距離帯での定期貨物鉄道輸送を開始)
この取り組みにより、年間約900トンのCO₂排出削減が見込まれており、ドライバー不足や長距離運転の負担軽減にも貢献します。
モーダルシフトの実現には、貨物の積み替え拠点(インターモーダルターミナル)の整備や、列車や船舶のダイヤ調整、納期への柔軟な対応といった課題も存在します。特にBtoC配送では、即日・翌日配達ニーズとの両立が難しくなる場面もあるため、BtoB輸送や中長距離輸送を中心とした活用が現実的です。
今後は、これらの課題に対して官民連携によるインフラ整備や、輸送の計画段階からの最適ルート設計が求められています。持続可能な物流の実現には、こうしたモーダルシフトの積極的な導入が不可欠です。
② AIを利用した発送ルートの最適化
AI技術を活用した発送ルートの最適化は、CO2排出削減と業務効率の両立に大きく貢献する手法です。従来は経験や勘に頼っていた配送ルートの決定も、AIを導入することで、リアルタイムの交通情報・天候・積載効率などのデータをもとに、最短かつ最適なルートを自動で割り出すことが可能になります。
さらに、時間指定配達との両立も可能なため、顧客満足度の維持・向上にも寄与しています。
また、ドライバーの勤務時間の短縮や、業務負荷の軽減にもつながり、働き方改革の一環としても注目されています。物流のデジタル化が進む中、AIを活用したルート最適化は今後ますます重要な施策となるでしょう。
③ 越境ECの発送業務の効率化
国際配送においても脱炭素は重要な課題です。特に越境ECが拡大する中、海外輸送の最適化はCO2削減の観点からも注目されています。
たとえば、日本国内で注文を受けた商品を海外に発送する場合、従来は1件ずつ発送していたものを、倉庫でまとめて梱包・仕分けし、一括で輸出する「バッチ処理方式」に切り替えることで、航空便の積載効率を大幅に向上できます。この仕組みは、航空便の便数削減、貨物の空きスペース減少による燃料消費の抑制などに寄与し、結果としてCO2排出の抑制につながります。
また、発送業務の一部を海外の現地倉庫(現地フルフィルメント)に委託することで、無駄な移動距離を削減できるケースもあります。たとえば東南アジア圏や北米市場など、現地での在庫保管と出荷体制を構築することで、国際輸送の回数そのものを削減でき、結果として環境負荷軽減とリードタイムの短縮を両立できます。
これらの取り組みは、環境配慮だけでなく、国際物流の効率性向上・コスト最適化といった面でもメリットがあり、持続可能な越境EC戦略に不可欠な要素です。
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脱炭素社会に向けた物流企業の導入事例
日本を代表する物流企業の多くは、すでに脱炭素化に向けた取り組みを積極的に推進しています。ここでは、その中から代表的な企業の事例を紹介し、どのようにして脱炭素社会への貢献を実現しているのかを見ていきます。
ヤマト運輸株式会社
ヤマト運輸は、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、多角的な施策を進めています。まず、配送車両の電動化を積極的に進めており、2023年時点で全国に約1,000台のEV車両を導入済みです。今後も継続的な拡充を予定しており、これによりCO2排出量の大幅な削減が見込まれています。さらに、再配達の削減にも力を入れており、コンビニ受け取りやPUDOステーションといった多様な受取方法の普及を図ることで、不要な配送回数の削減と燃料使用量の抑制を実現しています。
また、物流施設においてはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計を導入。施設自体の省エネ性能を高めるだけでなく、再生可能エネルギーの活用により、運用時のCO2排出を最小限に抑える取り組みが進められています。これらの総合的な施策により、持続可能な物流ネットワークの構築を目指しています。
佐川急便
佐川急便もまた、グループ全体での脱炭素化を推進しており、環境負荷の少ない物流インフラの整備に注力しています。主な施策として、CNG(圧縮天然ガス)車両の導入が挙げられます。2023年末時点で約1,300台のCNG車を全国で稼働させ、都市部を中心にディーゼル車からの転換を進めています。これにより、排出ガス中の有害物質削減と温室効果ガス排出の低減を両立しています。
さらに、長距離輸送においてはモーダルシフトを積極的に展開。トラック輸送から鉄道輸送への切り替えにより、CO2排出量をトラックの約6分の1にまで抑えることに成功しています。加えて、一部の大型物流施設では太陽光パネルを屋根に設置し、施設内で使用する電力の再生可能エネルギー化を進めるなど、エネルギー自給型のインフラ整備にも取り組んでいます。
参照:気候変動 | サステナビリティ | SGホールディングス
これらの事例は、脱炭素物流の具体的な道筋を示す好例であり、他の企業にとっても有益なヒントとなるでしょう。
脱炭素物流を実現するための具体的なステップ
脱炭素物流を目指すうえで、単に車両や設備を省エネ化するだけでは不十分です。重要なのは、自社の事業全体を俯瞰し、現状の排出量や課題を「見える化」した上で、段階的かつ継続的に改善を進めていくことです。ここでは、脱炭素に向けた具体的なステップを紹介します。
まずは自社の現状を「見える化」しよう
第一歩として欠かせないのが、自社の温室効果ガス(GHG)排出量を正確に把握することです。物流における排出源は多岐にわたります。たとえば、配送車両の燃料使用、倉庫の電力消費、梱包資材の調達・廃棄などがあります。これらを体系的に整理し、排出量を定量的に測定することで、取り組むべき優先順位が明確になります。
国際的な枠組みとしては、「GHGプロトコル」や「SBT」などのガイドラインに基づいて算出する方法が一般的です。最近では、中小企業向けにも簡易的なカーボンフットプリント計算ツールが提供されており、初期段階からでも取り組みやすくなっています。
この段階では、自社の排出量だけでなく、取引先や協力会社を含めたバリューチェーン全体での排出把握も重要です。
・Scope 1(自社直接排出)
・Scope 2(電力などの間接排出)
・Scope 3(サプライチェーン排出)
を意識し、どこに大きな排出源があるのかを可視化することで、効果的な戦略立案が可能になります。
脱炭素化を実現するために必要な事業コストの捻出方法について
脱炭素化への取り組みは、初期投資や運用コストを伴う場合がありますが、長期的な視点で見れば、企業の競争力強化や新たな収益機会の創出につながる重要な投資です。ここでは、脱炭素化を実現するために必要な事業コストをどのように捻出していくか、その主な方法を解説します。
まず、最も基本的な資金源は企業が持つ内部資金(自己資金)です。企業がこれまで蓄積してきた利益や内部留保を脱炭素化のための投資に充てるほか、既存事業の効率化によってコストを削減し、その削減分を新たな脱炭素投資に回す方法があります。
自己資金だけでは不足する場合や、大規模な投資が必要な場合には、外部からの資金調達を検討します。
特に補助金・助成金の活用も、事業コストを直接的に補填してくれるため、脱炭素化の強力な後押しとなります。国や地方公共団体が提供する様々な制度を積極的に活用し、専門家のサポートも視野に入れながら申請を進めることが重要です。
補助金・助成金については、各年で違ってくるため、物流関連の補助金・助成金が載っているウェブサイトのリストアップを実施しました。
サイト名 | URL | 特徴 |
国土交通省ウェブサイト | https://www.mlit.go.jp/ | 物流政策、交通政策に関する最新情報や補助金・助成金情報が掲載されています。特に「物流」や「環境」関連のセクションを確認してください。 |
環境省ウェブサイト | https://www.env.go.jp/ | 脱炭素、省エネルギー、再生可能エネルギー導入に関する補助金情報が豊富です。物流施設の環境負荷低減に資する事業を探す際に有用です。 |
ミラサポPlus | https://www.mirasapo.jp/ | 中小企業庁運営ですが、補助金・助成金情報の条件検索が非常にしやすい総合サイトです。「物流」「運輸」などのキーワードで検索することで、関連する補助金を見つけやすいです。 |
J-Net21 | https://j-net21.smrj.go.jp/ | 中小企業基盤整備機構運営。補助金・助成金のデータベースが充実しており、業種や目的、地域など様々な条件で検索可能。「物流」「運輸業」などで絞り込んで検索できます。 |
各地方公共団体のウェブサイト | 例: 「[都道府県名] 物流 補助金」「[市区町村名] 物流 助成金」で検索 | 地域に特化した独自の補助金・助成金情報が得られます。地域ごとの物流課題に対応した支援策がある場合があります。(例: 東京都産業労働局、大阪府商工労働部など) |
民間運営の補助金・助成金ポータルサイト | 補助金コンシェルジュ、補助金バンク、BizClipなど | 複数の補助金情報を横断的に比較検討しやすいよう整理されています。無料会員登録で個別情報を提供するサービスもあります。(最終確認は必ず公的機関のサイトで!) |
自己資本や融資だけでなく、様々な資金捻出方法を組み合わせることで、脱炭素化に必要な事業コストを着実に確保し、持続可能な社会に向けた事業運営が可能になります。
明日から実施できる脱炭素に向けた具体的な施策
排出状況が見えたあとは、実行可能な対策を段階的に講じていくフェーズです。ここでは、物流企業がすぐにでも取り組める代表的な施策を紹介します。
まず、最も手軽に始められるのが配送効率の改善です。たとえば、配送ルートの最適化による走行距離の削減や、積載率を高めるための物流集約・共同配送の導入は、燃料使用量の抑制につながります。さらに、アイドリングストップやエコドライブの徹底といった運転習慣の見直しも、コスト削減と環境配慮の両立に寄与します。
次に、設備面での対策としては、LED照明への切り替えや断熱性の高い倉庫設備の導入、あるいは太陽光発電の活用などが挙げられます。これらは初期投資が必要になる場合もありますが、長期的にはエネルギーコストの低減や企業イメージ向上にもつながります。
また、梱包資材の見直しも重要です。リサイクル材やバイオマス素材の活用、過剰包装の削減などにより、プラスチック使用量や廃棄物の削減に貢献できます。これに加えて、再配達の削減を目的とした受け取り方法の多様化(例:置き配・宅配ロッカーの活用)も、脱炭素の観点で有効な手段といえるでしょう。
脱炭素物流で、持続可能なビジネスモデルを構築しよう
脱炭素への取り組みは、単なるCSR活動にとどまりません。むしろ、将来的な規制強化や顧客の環境意識の高まりに対応するための、ビジネスの生存戦略そのものです。
たとえば、ESG評価を重視する大手企業との取引を維持・拡大するためには、サプライチェーン全体での環境対応が求められます。加えて、脱炭素に積極的な姿勢を示すことで、顧客からの信頼やリクルーティングにおける優位性も確保できます。
また、省エネ化や効率化によってコスト削減が実現すれば、経営的な持続可能性も向上します。さらに、環境対応をPRの一環として活用すれば、ブランド価値の向上や新たな市場開拓にもつながる可能性があります。
つまり、脱炭素物流の実践は、単なる「コスト」ではなく、むしろ「投資」としての側面を持つ戦略です。持続可能なビジネスモデルを構築するためにも、今こそ本格的な取り組みをスタートさせるべきタイミングといえるでしょう。


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