EC物流における返品フローを整えることでコスト削減と業務効率化を実現
2024.01.17物流・フルフィルメント
実店舗での買い物に比べ返品が多いといわれるEC物流ですが、返品フローはどのように整えればいいのでしょうか。
返品対応は売り上げにはつながらないという意識から、できるだけ負担を減らしたいと考えているEC事業者も多いはずです。
コスト削減と業務効率化を実現するためにどのように返品フローを整えればいいのかご紹介します。
目次
EC物流を圧迫する返品コスト
2021年のエルテックス社の調査によると、ECにおける出荷数に対する商品返品率は5〜10%となっている企業が多いことがわかりました。
年商1~10億未満の企業では35.2%、年商10~100億未満の企業では23.1%が商品返品率5〜10%です。
参考:エルテックス 第17回通信販売調査レポート 「通信販売事業関与者の実態調査2021」
返品は、「売上取消」を意味します。
EC事業者としては、事後に売上が減少する可能性がある返品は極力避けたいところです。
一旦立ったはずの売上がなくなることは、不確実性の高いリスクであり返品率が高ければ高いほど経営戦略を立てづらくなります。
さらに、返品を行うためのリソースを新たに投入しなければなりません。返品業務は売上にはつながらない業務です。
できるだけコストをかけずにルーティン対応したいところですが、返品自体がイレギュラーな事態なので、その対応もルーティンとは異なるものになります。
イレギュラー業務である返品業務に労力を取られることで、人や組織は疲弊しますし経営は停滞します。
返品コストをいかに抑えるかはEC事業を成長させる上では重要です。
ECにおける返品理由
消費者はどのような理由で返品を行うのでしょうか。
ECは自宅にいながらにして買い物ができ届けてもらえる便利なソリューションですが、ECならではのリスクによる返品理由があるのが見えてきました。
消費者都合による「想定していたものと違った」
実際に店頭で手に取ってみたり着てみたりができないため、ECでは届いてから「これではない」と感じるケースが多いです。
そう感じた消費者は返品権を行使できます。返品権は「商品が届いた日を含めて8日間が経過するまでは、届いた商品を返品することができる」という特定商取引法上で定められた権利です。
ちなみに返品不可の表示をサイト上ではっきり見えるようにしておくことで、返品権を行使されるのを回避できます。
また、届けた後にやっぱり使わなくなった、別の商品の方がよかったという理由で返品する消費者もいます。
これは購入してから手元に届くまでタイムラグがあるため、状況や気持ちの変化という不確定要素が介入してしまうことが理由で発生します。
販売者によるミス
販売者によるミスも返品の原因となります。
- 注文された商品とは別の商品を発送してしまう誤発送
- 宛先間違い
- 故障や破損、汚れなど明らかに発送前から問題がある製品を気づかずに発送してしまった
頻発する場合は社内の業務フローに問題があるか、そもそもの製品品質に問題があることが考えられます。
配送業者によるミス
配送業者によるミスも返品や購入取消の原因となります。
- 届け先間違い
- 配送中の破損や汚れ
- 生鮮食品配送の際の冷凍車故障などによる著しい品質の劣化
- 配送時の事故による配送不可状況
状況によっては防ぎようのないものもありますが、届け先間違いなどの明らかに人為的なものが頻発する場合は、業者替えも検討すべきかもしれません。
お届け不能
受取拒否や不在が続き配送不可能、登録住所間違えなどにより、
荷物を届けることができない場合も実質返品のような状況になります。
返品理由別の発生しうる業務
紹介したような返品理由別にどのような業務が発生しうるのか紹介します。
消費者都合の返品で発生する業務
消費者都合の返品の場合、まずは電話やメッセージで返品したい旨の連絡が入ります。
これに対して返品の可否をカスタマーサポートが伝えます。
また、返品のみは対応していないがサイズや色の交換は受け付けるということもあるでしょう。
返品不可の場合は対応がそこで終了し、状況によってはクレーム対応としてひたすら傾聴するフェーズに移ります。
返品可能な場合は、返送の手順を説明し、返送されてきたら検品を実行。在庫に戻すか破棄し、同時に返金処理を行います。
交換商品が発生する場合は、EC事業者側で交換商品の在庫状況を確認し、発送業務を行います。
消費者がECサイト上で購入した場合は購入品が自動的にアカウントに紐付けされますが、交換の場合はフローが異なるので漏れや間違いがないように注意が必要です。
また、ごく稀に連絡なしで返品がされる場合があります。
この場合はカスタマーサポートから消費者に連絡を入れて状況をヒアリングし、対応を決定します。
販売者のミスによる返品で発生する業務
販売者のミスによる返品の場合、クレームとして連絡が入る可能性が高いです。
対応としては消費者が納得するまで傾聴及び謝罪を行い、販売者ができる対応を説明します。
まず消費者への対応パターンとしては
- 返金対応
- 返金か代替品発送の選択
- 返金不可
上記の3パターンです。
さらに手元にある商品の扱い方法が3パターンあります。
- 返品必要
- 写真等のデータを送ってもらいクレームと同様の内容が確認できれば返品は不要
- 無条件で返品不要
当然消費者の要望が通り、手間がかからない方がEC事業者に対する評価は高くなります。
返品がない場合は、クレーム対応が終わればPC上で返金処理だけして終了です。
返品がある場合は対応が増えます。クレームによる返品なので、集荷をこちらで手配しなければいけないかもしれません。
また、配送料はこちら負担だったりコストも増えるでしょう。返品されたら商品の状況を確認する必要もあります。代替品を発送する場合は在庫を確保し発送業務を行います。
一番簡単なのは
写真等のデータを送ってもらいクレームと同様の内容が確認できれば返品なしで返金
ということになります。
品物が生鮮食品の場合は返品してもらっても廃棄するしかないため、この選択肢になることが多いはずです。
また、販売者側のミスで返品が発生する場合、特に顧客はネガティブな印象を持っており今後の発注が見込めなくなるリスクが発生しています。
誠意を持って迅速に対応することが、顧客の離脱を防ぐ上で重要です。
返品対応のコストや業務負荷を軽減することは重要ですが、顧客の不満を取り除く姿勢がまず前提にあります。
配送業者のミスによる返品で発生する業務
配送業者のミスによる返品は、事実がどうなのか判断が難しいケースもあります。
明確なものであれば「注文した商品が期日に届かない」「配達済みになっているのに届いていない」など。
この場合は配送業者のミスで期日間違いや違う住所に届けてしまっていることがあります。
方法としては3種類あります。
- 配送業者の連絡先を伝え、自力で対応してもらう
- 配送業者にEC事業者側が連絡し、状況を確認する
- EC事業者側が新しい商品をすぐに発送し、同時に配送業者に事実確認をする
まだどこに誤配送したのか定かではないようなケースであれば、
「EC事業者側が新しい商品をすぐに発送し、同時に配送業者に事実確認をする」のが顧客満足度が高いでしょう。
お届け不能による返品で発生する業務
お届け不能による返品の場合、お客様に連絡を取りその後の段取りを決めるか、特に連絡はせずに返金対応するか対応が分かれるところです。多くの事業者では業務フローの手間を省くため、特に連絡はせずに返金対応になっています。この場合はお届け不能で返ってきた荷物を検品後、当該のアカウントに返金処理をして終了です。
返品フローを整えるポイント
返品フローは大きく以下のように分けられます。
- 問い合わせ受付
- 消費者から発送
- 受取
- 検品
- 返金
- 代替品手配
- 代替品発送
まず大きな負担となるのが問い合わせ受付です。
ここでは担当者が返品返金の可否をジャッジしますが、一件一件対応するのは対応者によってブレが出ますし、対応スピードが遅くなりリソースの圧迫と顧客満足度の低下につながります。
判断の正確さを向上し対応スピードを上げるために、ある程度自動化やルール決めをすることが必要です。
例えば
- 7日間以内の返品は無条件に返金対応する
- 5,000円以下の商品は無条件に返金対応する
などが考えられます。
返品の発送フローに関しては消費者に任せる場合は明確な案内を掲載しておくことが必要です。
梱包の仕方、伝票の書き方など。整えておくことで、届いた際に返品物ということがひと目でわかります。
返品物を受け取り検品した後の連絡体制も重要です。いつ返品され、どういう状況だったのかを明確にデータで共有しましょう。
返金と代替品手配に関しては行う作業が明確ですが、そこにたどり着くまでの不確定要素をいかに取り除くかが返品フローを整えるポイントです。
全体を通して、人に依存するのではなく、ルールを決めシステマチックにデータ入力するようにルールを整えましょう。
返品フローを整えるメリット
返品フローを整えることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
現場の負担が減り対応スピードが上がる
イレギュラー要素が多い返品業務は、確認事項や検討事項が多く通常の業務フローにはない動きが必要とされます。
これをいちいち個別で対応するのは大きな負担となり現場の処理能力を落とします。
起こりうる現象を洗い出し、返品フローとして整えることで現場の負担を減らし対応スピードを上げることが可能です。
顧客満足度が上がる
返品フローを整え対応スピードが上がることは、問い合わせ時の案内が明確になりスムーズに返金や代替品発送が可能であることにもつながります。
特にクレーム時に迅速に対応することで、カスタマーサポートが長期にわたるクレームを受け、疲弊するリスクを減らし、
対応がスムーズであることでネガティブの印象を持っていた顧客の満足度が上がり、離脱を防ぐだけでなくECとしては評価が上がる可能性もあります。
コスト削減
返品フローを整え自動化することで、全体の作業能率が上がりコスト削減につながります。
カスタマーサポートの対応時間の減少、対応待ちの返品物がなくなる、個別対応せずに返金や代替品発送の手配ができるなど。
コストをかけたくない返品対応に人的リソースを割く事が減りコストを削減できます。
ECでの返品を防ぐためにできること
そもそもECで返品が発生する理由はなんでしょうか。自社の返品理由を一度分析し、ボトルネックを探る必要があります。
もし「こんな商品と思っていなかった」という理由が多いのであれば、
ECサイトに掲示している商品説明や写真に問題がある可能性が高いです。誤解を招く表現がないか、サイズや形が伝わりにくい写真になっていないか見直しましょう。
発送に関する手違いが多いのであれば、社内の業務フローに問題がある可能性が高いです。
人力の不確実な要素が多く入り込んでいないか、導入している複数のツールがうまく連携できていない等がないか見直しましょう。
基本的には自動化できるシステムを導入し、人間が判断する部分を減らすことでミスを削減できます。
まとめ
返品フローは一見お金を生み出すものではないため、フローを整えるのが後回しになりがちです。しかし、コストや業務負荷という面で考えると、現場のリソースや経営を圧迫するリスクが高いと捉えられます。返品フローを整えることで、コスト削減と業務効率化を実現しましょう。また、返品フローがスムーズであることで顧客満足度の向上に繋がります。
とはいえ、自社で全て整えるのは難しいケースも多いのではないでしょうか。
ディーエムソリューションズ(弊社)が提供するウルロジでは、システム連携して返品フローを遂行することが可能です。
返品業務でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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