棚卸とは?実施する目的と方法について

2023.12.20物流・フルフィルメント
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店舗や倉庫業で「本日は棚卸のため休業します」という貼り紙を見かけたことがあると思いますが、棚卸とは具体的に何のために行っているかを知らない人が意外と多いのです。

ほとんどの人は棚卸とは自社の商品が何個あるのかをデータ上の在庫数と付け合わせる作業だと考えているのですが、それだけではないのです。

商品をストックする業種では欠かせない作業である棚卸。今回はこの棚卸を行う目的や方法について解説します。

棚卸とは?

在庫を確認する女性

棚卸作業とはストックされている自社の商品を実際にカウントする作業です。

ただ数を数えるだけではなく商品がストックされている場所、棚番号は合っているか、また商品の消費期限や販売できる良品かどうかのチェックも同時に行います。

また業種によっては商品だけでなく商品が作られる前の部品や原材料、さらに企業で使われている備品や消耗品なども棚卸の対象になります。

売上につながる商品、さらに経費などで購入された備品類など会社のお金に関わるものは棚卸の対象になるのです。

棚卸の目的

棚卸の目的でもっとも重要なのが「利益を確定する」ということです。

もちろん数量がデータ在庫と合っているかどうかの確認をすることも棚卸の目的なのですが、商品の数量だけでは本当の会社の経常利益や損失がわからないのです。

倉庫にストックされている商品は「会社の資産」になりますが、その商品全体の内いくつが不良品で販売不可の商品、無価値な商品なのかを把握しておかないと本当の資産になりません。

また不良在庫だけではなく商品が盗難にあう、または紛失したなどの理由でデータ在庫よりも少なくなっている場合があり、これらのロスも棚卸で発覚するのです。

そして経費として計上されている文房具などの備品も棚卸業務でカウントし、データ上の数と付け合わせることで使った経費が正しいかどうかを照らし合わせることができます。

これら商品や備品のロスを確定させて資産からマイナスさせることで、会社の「実際の利益」が確定するのです。

棚卸は実在庫数をデータと照らし合わせるだけでなく、商品や備品のロス金額を確定させて、正式な利益を算出する目的があるのです。

棚卸の方法

物流アウトソーシング 

棚卸の作業方法は大きく分けると「実地棚卸」と「帳簿棚卸」に分けられます。

現品をスタッフが目視確認し、カウントしてデータ在庫との照らし合わせを行うことを実地棚卸と呼びます。

それに対して実在庫を目視確認するのではなく、帳簿上の入出荷の数値を毎日ミスが無いように改善する業務、システムや伝票の管理を行う作業のことを帳簿棚卸と呼びます。

実地棚卸は実際の商品を目視チェックするため現在の在庫の把握がし易いというメリットがありますが大人数で長時間の作業が必要になるため人件費がかかるというデメリットがあります。

また人為的ミスにより倉庫の奥に追いやられた古い商品などのチェックを見逃してしまうといったデメリットもあります。

帳簿棚卸は入出荷時の伝票の履歴で在庫数が確認され、倉庫の奥にある商品も在庫であるということがシステム上で明確にわかるというメリットがあり、日々の作業が棚卸になるため人件費も実地棚卸に比べれば安くなります。

しかし帳簿棚卸を行い伝票処理に気をつけていたとしても人為的ミスにより伝票を丸々計上し忘れ在庫数が大きくずれてしまうという事故はどうしても発生してしまいます。

また、商品を目視確認していないので販売不可の不良商品などがその時点でいくつあるかを把握することができないというデメリットもあります。

そのため日々帳簿棚卸を行いデータ上の在庫を極力正確にしておき、一定の期間で実地棚卸を行うという方法がベストであると言えます。

実地棚卸の方法

実地棚卸を行うのであれば大掛かりな人員、作業時間が必要になってくるため事前準備や計画が必要です。

商品1点、または1棚分をカウントするのに何時間かかるかを算出して全体をカウントし終える為に必要な時間を割り出します。

そして差異が出たときの追求する時間も加味して目標時間内に終了できる人員を実施する日に確保する必要があります。

一日営業をストップさせてスタッフ全員で棚卸を行う、または深夜の業務が止まっている時間帯に棚卸専門スタッフを派遣してもらい行うなど企業によって作業時間は様々です。

このように業務をストップさせて一定の期間で一気に行う実地棚卸を「一斉棚卸」と呼び、営業時間中に業務をストップさせず決まった棚数を毎日カウントして付け合わせる棚卸方法を「循環棚卸」と呼びます。

一斉棚卸と循環棚卸の詳細はこちらのリンクをご覧ください。

実地棚卸は時間との勝負なのでスタッフごとに担当する棚をあらかじめ決めておき、本番で余計な作業を増やさないようにします。

そしてスタッフが決められた棚をカウントし、同時に良品か不良品かもチェックして数を集計します。

その際倉庫内の地図や棚一覧を用意して、カウントが終わった棚の場所にチェックを入れて進捗具合がわかるようにします。

カウントが終了したら集計した数量を各責任者がデータ在庫と照らし合わせ、差異があった場所はそこをカウントした人とは別のスタッフにチェックさせる等指示をして修正を行い、全在庫数を確定させます。

実地棚卸は決められた時間内に終了できないと全てが無駄になってしまう可能性があるため、準備と人員がとても重要になってきます。

派遣や新人アルバイトなど作業が少し遅いスタッフも考慮に入れ、事前にしっかりと作業計画を立てておきましょう。

帳簿棚卸の方法

帳簿棚卸は実地棚卸と違い作業日を決めて行うのではなく日々の管理業務になります。

例えば今までは入出荷の伝票を保管するのみだったアナログの業務から在庫管理システムを導入してすべてデータ上で管理するように業務改善し、帳簿上のミスを減らす。

または全ての入出荷の帳簿をエクセルなどのデジタルなデータでも保存してアナログとデジタル、両方で照らし合わせができるようにする。

など入出荷時の帳簿管理の業務を改善し、在庫の差異を発生させてしまうミスを軽減させる業務が帳簿棚卸です。

実地棚卸で差異が発覚したら入出荷の履歴と照らし合わせるのですが、アナログ管理のみだと伝票を紛失した、または古い伝票で数字が霞んで読めない、さらには悪意のあるスタッフが帳簿を書き換えた、などのトラブルが発生します。

アナログの帳簿だけでなくデジタルでも管理されていればダブルチェックができるため、たとえ実地棚卸で差異が発覚しても履歴を追うことが容易になります。

実際の在庫数である「実在庫」と帳簿上の数である「理論上在庫」のズレは人が関わっている限りどうしても起こってしまうものです。

その誤差を極力少なくするため、または差異が出たときの原因究明をし易くするために帳簿棚卸は重要なのです。

実在庫と理論上在庫の差異が発生する原因の詳細はこちらのリンクをご覧ください。

おわりに

棚卸は多くの人員や作業時間が必要になる大変な業務ではありますが、健全な営業を行う上では欠かせない業務です。

会社の大小、在庫商品の量に関わらず棚卸は必ず行い、正確な経常利益を算出できるようにしておきましょう。

タグ : ECお役立ち情報 EC運用 在庫管理 業務効率化
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。