東南アジアの越境ECの市場規模は?始め方や進出時の注意点を紹介

2024.11.21ECサイト
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東南アジアの越境ECの市場規模は?始め方や進出時の注意点を紹介

東南アジアのEC市場は、目覚ましい成長を遂げています。全体の人口は6億人を超え、日本の5倍以上という巨大なマーケットを形成している地域です。特にスマートフォンの普及が進み、インターネット利用者が急増していることから、今後さらなる市場拡大が期待されています。

急成長している東南アジア市場への早期参入は、越境ECの事業拡大の大きなチャンスとなるでしょう。この記事では、シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシアの6カ国における市場規模と特徴、主要なECプラットフォーム、越境ECの注意点などを詳しく解説します。

越境ECを検討している方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

>>越境ECとは?その将来性や失敗しない始め方5STEPなどを徹底解説【基礎知識】

【国別】東南アジアの越境ECの市場規模

東南アジアの越境ECの市場規模

出典:各国における越境ECの状況

ASEAN(東南アジア諸国連合)全体の人口は6億人を超えており、日本の5倍以上もの人が暮らす巨大マーケットです。東南アジアのEC市場は急速に拡大を続けており、日本政策金融公庫の「各国における越境ECの状況」によると、2025年度には2021年度の約2倍の市場規模になると予測されています。

特に最近は、スマートフォンの普及とともにインターネット利用者が急増しており、ECでも盛り上がりを見せる地域です。早い段階で東南アジアへ参入すれば、市場拡大の波に乗って事業を拡大させられることも夢ではありません。

ここでは、東南アジアの6カ国の市場規模を国別に紹介します。

シンガポール

各国のEC市場成長率

出典:各国における越境ECの状況

シンガポールは東南アジアの中でも、越境EC市場が盛り上がりを見せる地域です。日本政策金融公庫の「各国における越境ECの状況」によると、2022年のEC市場成長率は、世界第1位と言われるほど大きな市場です。Statistaによると、2022年の売上高は約72億米ドルに達し、2025年には約114億米ドルまで成長すると予測されます。

この成長を支えているのが、スマートフォンやインターネットの高い普及率、高い所得などです。人口約600万人のうち、インターネットの普及率は90%を超えています。また、シンガポール統計局によると、2022年の月間世帯収入(中央値)は、日本円で100万円を超えました。日本の世帯年収の中央値は423万円のため、世帯年収の中央値は日本の2倍を超えていると言っても過言ではありません。

東南アジアの中では人口が少ない方ですが、それに反してEC市場は拡大しています。

タイ

タイはアジア地域で2位、世界では19位のEC市場規模を誇る国です。タイ電子商取引協会(ETDA)によると、EC市場規模は2023年に265億米ドル、2025年には340億米ドルまでに成長すると予想されます。

インターネット普及率は2026年までに84%に達すると見込まれており、オンラインで買い物をする人の数もどんどん増えてきています。その他に、銀行口座保有率やソーシャルメディア利用率の高さも、EC市場が急成長している要因です。

また、タイの人は海外製品への抵抗が少ない傾向にあるようで、越境EC(アメリカ・中国・日本)がEC総支出の50%を占めています。こうした状況からタイのEC市場は、注目を集めています。

フィリピン

フィリピンのEC市場は、急速な成長を遂げています。フィリピンのEコマース市場規模・シェア分析:成長動向と予測(2024年~2029年)によると、市場規模は2024年に155億1,000万米ドルに達し、2029年には約295億7,000万米ドルに拡大すると予測されています。この成長を支えているのは、インターネットやスマートフォン普及率の向上です。シンガポールやタイと比較すると低いものの、2020年時点でインターネット普及率は67%に達し、多くの人がスマートフォンを使ってECサイトにアクセスしています。

2020年頃は、コロナ禍により外出制限が課される中、ECの需要が急増しました。特にLazadaやShopeeといったプラットフォームが普及し、食品や医薬品などの必需品をオンラインで購入する動きが広がりました。一方、一人当たりの年間消費額は91ドルと低く、さらなる成長の余地があります。今後もインフラ整備やインターネット速度の向上が進めば、さらなる市場拡大が見込まれるでしょう。

インドネシア

インドネシアのEC市場は、東南アジアの中でも大きい規模と高い成長率を誇ります。インドネシアのeコマース市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年) によると、2024年に584億3,000万米ドル、2029年までに958億4,000万米ドルまでに成長すると見込まれています。

また、若年層を中心にライブコマースが普及し、消費者のEC利用をさらに押し上げています。インターネット普及率は、2020年には10.4%しかありませんでしたが、2023年には73.7%に増えました。一方、物流インフラの未整備や規制の不透明さが課題ですが、政府はデジタル化を推進し、経済成長を支える基盤を整えています。

ベトナム

ベトナムのEC市場も、他の東南アジア諸国と同じように、急速な成長を進めています。ベトナムのeコマース市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年) によると、2024年のEC市場規模は147億米ドルと推定され、2029年までに237億7000万米ドルに達すると予想されています。

この成長を支えているのは、主に若年層を中心としたインターネット利用率の上昇と、スマートフォンの普及です。 人口の46%以上が30歳未満であることが、EC市場成長の追い風となっています。

マレーシア

マレーシアのEC市場は、着実に成長を続けています。マレーシアの電子商取引市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)によると、2024年は107億米ドルと推定され、2029年には209億3,000万米ドルまでの成長が見込まれています。急成長の要因には、人口増加やインターネット普及率の向上、ソーシャルメディアユーザーの増加などが挙げられます。

また、政府は中小企業のデジタル化を促進しており、助成金による支援を実施しています。この助成金が、企業のEC市場への参入を促し、高い成長率に貢献しています。

越境ECで東南アジアが注目されるのはなぜ?

越境ECで東南アジアが注目されるのはなぜ?

東南アジアは急速な経済成長、インターネット普及率の上昇、日本製品への高い需要など、越境EC市場として非常に魅力的な要素を多く持っています。ここでは、その具体的な理由を解説します。

急速に経済成長している

東南アジアは、急速な経済成長を遂げている地域として注目されています。ASEAN諸国全体の人口は約6億5,000万人で、中国やインドに次ぐ規模を誇り、EUも上回ります。

さらに、実質GDP成長率においても、中国と同等、またはそれ以上の勢いで成長する地域が多いです。例えば、東南アジアの6カ国は、2019年から2020年にかけて63%の成長率を記録しています。この成長率は、EC市場において驚異的な数値です。

インターネット普及率が急速に伸びている

東南アジアでは、インターネット環境の急速な普及が越境EC市場の拡大を後押ししています。2023年時点のインターネット普及率は、70〜90%ほどに達しています。

特に、コロナ禍による行動制限が、オンラインショッピングへの移行を加速させました。欧米諸国などに比べると、インターネット普及率は低かったため、その成長は目覚ましいものでした。

日本製品やサービスは人気がある

東南アジアは、日本製品やサービスへの関心が高いことも、越境ECが注目される理由の一つです。特に化粧品や食品、カメラなどの日本製品は「高品質」「細部までこだわっている」といった印象を持たれる傾向があります。

日本製の家電製品や自動車などの特徴とも言える「壊れにくい」「長持ちする」といった日本人が当たり前に感じている面は、東南アジア市場ではすでに強みとなっているのです。

SNSの利用率が高い

東南アジアはFacebookやInstagram、YouTube、TikTokといったSNSの利用率が高いことも、EC市場の成長を支える要因の一つです。中でもインドネシアはSNS利用者数がとても多く、東南アジア最大のデジタル大国とも言えます。SNSとECは親和性が高く、東南アジアへの進出や顧客の獲得に効果的です。

東南アジアへの越境ECを始める方法

東南アジアへの越境ECを始める方法

東南アジアの経済発展に伴いEC市場も急速に成長を続けています。自社製品を東南アジアで販売したい企業にとって、越境ECは効果的な市場参入の手段となります。ここでは、東南アジアでの越境ECを始めるための3つの主要な方法を解説します。

これから越境ECを始めようとご検討中の方は、こちらの記事も併せて参考にしてください。

>>個人でもできる海外向けネットショップ開業方法・おすすめも国別に紹介

現地で自社ECサイト構築する

現地で自社ECサイトを構築する方法は、ブランド価値の構築と顧客との直接的な関係作りに最適です。サイトデザインやユーザー体験を自由に操作でき、独自のマーケティング戦略を展開できる利点があります。

ただし、自社ECサイトの構築は、相当な初期投資と運営リソースが必要です。現地の言語対応、決済システムの整備、物流ネットワークの構築、現地の法規制への対応など、さまざまな課題をクリアしなければなりません。また、集客やブランド認知度の向上にも時間とコストがかかるため、長期的な視点での取り組みが求められます。

東南アジア進出にあたって自社ECサイトの構築を検討している方は、下記の記事も併せて参考にしてください。

>>東南アジアで大注目の「SHOPLINE」の主な機能や特徴を紹介!Shopifyとの違いは?

現地のECプラットフォームに出店する

ShopeeやLazadaなど、東南アジアの主要なECプラットフォームへの出店は、すでに確立された集客基盤を活用できる効率的な方法です。ECプラットフォームは現地で高い知名度と信頼性を持ち、多くの潜在顧客に自社の存在を知らせられます。プラットフォームが提供する決済システムや物流網を利用できるため、運営面での負担も比較的軽減されるのもメリットです。

ただし、売上に応じた手数料が発生し、プラットフォームのルールに従わなければなりません。また、他の出店者との価格競争も激しくなる傾向にあるため、適切な価格設定が重要になります。

越境対応の国内ECプラットフォームに出店する

メルカリのような日本の越境EC対応プラットフォームを利用する方法は、手軽に海外展開を始められる選択肢です。日本語での運営が可能で、システムやルールも理解しやすいため、特に越境EC初心者に適しています。

しかし、日本のECプラットフォームが、東南アジアで必ずしも強い影響力を持っているとは限りません。利用するプラットフォームによっては、現地の消費者の購買行動や嗜好に合わせたマーケティングが難しい場合もあるでしょう。

東南アジアで人気の越境ECプラットフォーム3選

東南アジアで人気の越境ECプラットフォーム

EC市場は急速な成長を続けており、近年は東南アジア全体に展開している越境ECプラットフォームが登場しています。ここでは、東南アジアで特に注目を集めている3つの主要な越境ECプラットフォームをご紹介します。

東南アジアで人気の越境ECプラットフォームは、下記の記事でも詳しく解説しています。これから参入を考えている方は、必見です。

>>東南アジアで人気の越境ECプラットフォーム9つを比較!どのサイトがおすすめ?

Shopee

Shopee

引用:Shopee Japan

シンガポールを拠点とするShopeeは、2015年の設立以来、東南アジア最大級のECプラットフォームです。Shopeeを通じて日本からシンガポールやマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、台湾に商品を販売可能です。2021年時点で、流通総額が625億米ドルに迫る実績を持っています。

日本企業にとって特に魅力的な点は、初期費用や月額使用料など固定費が無料であることです。また、2020年に設立された日本法人のスタッフによる、日本語でのサポートも充実しています。

Lazada

Lazada

引用:Lazada Japan

アリババグループが運営するLazadaは、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシアの6カ国で展開する大手ECプラットフォームです。Lazadaが提供する越境Eコマースサービス「LazGlobal(ラズグローバル)」に一度商品を掲載すると、6カ国のECサイトに同期されて、一斉に東南アジアへと参入できます。

また、最大の特徴は、充実した物流ネットワークです。日本国内に物流拠点を持つため、出店企業は日本の倉庫に商品を送るだけで、東南アジアの消費者への配送が可能です。また、Shopee同様、日本法人を通じた日本語でのサポート体制も整っています。

TikTok Shop

TikTok Shop

引用:TikTok Shop,https://business.tiktokshop.com/us/seller

人気SNSアプリ「TikTok」が展開するTikTok Shopは、インドネシア、タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、フィリピンで急速に利用を伸ばしています。従来のECプラットフォームとは異なり、TikTok上での人気クリエイターによる商品紹介を通じて販売することが特徴です。

TikTokユーザーはアプリを離れることなく、スムーズかつシームレスに商品の購入や決済の手続きを完了させられるのが魅力的な部分です。ライブ配信をしながら商品の詳細リンクを、視聴者に共有することもできます。ただし、日本のTikTokには、まだTikTok Shopの機能が実装されていません。

越境ECで東南アジアに進出する際の注意点

越境ECで東南アジアに進出する際の注意点

東南アジアのEC市場は急速な成長を続けており、多くの日本企業にとって魅力的な市場となっています。しかし、成功するためにはさまざまな越境ECの壁をクリアしなければなりません。ここでは、東南アジアで越境ECを展開する際の重要な注意点について解説します。

越境ECを始める際の注意点は、こちらの記事も詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

>>越境ECを始める際に気をつけたい物流・配送・決済などのポイント

ターゲットに合わせた商品選定をする

東南アジアでの越境EC成功のカギの一つは、現地のニーズを的確に捉えた商品選定です。日本国内で人気の商品が、必ずしも東南アジアで同じように売れるとは限りません。各国の市場特性や消費者の嗜好は大きく異なります。

例えば、イスラム教徒が多い国では、ハラル認証が重要になることがあります。また、気候や生活習慣の違いにより、日本では当たり前の商品が、現地では需要がない可能性もあります。そのため、進出前に徹底的な市場調査を行い、現地消費者のニーズを把握することが不可欠です。

ターゲット国に合わせたプラットフォームを選ぶ

東南アジアでは、国によって主流のECプラットフォームが異なります。例えば、ShopeeやLazadaは多くの国で人気がありますが、その利用率や認知度は国によって同じではありません。TikTok Shopも急速に市場シェアを拡大しています。

プラットフォーム選びは、その国の消費者の購買行動や利用傾向を考慮して決定する必要があります。また、プラットフォームごとに手数料体系や運営方針が異なるため、自社の事業モデルに合った選択が重要です。

現地に適した決済方法を用意する

東南アジアでは、国や地域によってよく利用される決済方法が大きく異なります。クレジットカード普及率が低い国もあれば、電子決済が一般的な国もあります。また、代金引換や銀行振込など、従来型の決済方法を好む消費者も多く存在します。

消費者の利便性を考慮し、複数の決済手段を用意することが重要です。特に、現地で人気のある決済サービスへの対応は、購入率向上につながる重要な要素となります。

関税や禁制品を確認する

海外への商品輸出には、関税や規制の壁が存在します。商品の種類によって関税率が異なることが、販売価格や利益率に大きく影響します。関税を把握しないまま商品を販売・発送すると、思わぬコストがかかり利益が出ないケースもあるので、事前に確認することが大切です。

また、各国の輸入規制や禁制品も、事前に把握しておきましょう。例えば、ヘビ革やワニ革で作ったバッグ、ローズウッド製の家具などはワシントン条約で規制されています。インドネシアやフィリピンでは、カカオの実の輸入が禁止されています。

このような規制に違反すると、商品の通関が拒否されるだけでなく、法的なトラブルに発展しかねません。

物流に関する課題をクリアにする

東南アジアでの越境EC展開において、物流は最も大きな課題の一つです。配送時間の長さ、高額な送料、通関手続きの複雑さなど、さまざまな問題に直面します。また、国によって物流品質にも大きな差があります。

越境ECにおける物流の課題に対応するためには、信頼できる物流パートナーの選定が重要です。場合によっては、現地の保税倉庫を活用したり、物流業務を専門業者に外注したりして、効率的な配送体制を構築することが可能です。返品対応なども含めた、包括的な物流戦略を策定しましょう。

ウルロジでは全世界220ヵ国に対して、日数と費用のバランスを保った発送代行が可能です。下記の資料では、ウルロジが可能な越境ECにおける物流業務やサービスの強みを3分でわかるように紹介しています。ご興味ありましたらお役立てください。

>>3分でわかる! 物流代行のウルロジ サービス資料-越境ECver

越境ECの物流の課題やノウハウなどは、下記のページでも詳しく解説していますので、併せて参考にしてくださいね。

>>EC物流とは?重視すべき理由や課題、倉庫に委託するメリット・デメリット

>>海外への郵送方法と業者別の価格や特徴を解説【一覧表あり】

>>越境ECにおける物流の重要性と課題、3つの物流モデルを解説

東南アジア越境ECのバックヤードはウルロジにお任せください

東南アジア越境ECのバックヤードはウルロジにお任せください

東南アジアのEC市場は、人口6億人を超える巨大な市場規模と急速な経済成長を背景に、ますます注目を集めています。シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシアなど各国で、EC市場は着実な成長を遂げています。

しかし、越境ECでの成功にはさまざまな課題があります。現地のニーズに合った商品選定、適切なECプラットフォームの選択、各国の決済方法への対応、関税や規制の把握、物流体制の構築など、多くの要素を考慮しなければなりません。このような課題に対応するには、専門的な知識とノウハウが不可欠です。

特に物流面では、配送時間、送料、通関手続き、返品対応など、複雑な業務が発生します。ウルロジの越境EC物流代行サービスは、海外発送専門のペガサスグローバルエクスプレス社との業務提携により、物流課題を包括的に解決します。バックヤード業務を全面的にサポートし、東南アジア市場への参入をスムーズにサポートいたします。

タグ : ECお役立ち情報 EC運用 越境EC
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。