越境ECのサイト構築のポイントは?モール運用との違いも解説
2024.06.24ECサイト
「越境ECのサイトはどうやって制作すればよいの?」「自社サイトとECモールの違いを教えてほしい」などと考えていませんか。越境ECを始めるにあたり、悩んでいる方は多いでしょう。自社サイトとECモールにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、両者の特徴を理解した上で選択することが重要です。
ここでは、EC業界で働く筆者が越境ECで質の高い自社サイトを制作するポイント、自社サイトを制作する流れ、自社サイトとECモールの違いなどを解説します。越境ECを始めたい方や越境ECで自社サイトの構築を検討している方は、参考にしてください。
また、越境ECでトラブルになりやすい物流業務を効率化するには、発送代行サービスがおすすめです。ウルロジの発送代行サービスなら、ロボット設備による発送作業の自動化でヒューマンエラーを減らし、海外向けでも発送ミスの削減ができます。当記事とあわせてウルロジのサービス資料もご確認ください。
目次
越境ECで自社サイトを作成するポイント
越境ECとは、国境を超えた電子商取引を意味する言葉です。わかりやすくいえば、海外に対するネット通販事業とも言い換えられます。越境ECについて詳しく知りたい方は下記記事を参照ください。
>>越境ECとは?失敗しない始め方5STEPと成功事例を解説【基礎知識】
越境ECで自社サイトを制作する場合、どのような点に気をつければよいのでしょうか。ここでは、制作のポイントを紹介します。
国内と越境ECサイトの制作における違いを把握する
筆者の経験を踏まえると、国内と国外で売れ筋商品は大きく異なります。BEENOSが発表しているエリア別の売れ筋商品は次のとおりです。
エリア | 売れ筋商品 |
---|---|
北米 | 1位:アニメ・ホビー・グッズ 2位:音楽 3位:ファッション |
東アジア | 1位:アニメ・ホビー・グッズ 2位:ファッション 3位:フィギュア |
ヨーロッパ | 1位:音楽 2位:アニメ・ホビー・グッズ 3位:トレーディングカード |
東南アジア | 1位:自動車・オートバイ 2位:アニメ・ホビー・グッズ 3位:スポーツ・アウトドア |
中東 | 1位:アクセサリー・時計 2位:アニメ・ホビー・グッズ 3位:自動車・オートバイ |
中南米 | 1位:ゲーム 2位:音楽 3位:フィギュア |
国や地域によって、言語や文化はもちろん、流行も異なるため、売れ筋商品に大きな違いが生じます。例えば、アメリカのAmazon.comが開設しているJAPAN STOREのGrocery(食品カテゴリー)では、2023年上半期に最も売れた商品は「玉露の旨味だし」です。
日本のAmazon.com「食品・飲料・お酒」の売れ筋ランキングを調べたところ、「自然が磨いた天然水 ラベルレス 2リットル 9本 ペットボトル」が1位でした(2024年6月時点)。アメリカでは、和食文化を感じられるものが人気を集めています。以上は典型的な例ですが、国内の売れ筋商品が必ずしも海外でも売れるとは限りません。
出典:PRTIMES「Amazon、米国のJAPAN STOREにおいて2023年1月- 6月上半期の販売個数上位カテゴリーと売れ筋商品トップ3を発表」
また、国によって決済方法も大きく異なります。SBペイメントサービス株式会社が実施した調査によると、国内ECサイトにおける決済手段の割合は次の通りです(物販)。
画像引用元:SB Payment Service「【2022年度版】ECサイトにおける決済手段の利用実態調査結果を公開」
https://www.sbpayment.jp/news/press/2023/20230329_001295/
国内ではクレジットカード決済が主流と言えるでしょう。一方で、経済産業省が発表している資料によると、中国における越境ECの決済方法はALIPAYが中心です。また、中国銀聯(UnionPay)も一定のシェアを占めています。
進出国の実情に対応していないと、現地のユーザーにとって使い勝手の悪いECサイトになってしまう恐れがあります。越境ECサイトを制作する前に、国内市場と海外市場の違いを把握しておくことが大切です。
越境ECに強いカートを選択する
越境ECのために自社サイトをゼロから開発すると、非常に大きなコストがかかります。開発中に外部環境や内部環境が変わる可能性があるため、その必要性を慎重に検討することが重要です。
筆者の経験から言うと、越境ECに強いカートの利用をおすすめします。ここでいう越境ECに強いカートとは、多言語対応や多彩な決済方法を備えたシステムのことです。ただし、それぞれのカートシステムには得意とする地域があります。地域別のおすすめカートシステムは次のとおりです。
地域 | カートシステム | おすすめの理由 |
---|---|---|
全世界でおすすめ | Shopify |
|
アメリカ | Magento |
|
中国 | Live Commerce |
|
アジア | LaunchCart |
|
カートシステムの選択で悩む方にはShopifyがおすすめです。多言語・多通貨に対応しているうえ、アプリを使って制作したECサイトを別の言語に翻訳することもできます。多彩な決済方法に対応している点もポイントです。
開設時からPayPalを利用できるうえ、日本では無名の現地特有の決済方法にも幅広く対応しています。世界中どこでもおすすめのカートシステムです。Shopifyについては、以下の記事で詳しく解説しています。
>>越境ECはShopifyがオススメ!サイト制作から事例紹介まで徹底解説
Magentoは、アメリカのMagento社が開発したオープンソース型のカートシステムです(現在はAdobeが買収)。多言語、多通貨に対応しているうえ、デザイン、カスタマイズの自由度も高いといえます。アメリカのユーザーはWebデザインにおいて視覚的なインパクトを重視する傾向があります。デザインの自由度が高い点はアドバンテージになりえます。PayPalを始めとするアメリカで利用率が高い決済方法に対応している点もポイントです。ただし、ECの構築には一定のスキルを要します。
中国へ進出する場合はLive Commerceを選択するとよいかもしれません。自社ECで開発・研究した成果を製品に反映している点が特徴です。具体的には、AIを活用して商品をレコメンドするパーソナライズ機能などが搭載されています。中国語でECを構築できる点もポイントです。決済方法は、中国で利用率が高い「UnionPay、AliPay、WeChatPay」に対応しています。越境ECをスムーズに展開できるでしょう。
アジアへの進出を考えている場合は、台湾、韓国、インド、マレーシア、シンガポール、タイなどで実績が豊富なLaunchCartがおすすめです。多通貨を利用できるうえ、日本円決済の越境EC、現地通貨決済の現地EC、現地通貨建ての各国決済との連携にも対応しています。現地語への翻訳を行っている点も見逃せません(パートナー会社の紹介による)。ローカライズしたECを構築できるでしょう。
以上の通り、カートシステムの特徴は製品で異なります。進出する地域に強いカートシステムを選ぶことが大切です。
越境ECで自社サイトを作成する流れ
続いて、越境ECを目的に自社サイトを制作する流れを紹介します。
コンセプトの決定
制作作業を始める前に、自社サイトのコンセプトを決定します。ここでいうコンセプトは、デザインで悩んだとき、商品企画で悩んだときなどに立ち返るべき自社サイトの原点です。
曖昧にしていると、場当たり的な判断を下すことになるため、理想とは程遠い自社サイトになってしまう恐れがあります。コンセプトの決定にあたり、掘り下げたいポイントは次のとおりです。
【掘り下げるポイント】
- 自社サイトをなぜ制作するか?
- どのような自社サイトを制作したいか?
これらを踏まえて「自社サイトが顧客に提供する価値」を明確にすることが重要です。また、対象国で自社サイトのコンセプトや商品が受け入れられるかどうかも確かめておく必要があります。
要件定義
次に、コンセプトの実現に必要な機能やシステムを選定します。イメージが湧かない場合は、競合サイトが導入している機能やシステムを調査したり、日々の業務を整理したりすると良いでしょう。これらの作業を通じて、必要な機能、システムを把握しやすくなります。
また、選定にあたっては、予算やスケジュールを考慮することも大切です。どれだけ素晴らしい機能やシステムでも、予算やスケジュールに合致しなければ導入できません。
決済方法の選択
自社サイトに導入する決済方法を選択します。ポイントは、幅広いユーザーがお買い物を楽しめるように、豊富な決済方法を用意することです。希望の決済方法がないと、ユーザーがECサイトから離脱することが少なくありません。
決済方法の選択肢を増やすことは、カートに商品を入れたものの購入に至らない、いわゆるカゴ落ちやサイトの離脱率の改善対策となり得ます。また、決済方法を現地で主流の方法に対応させることで、現地のユーザーが商品を購入しやすくなります。
越境ECの決済方法について理解を深めたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>越境EC運用で気をつけたい各国の主要な決済システムについて
サイトデザインの選択
サイトマップとワイヤーフレームを作成して自社サイトのデザインを決定します。サイトマップはウェブサイトを階層別に表した構成図、ワイヤーフレームはウェブページを線と枠で表した設計図です。サイトデザインの目的は、伝えたい情報をわかりやすく伝えることです。したがって、ターゲットが理解しやすく、使いやすいデザインにすることが大切です。
ただし、利用するカートシステムによって、サイトデザインの自由度は異なります。できることとできないことを、事前に把握しておくことも重要です。
文章の設計
次に、自社サイトに掲載する商品説明などの文章を用意します。基本的な流れは以下のとおりです。
【文章の設計】
- 日本語で原稿を作成する
- 1の原稿を現地の言語に翻訳する
- 2に対してネイティブチェックを実施する
- 現地の消費者が読みやすい文章に整える
機械翻訳では、現地の文化や宗教に配慮できない恐れがあります。ネイティブチェックを実施して、現地の消費者にとって違和感のない文章に整えることが大切です。
商品登録
自社サイトに商品画像、商品情報、商品説明を登録します。一括登録用のデータをあらかじめ作成しておくとスムーズに行えます。ただし、登録情報のミスには注意が必要です。誤りがあると、クレームに発展したり信用を失ったりする恐れがあります。
数量やサイズなどの重要な情報は、登録前にダブルチェックを実施するなどして、誤りを正しておくことが大切です。
テスト注文
完成した自社サイトで、テスト注文を行います。テスト注文は、注文処理が正常に機能することを確かめるダミーの注文です。ユーザーが実際に購入する手順でテスト注文を行い、受注・決済・配送に問題がないことを確かめます。
テスト注文では、データが正しく処理されることだけでなく、社内のスタッフが適切に対応できるか、倉庫および決済会社との連携が問題なく行えるかなどを確認する必要があります。実際の注文と同じ環境でテストを行うことが大切です。
オープン
テスト注文で問題がなければ自社サイトをオープンします。ただし、サイトのオープンと集客が必ずしも連動するわけではありません。集客施策は別に実施する必要があります。具体的な施策として、オープン日時をSNSやメールで告知したり、オープンセールを実施して来店を促したりすることが考えられます。
また、オープン後は予期せぬトラブルが起こりがちです。事前に社内マニュアルを作成して共有しておくなどの対策も求められます。
越境ECで自社サイトを作成する方法
越境ECにおける自社サイトの制作方法は以下の3つに分かれます。
【制作方法】
- フルスクラッチ
- ASP
- クラウドEC
ここでは、それぞれの特徴を解説します。
フルスクラッチ
既存のソフトウェアを使用せず、自社サイトを一から制作する方法です。主な魅力は、制約を受けにくい(自由度が高い)ことといえるでしょう。ただし、既存のソフトを使用しないため、開発には時間とコストがかかります。
また、運用・保守も自社で行うため、ランニングコストも高額になるケースが少なくありません。対象国に関する情報や、専門的な知識、スキルがないと、自社だけで対応することは難しいでしょう。
ASP
ASPは「Application Service Provider」の略語で、ここでいうASPは、共通のプラットフォームを活用してECサイトを制作する方法です。代表的なサービスとして、BASE、STORESがあげられます。主な魅力は、時間とコストを抑えつつ、一定品質の自社サイトを制作できることといえるでしょう。
ただし、デザインやカスタマイズの自由度は高くありません。また、提携できる外部サービスも制限を受けます。とはいえ、自社サイトを手軽に制作できる点は魅力です。初めて自社サイトを制作したい事業者様に向いています。
クラウドEC
クラウド上のプラットフォームを活用して自社サイトを制作する方法です。代表的なサービスとして、Shopifyがあげられます。主な魅力は、カスタマイズ性に優れていることです。自社のコンセプトに合わせたサイト制作を行いやすいといえるでしょう。機器類の保守管理を自社で行わなくてよいため、運営中の負担を抑えやすい点も魅力です。
ただし、ソースコード(ECサイトのプログラム)は公開されていません。そのため、自社で管理する必要が生じた場合は、原則として自社サイトを作り直すことになります。
越境ECにおける自社サイトとECモールの違い
越境ECのビジネスモデルは、自社サイトを活用する「海外自社サイト構築」と、ECモールに出店する「海外現地ECモール出店」「越境対応国内ECモール出店」に分かれます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
ビジネスモデル | 海外自社サイト構築 | 海外現地ECモール出店 | 越境対応国内ECモール出店 |
---|---|---|---|
ECサイト・ECモール | 国外で自社サイトを運用 | 国外でECモールに出店 | 国内でECモールに出店 |
物流倉庫 | 国外で保管 | 国内で保管 | 国内で保管 |
主な違いは、顧客との接点(自社サイトまたはECモール)と物流倉庫の場所(国内または海外)です。各ビジネスモデルの主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
ビジネスモデル | 海外自社サイト構築 | 海外現地ECモール出店 | 越境対応国内ECモール出店 |
---|---|---|---|
メリット | 長期的にみると利益率が高くなりやすい | ECモール自体の集客力を利用できる | 越境ECを始めやすい |
デメリット | 集客が難しく、自社サイト運用にノウハウが必要 | 現地語での対応が必要で運営の自由度も低い | 現地におけるECモールの知名度が高いとは限らない |
それぞれの特徴を把握して、ビジネスモデルを構築することが大切です。越境ECにおける自社サイトとECモールのメリット・デメリットを詳しく理解したい方は、以下の記事も参考にしてください。
越境ECの自社サイトはECモールとの違いを理解してから制作
越境ECには、自社サイトを制作する方法とECモールに出店する方法があります。前者のメリットは利益率が高くなりやすいこと、後者のメリットはECモールの集客力を利用できることです。多くのEC事業者様を支援してきた筆者は、売上に影響するため、自社に合った方法を選択することが重要と考えています。
自社サイトを制作する場合は、越境ECに強いカートを選びましょう。カートの選択を誤ると、自社サイトの制作や運用に苦労する傾向があります。実際の作業では、コンセプトを判断基準に据えて制作を進めることが大切です。自社サイトの軸を作ることで、一貫したメッセージをユーザーに伝えやすくなります。
越境ECの自社サイト制作でお困りの方は、ECの物流業務をまとめて委託できるウルロジにぜひご相談ください。自社サイト・物流体制の構築など、越境ECにおけるバックヤード業務すべてをお任せいただけます。お問い合わせをお待ちしております。
最新記事 by 角田和樹 (全て見る)
- Shopifyでのフルフィルメント活用術:shopifyにおける最適な物流をご紹介 - 2024年10月24日
- ECにおける返品対応をスムーズに実現!効果的な流れと重要なポイントを解説 - 2024年10月18日
- Shopifyでの出荷業務を効率化!おすすめアプリとその活用法 - 2024年10月15日