【物流倉庫の最新事情】Amazonやニトリも導入する省人化に現場はどう立ち会う?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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物流倉庫の現場が変貌を遂げつつあります。Amazon(アマゾン)が商品運搬ロボット「Amazon Robotics」を、ニトリは無人搬送ロボット「Butler」を、アスクルは3D搬送ロボットなどを導入するなど、大手通販会社を中心に省人化あるいは庫内作業者の生産性を向上させる取り組みが進められています。こうした動きはどこまで広がるのでしょうか、労働力不足が深刻化する物流センターの生産性向上にどれだけ貢献できるのでしょうか? 物流倉庫の最新事情に迫ります。

物流現場に省人化という技術革新の波

ここ数年、メーカーやベンチャー企業によるシステム革新の波が物流センターの現場、とりわけ通販の拡大で煩雑になっているピッキング作業にもその勢いは押し寄せています。

もとをたどると、米ベンチャーのkiva systems社(2012年にアマゾンに買収され、Amazon Robotics社に)が棚をピッキングの作業場所まで運ぶAGV(無人搬送車)を開発しました。ノルウェーのjakob hatteland computer社は、ロボットが箱を吊り上げてピッキングステーションへ自動搬送する「AutoStore」を開発。岡村製作所と販売契約を締結しています。

kiva systems社のAGVの日本でのデビューは、日立製作所が「Racrew(ラックル)」の商品名で2014年に発売し、日立物流が倉庫現場で運用を開始したタイミング。続いて2015年に設立されたベンチャー企業のGROUND社はインドGreyOrange社製「Butler(バトラー)」の輸入販売を開始するなどAGVの導入に加速がつきました。さらに、アッカ・インターナショナルも中国のGeek+(プラス)社製の自動搬送ロボット「EVE」を輸入販売しています。

これら製品の導入事例をみると、2017年にアマゾンが「Amazon Robotics」を川崎FC(フルフィルメントセンター)で国内初導入しています。同じく2017年に、兵庫県にある業用間接資材の通信販売会社のMonotaROが日立製作所の「Racrew」を一気に150台超、ニトリの物流会社ホームロジスティクスがGROUND社「Butler」を西日本通販発送センターで79台導入しています。

「AutoStore」はニトリグループのホームロジスティクスのほか、良品計画や丸井などが導入し運用を始めています。特にホームロジスティクスは「人に優しい職場環境」の実現を目指しており、次世代物流機器の導入をどこよりも積極的に進めています。

これ以外にも、アスクルは都市型物流センターといわれる横浜や関西(吹田市)の拠点で自動倉庫やピッキング工程での3D搬送ロボットの導入を進めています。

このように通販大手を中心に物流拠点への省人化の波はひしひしと押し寄せているのです。

物流・倉庫会社は省人化に加え省力化の取り組みに着手

通販大手のこうした華々しいロボット機器導入の一方、物流企業も現場の労働生産性を向上させようとさまざまな取り組みに着手しています。

中堅倉庫会社の富士ロジテックは、UWB(超広帯域無線)による屋内即位システムを活用してピッキングカートの即位データを取得できるようにしました。こちらは、同倉庫内の全 16 台の作業ピッキングカートの動線可視化することで、ピッキング経路を最適化するというもの。このデータをもとにラックの配置や商品のロケーションを変更し、カートの移動距離を短縮して人がなるべく歩かないで作業ができるようにしました。

佐川急便は、NTTデータの物流画像判別AIエンジンを利用し、荷物の形状などの情報をデータベース化。積み込み・取り降ろし作業の省力化に応用しています。

ヤマト総合研究所は、RFID(電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム)の読み取りで入庫検品を完了するシステムを開発。外資系物流企業のキューネ&ナーゲルは倉庫作業者の梱包作業を支援する協働ロボット(日本のロボット開発ベンチャーZMP製)を物流センターに配備しています。

サプライチェーン全体から効率化

2017年4月、コンビニ各社は経済産業省とともに「2015年までにコンビニ電子タグ1,000億枚宣言」を行い、ドラッグストア各社も2018年3月に同様の宣言を行いました。こちらは少子化による人手不足や労務コストの上昇に直面する小売業の負担軽減を目的にしたもの。RFIDタグを商品に取り付けることは、店舗内レジの効率化(一括読み取り)だけでなく、庫内作業の効率化にも役立ちます。

具体的な流れを説明すると、物流センターに集められた商品1つひとつにRFIDを貼付し、データを読み取って出荷。メーカー・卸・小売・物流センターが入出荷実績などの情報を共有化することで、配送センターでの仕分け、オリコンやカゴ車への積み付け効率化、在庫情報の最適化など、サプライチェーンの上流から下流まで恩恵を受けることができるようになります。

AI技術を活用するLogistics4.0へ課題も

省人化、省力化という新しい局面を迎えた物流業界では、2017年頃から、インダストリー4.0(第4次産業革命)の向こうを張って、Logistics4.0という言葉が使われ始めています。

Logistics4.0は、ドイツのコンサルティング会社ローランド・ベルガーが提唱。1.0は20世紀初頭に起きた輸送の機械化、2.0は1960年代の荷役の機械化、3.0は1980年代の物流管理のシステム化、そして4.0はIoTやAI技術を活用してサプライチェーン全体を最適化することを言います。

日本の場合、2017年に経済同友会の「先進技術による経営革新、物流・生産分科会」がまとめた報告書でLogistics4.0に言及。実現には可視化(デジタル技術を用いてモノと情報をつなぐ)、省人化(ピッキング作業の自動化、トラックの自動運転)、標準化(梱包方法、発送・受取・保管方法、データフォーマット)の3つが不可欠と指摘しています。

これに対して、日本経団連は2018年10月、「Society5.0時代の物流」と題して提言。名称はSociety5.0ですが、内容は経済同友会のLogistics4.0を受ける形で、課題を整理。データフォーマットの標準化、それ以前の問題としてデータをオープンにできるようにすること、つまり民間から競争に当たらないデータをどう取得するかのルールづくりが必要だとしています。

提言はさらに、中小企業でもデジタル化が進むようにするため、各種機器やシステムの導入コスト削減に官民挙げて取り組むことを提言しています。

物流業界は99%が中小企業であり、そうした中小物流企業が装置産業化してIoTやAIを実現できるかが、今後の物流現場改善の底上げを図る鍵を握っています。

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。