HACCP(ハサップ)とは?導入のメリットと認証機関について

2021.11.29物流・フルフィルメント
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食料品のパッケージやコマーシャルなどでHACCPという単語を見たことがあるという人もいるかと思います。

現代社会は国内で生産された食品だけではなく世界中から様々な食材が輸入されてきており、安全性が常に懸念材料として挙げられます。

その安全性を高めるために生まれた食品管理方法がHACCPで、日本の食品衛生法でも原則化されるようになったのです。

食品を生産する時に安全を確保することができる手法として日本だけでなく世界中に広まりつつあるHACCPとはどんな手法なのかを解説します。

HACCPとは?

HACCP(ハサップ)とはアメリカで確立されたの食品の衛生管理方法のことで日本語に直訳すると「危害分析重要管理点」となります。Hazard(危害)をAnalysis(分析)して、Critical(重要)なControl 管理するPoint(ポイント)という言葉の頭文字です。

食品の製造や加工、出荷などすべてのプロセスで食中毒を引き起こす有害物質、またはガラスや金属など危険な異物などが混入しないように管理を徹底させる方法のことです。

自社では食品にどのような危害要因があるかを分析し、それを温度や保管方法、場所や時間などどの工程で注意すべきかを割り出し、継続的に監視や記録をし続ける衛生管理システムです。

HACCPはFAOやWHOにより設立された国際食品規格の会議を行うコーデックス委員会で1993年に提案され、日本では1995年にHACCPの導入が始まりました。

さらに平成30年の6月13日より日本の食品衛生法が改正されすべての食品等事業者がHACCPに基づく衛生管理を行うことが原則化されています。

各国の導入状況

アメリカ

HACCPが生まれたアメリカではHACCPが世界に発表される以前より、州を越えて入出荷される食肉や水産品、加工品や飲料などは順次HACCPによる管理が義務付けられています。

さらに2011年1月にはアメリカ国内で消費される食品を加工から製造、保管から梱包にいたる全ての企業でHACCPの管理方法が義務付けられるようになりました。

カナダ

アメリカの隣国カナダでは1992年より順次食肉や水産食品、またはそれらの加工食品に対してHACCPが導入されています。

オーストラリア

オーストラリアでは1992年より輸出用の乳製品や水産食品、食肉などにHACCPが導入されるようになりました。

EU

EU圏内では2006年よりほぼ全ての食品関連企業にHACCPが義務付けられています。

しかし、中小企業や貴重な古くから伝わる歴史的にも重要な製造方法をしている食品加工業社はにはHACCPを取り入れつつ、製造段階によっては柔軟な管理方法を行うことを許可しています。

韓国

韓国も2012年よりHACCPを各食品業社に導入されています。

肉や魚の加工業社、韓国ならではの白菜キムチ類、または飲料や冷凍食品、レトルト食品などの業社にもHACCPを義務付けるようになりました。

台湾

台湾は2003年よりHACCPが導入されるようになり、現在では食肉だけでなく水産食品や乳製品、またはそれらの加工品を取り扱う業社に適用されています。

その他の国

また現在、中国やタイ、インドでは輸出用の食品を取り扱う企業にHACCPが義務付けられるようになりました。

その他ロシアやベトナム、メキシコなどの国々が今後HACCPの導入を検討しています。

HACCP導入のメリット

HACCPを導入し国際的に認められた商品管理、衛生管理を行うことにより品質が向上することはもちろん、他にも様々なメリットがあります。

従業員の衛生管理が徹底されることで社員全員の意識向上だけでなく、クレームや商品回収といった事故や被害などが軽減され生産効率が上がり、不良品や粗悪品などの廃棄商品、ロス率が下がり自社の利益や信頼性の向上に繋がります。

厚生労働省が調査したHACCPを行っている企業への聞き込み調査によると、実に全体の80%近くの従業員が衛生管理に対する意識が向上したと答えています。

その他にも40%近くの社員が製品に不具合があった時の対応が素早くなったと答え、また生産性が向上した、またはHACCPを徹底しているという信頼性から、新規開拓の顧客が増えたという回答もありました。

HACCPの7原則12手順とは

HACCP認証は12のプロセスで構成されています。そして、その12個のプロセスの内、6番目から12番目は厳守すべき「ハサップの7原則」と言われています。

《手順1》 社内のHACCPチームの編成

商品が加工、梱包、出荷されるまでの全ての部署から担当者を選びHACCPの情報共有ができるようにします。

《手順2》 製品の明確な説明書を作る

商品の名称や種類だけでなく、原材料やどのような添加物が入っているか、または製造方法やレシピ等も記載した詳細な説明書を作成することで危害要因を特定する際の参考にします。

《手順3》 用途や消費者層を明確にする

この商品はどのような客層がどのように消費するのかを明確にする必要があります。

食品の場合は加熱するのかそのまま食すのか、または何歳以上の消費者が対象になるなどを手順2の製品説明書などに記載しておき、万が一の際の原因追求に役立てます。

《手順4》 製造プロセスの図を作成する

材料の受け入れから加工や製造、梱包から出荷、そして消費者に提供されるまでの全ての段階、工程を図にします。

《手順5》 製造プロセス図の確認

手順4で作成した製造プロセス図が正しいかどうかを現場の責任者と確認し、実際に従業員の動きや商品の流れを見て修正を行います。

《手順6》(7原則の1番目) 危害要因の分析

どこの材料を使っているのか、どのように管理されているかを明確にし、起こり得る危害をあらかじめ想定し文章や図などで共有しておきます。

これがHACCPの「HA」の部分であるHazard(危害)をAnalysis(分析)する手順になります。

《手順7》(7原則の2番目) 重要管理点を決める

手順6で挙げられた危害要因を実際に発生させないためにどのような管理が必要になるのか、加熱処理作業など危害が起こり得る全ての工程での日々の管理点を決定します。

この手順がHACCPの「CCP」の部分であるCritical(重要)なControl (管理する)Point(ポイント)になります。

《手順8》(7原則の3番目) CCPがの管理基準を決める

手順7で決定された管理点を正しくチェックするための基準を設定します。加熱処理作業であれば温度や処理時間などの基準値を決めます。

この基準値のことをCritical Limit 「CL」と呼びます。

《手順9》(7原則の4番目) モニタリング方法を決める

手順7、8のCCPを日々確認するためのチェック方法や頻度を決めます。

《手順10》(7原則の5番目) 改善方法を決める

手順9の方法で日々チェックしたが、基準値であるCLから逸脱していた場合の対処方法、改善方法を決めます。

《手順11》(7原則の6番目) 検証方法を決める

HACCPの手順、原則が守られているか、または改善すべき点があるかどうかを日々チェックする方法を設定します。

《手順12》(7原則の7番目)記録の保存方法を決める

HACCPの手順に沿って業務を行った記録、または不具合が発生した時の詳細な記録を保存し、万が一の際の原因追求時に使用します。

HACCP認証とは?

企業や商品にHACCPの認定を行う機関は各食品の種類ごとに分かれています。

食肉であれば一般社団法人日本食肉加工協会、水産加工品であれば一般社団法人大日本水産会、乳製品であれば公益財団法人日本乳業技術協会がHACCP認定の機関となっています。

その他にも味噌や醤油、冷凍食品や惣菜など食品の種類ごとに認定期間があるので、農林水産省のホームページを参照すると良いでしょう。

参考サイト:参照:農林水産省 HACCP⽀援法(平成10年法律第59号)の仕組み

おわりに

食品の安全は世界中で意識されており、異物混入や劣悪な商品が出回り信用を失ってしまうと、大企業でさえ存続が危険な状態になることがあります。

食品の原材料から加工、梱包から消費されるまでを管理でき、不具合を未然に認知することができるHACCPはアメリカやEU、日本だけでなく今後はアジアや南米など、世界中で義務付けられるようになると予想されます。

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。