流通・小売業界で基礎概念になっているオムニチャネルとは?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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近年、ファッションや家電量販店などがECを始めるケースが増えてきました。

そのような動きの中で「オムニチャネル」という言葉を目にする機会も増えてきました。

そこで今回は、流通・小売業界で基礎戦略となりつつある「オムニチャネル」についてご紹介していきたいと思います。

オムニチャネルとは?

オムニチャネルとは、企業が持つ様々なユーザーとの接点(=チャネル)を活用・連携してアプローチしていく戦略のことです。

それに対して「シングルチャネル」「マルチチャネル」という言葉もあります。

「シングルチャネル」は、言葉のとおり1つの販売経路しか持たないことを言います。
店舗のみ、ECサイトのみの販売などを指します。

ユーザーにとっては不便さを感じさせますが、特別感を出すためにあえてシングルチャネルに力を入れている企業もあります。

対して「マルチチャネル」は複数の販売チャネルを持つ戦略のことを言います。店舗を持つ企業がECサイトを始めたり、通販カタログを始めるなど、ユーザーとの接点を増やし、売り上げや認知度を広げる戦略です。

この「マルチチャネル」と「オムニチャネル」は一見同じように感じますが、その違いは、ユーザーにチャネルの違いを意識させずに購買体験をしてもらうことにあります。

「オムニチャネル」は店舗やECサイト等で下記を統合することで、よりシームレスにユーザーに購買体験を提供することが出来るのです。

  • ユーザーの顧客情報
  • 在庫
  • 物流経路

また、しばしばオムニチャネルと混同する考えに「OtoO」という言葉があります。

OtoOとは、「Online to Offline(オンライン トゥ オフライン)」の略で、ネットなどのオンラインから店舗などのオフラインに顧客を誘導するという考えです。

例えば、ネット上で店頭で使えるクーポンを配布し、店頭への来店を促進するなどがあります。

オムニチャネルと似た考えではありますが、あくまでもOtoOがネットから店舗への「誘導」なのに対し、オムニチャネルはユーザーの身近にある様々な販売チャネルを活用・横断しての「囲い込み」行うものなのです。

オムニチャネルが注目される理由

なぜ今オムニチャネルが注目されるのでしょうか?

その背景には、スマートフォンとSNSの普及にあります。

スマホが普及するまでは、インターネットでECや価格比較などは出来ますが、自宅で値段などを調べて、店舗で確認・購入する。という行動パターンが主でした。

しかし、スマホが普及したことにより、ユーザーはどこでも情報を調べることが出来、店舗の中であってもスマホを通じて商品を購入することが出来るようになりました。

さらにSNSの普及により、口コミなどが広がるスピードも速くなり、SNSで商品の口コミを調べてから購入することもできるようになりました。

つまり、ユーザーは1つのチャネルで商品を見るのではなく、様々な販売チャネルを渡り歩きながら購入を決めるようになったのです。

これが、オムニチャネルが注目される理由です。

オムニチャネルに取り組むためのポイント

オムニチャネル化は、大きな成果が見込めますが、実践するには様々な準備や対策が必要です。
ここでは、3つのポイントについて見ていきましょう。

IT

オムニチャネルでは、各チャネルにあるユーザーの情報、商品の在庫情報などを統一させることが重要です。

商品情報はもちろん、店舗とEC上の在庫情報の統合や、ユーザーの過去の購入情報や閲覧情報を統合し、店舗担当者・EC担当者両方が情報を参照することで、各チャネル間での送客がスムーズになります。

また、ユーザーのECや店舗の情報を一元管理化することで、チャネルを横断したマーケティング戦略を策定することが出来ます。

物流

オムニチャネルでは、商品を適正なコストでチャネルに応じてスムーズに移動させることが重要です。
例えば、他店舗にある商品をいち早く取り寄せたりそのままユーザーのもとに送ったり出来るようにします。

また、店舗の在庫をEC在庫としても活用することで、必要最低限の在庫で販売を行うことが出来ます。

体制づくり

オムニチャネルは、システムの統合や物流の最適化だけでは実現できません。

見落としがちですが、重要なのが、社内の体制・組織づくりなのです。

オムニチャネルに取り組む前の企業では、店舗部門、ネット部門などが分かれているケースが主でしょう。

このままの組織・評価体制ですと、店舗部門からすると、店舗のユーザーをネットに誘導することは自分たちの売上を他部門に渡してしまうことになります。

こうした縦割りの組織・評価体制を変え無ければ、各担当者が積極的にユーザーを各チャネルに送客することが出来ず、オムニチャネル化は失敗に終わってしまいます。

販売チャネルごとのユーザーの囲い込み意識を変えるためには、大きな組織改革が必要になってくるのです。

おわりに

スマートフォンの普及により、今後もユーザーは様々な販売チャネルと接する機会は増えていきます。

オムニチャネル化はすぐに始められるものではありませんが、国内でも成功事例が増えてきています。

他企業の事例も参考にしながら、しっかりと計画を立てて進めていくことが重要でしょう。

タグ : 用語 ECモール ECお役立ち情報 EC運用 EC物流用語
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。