物流ABCで物流管理を効率化する改善方法とは?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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物流システムには、効率よく管理を行うために、物流の「ABC分析」を行うことが必要になります。最適な物流管理を行い、不要なコストや倉庫スペースの削減など、無駄を省く役割を持つものです。物流管理を効率化するための分析方法を紹介します。

効率のよい物流を目指すための「ABC分析」とは

物流における分析は、月ごと、年度ごとなど、事細かに分析することが必要な業種のひとつとされています。そのため、定期的に効率化を目指したり、課題になる点を改善したりするのは重要です。そこで役立つのが、「物流管理のためのABC分析」です。

例えば、下記のように「ABC分析」を実施するのは効果的です。

Aランク 平均的に多量販売される商品
Bランク 季節ものもしくは一時的なヒット商品
Cランク 毎月少しだけ売れる商品

商品の在庫状況、出荷ベースによる売れ筋や保管状況を分析することで、物流内でも重要度や優先度をはっきりと明示することができます。その結果、在庫量の修正、倉庫スペースやピッキング作業の効率化などにより、無駄を省く役割があるのです。これが、中小の規模を問わず、物流企業におけるコストに直結します。

パレートの法則「80対20」を活かした分析で効率UP

ポーカーなどのカードゲームを5名で行うと、5人中ひとり、つまり「5分の1」の20%が賭けられた金額の80%受け取ります。この原理と同じ法則が「パレートの法則」と呼ばれる80対20、つまり、「80%が20%の基から発生するというものです。

管理業務では、車両が動かなくても、人がかかわらなくても、商品が動かなくても費用が発生しやすいという特徴があります。ですから、物流管理の世界に当てはめれば、「過剰在庫」や「効率の悪い作業」、「物流管理のクレーム」も、コストとなるため常に分析することが重要です。

例えば、在庫や出荷が忙しいからといってマンパワーを導入するだけでは、作業員が増えることによる業務が増え、人件費が多くかかります。そこで、「80対20」を適用し、20%と思える比較的小さなパワーでも、80%の4倍ともいえる成果につなげるために、管理業務を分析するのです。80人分の仕事を20人でこなす、もしくは20人でできる作業に置き換えるというもの。

在庫数や保管スペース、作業内容を含め、「物流管理」という仕事を分析して、「行動を軽減する」ことを目指して、効率よくすることが分析の目的になります。

物流管理の「ABC分析」の方法

物流管理も各企業で扱っている在庫商品や現状のシステムにより、管理方法は異なります。この分析により、売上高を含む販売金額とともに、商品管理や在庫や保管をどのように進めていくか、何を(どの項目を)改善すべきかが明確になります。

分析方法は「区分」がポイント

在庫・保管している商品を「売上高(金額)」や「販売数(物量)の出来高のパーセンテージ」の高い順に並べてみましょう。区分がポイントになっているだけで、特殊な計算や検討が必要なものではありません。

以下のように、Aランク、Bランク、Cランクの商品が区分されます。
取扱商品の80~90%の商品を含めるのが理想的です。

Aランク 主力商品、または、平均的に多量に販売されている商品
Bランク 一時的なヒット商品や定期的に販売される季節商品
Cランク 毎月少しだけ売れる商品

上記のように分類を行った後、各ランクをグラフに落として、参考資料を作成していきましょう。
商品名を横軸(行)に入力し、縦軸(欄)に販売数(物量)を入力します。

各ランクの商品に合わせた在庫の保管を考えます。

「Aランク」の商品は、販売率の高い商品、または主力商品なので、在庫管理は最重要事項です。欠品を発生させない、商品価値の下がりかねない状況を排除、品質保持を実施します。納期は、支払いに多大な影響があるため、重点管理が必要です。

「Bランク」の場合、平均的に販売されていても一時的なもの、または定期的に販売される季節商品など、定量不定期な商品を管理します。頻繁に出入りしなくてもよい場所で、保管する方法が採用できます。

AランクやBランク以外の「Cランク」では、在庫シェアを少なくし、手間のかからない発注方法を採用します。

分析に基づく改善のステップは

管理業務は、問題点が見えてくるなら、改善のPDCAサイクルを回転させるだけで、物流の流れが明確になります。

問題の原因究明

問題が明確になると、なぜその問題が発生するのか、原因究明がポイントになります。物流の場合には、問題の原因と思われるものが、2つ以上もしくは複数発生することが多いものです。そこで、正しい手順で改善を進めることが大切です。

とくに多い事例としては、倉庫内で保管されている実在庫数と、PCに入力されている在庫数が異なる場合です。この場合の原因は、入庫時点での入荷数の違い、営業マンや担当者の持ち出し分が未入力、誤出荷、棚卸計上ミス等などがあります。

改善案の作成

原因になる点を「どのように」改善するか、再発させないための対処方法を上げていきます。これは、問題点と改善案をセットにすることを意識しておくことで進められます。例えば、入庫時点でのWチェック(搬入車両から降ろした際の数量確認と倉庫に保管するときの数量チェックなど)、営業マンや担当者が持ち出す際の伝票管理などを挙げていくことができるでしょう。

一般に多いのは、改善案を作っても実践しなかった、もしくは改善案が徹底されないということ。これでは、問題がなくならないので、物流管理に変化が見られず、在庫差異が減少しません。在庫がしっかりと管理されていれば、「80対20」の80%の率が高まります。そのためにも、これ以上考えられないというほど問題の原因を把握しておくことが必要です。

改善案に基づく改善策

3番目の点として、原因を追究した後、改善策を立てます。問題の原因が複数であれば、改善策も複数であることが一般的です。誤出荷を防止対策の場合には、「検品の強化」や「システムの導入」など改善方法もさまざまです。

改善策が見つかったなら、全部実行するか、優先順位をつけて順番に行うかを決めることが必要です。また、費用が発生するか、どのくらいの費用がその改善に必要となるかもポイントです。こうした点を考えると、実行可能か不可か、改善の効果の規模、改善されるまでの期間(スピード)などを中心に考えます。

具体的な実行計画

「だれが」「いつ」「何を」「どのように」行うかを決定し、「どのくらいの期間(時間)をかけて」改善策を実施するか、具体的な実行計画を立てます。ここで、改善できるかどうかは、どの程度細かな点まで決定し、実行担当者(個人名がおすすめ)、時間がどのくらいかかるかなども決めておかなければ、流れてしまいやすい傾向にあります。

物流管理で分析結果を実行するメリット

実行計画を立てたなら、実施した結果の効果を考えます。効果が薄いと感じる場合や効果が見られないというときには、改善策から再検証することが必要です。たとえば、改善策を立てた後にも、ご出荷がなくならないという場合には、日ごとの出荷状況を徹底的に調べ、出荷用の伝票の再確認などからはじめます。物流は、物の流れがあり、カウントできるものですから、原因の追究がはじまる時点で改善方法が見えることもあります。

物流管理で分析結果を実行するさらなるメリットは、「製品・サービス・受注」にかかわるコストが明確になります。また、このコストが明確になれば、適正な価格や単価設定が可能です。さらに、コスト面で不要な付加価値を生まないものを省ける手段を講じられます。そして、ビジネスプロセスの低賛成がはっきりと見えてくるので、物流管理業務全体の効率化につながります。

おわりに

問題が把握できれば、改善案が立てられるので、改善のPDCAサイクルを回しやすくなります。実施しているうちに、日ごとの作業の効率が上がったり、他の改善点が見えてきたりすることもあるでしょう。そのためにも、一歩踏みこんだ分析方法から、問題の原因究明、改善案の作成、改善策、具体的な実行計画と進めていくなら、何の結果も進展もなかったということは避けられるに違いありません。

タグ : コスト削減 業務効率化
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。