物流センターの機能・種類・最適活用法・選び方まで物流のプロが解説

2025.09.29物流・フルフィルメント
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物流センターは、単なる「商品を保管する場所」ではなく、在庫管理から流通加工、配送効率化まで幅広い機能を担う存在です。近年はEC需要の拡大や人手不足、コスト削減の要請を背景に、その役割はますます重要になっています。
しかし、物流センターには配送センター(DC)、流通加工センター(TC)など複数の種類があり、機能や強みは大きく異なります。

本記事では、物流のプロの視点から物流センターの基本機能・種類・活用方法・選び方までを体系的に解説します。

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物流センターとは高度な物流業務を行う施設

「物流センター」とは、企業が調達、あるいは製造した商品を受け入れ、保管し、お客様からの注文に合わせて出荷する「必要なものを必要な時に提供する」機能を持った建物を指します。

単純な倉庫機能にとどまらず、在庫管理システム、自動化設備、流通加工機能などを組み合わせ、複雑な物流に対応するための重要な施設となっています。

物流センターの重要性

現代のビジネス環境において、物流センターの重要性は年々高まっています。この背景には、市場環境の劇的な変化があります。
経産省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によれば、2024年の国内BtoC-EC市場規模は 26兆1,225億円で、前年比 5.1%増でした。

令和6年度 電子商取引に関する市場調査

参照:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

消費者の購買行動がオンラインへシフトする中、多品種少量配送や即日配送といったサービスレベルの向上が重要になっています。

また、労働力不足も物流センターの重要性を高めています。厚生労働省の調査では、物流業界の有効求人倍率は全産業平均を大幅に上回って推移しており、従来の物流オペレーションでは限界が見えています。
参照:物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題

さらに、グローバル化の進展により、企業は国際的な物流の最適化も求められています。物流センターは、これらの複雑な要求に応える施設としても重要になってきます。

物流センターと物流倉庫の違い

物流センターと従来の物流倉庫の大きな違いは、「担う機能の幅」にあります。

「物流センター」と「物流倉庫」はどちらも商品を保管する施設ですが、その目的や機能には違いがあります。

 物流センターは、商品の入荷から出荷までの一連の業務を行う施設として位置づけられています。「入荷・保管・ピッキング・流通加工・検品・梱包・出荷」の機能を備え、「必要な時に必要な数の商品を届けるための拠点」としての役割を担っています。

 一方、物流倉庫は商品の保管をメインとする施設となります。商品が入荷してから出荷されるまでの間、品質を維持したまま保管する役割を担っています。

 物流センターは「出荷」に重点を置いており、物流倉庫は「保管」に重点を置いている点が両者の大きな違いです。 

物流倉庫の目的は、商品を安全かつ効率的に保管することです。工場から出荷された製品を一時的に預かり、品質を維持したまま適切な環境で管理します。
倉庫内には、商品に合わせた保管設備が整っておりスペースを最大限に活用するためのラックなど工夫が凝らされています。

一方で、物流センターでは、商品を迅速に仕分けるための自動仕分け機や、高頻度な入出荷に対応するコンベアシステムが整備されています。出荷頻度が高いため、出荷エリアと在庫エリアが効率的に連携するよう設計されています。

商品の回転率を最大化するために、保管スペースに加えて作業スペース(検品、梱包、仕分けなど)が重視されています。効率的な動線設計により、入庫から出荷までの作業がスムーズに行われるように工夫されています。

ただ、昨今では物流センター機能を一部担う物流倉庫も登場しており、定義が曖昧になっている面もありますが、それぞれの機能や役割を理解しておくことは、物流業務を進めるうえで重要なポイントとなります。

物流センターの役割

現代の物流センターは、企業の物流を支える拠点として、多面的な役割を担っています。従来の「商品を保管する場所」の倉庫とは違い、品質維持はもちろん、流通加工といった機能もある点が特徴です。
ここからは具体的な特徴をご紹介していきます。

商品の保管機能

物流センターでは、商品の種類に合わせて最適な環境を作っています。

温度管理では、常温の商品はもちろん、冷蔵が必要なもの(2〜10℃)、冷凍食品(-18℃以下)など、商品ごとに適切な温度で保管します。その他の環境管理として、湿度を調整したり、ほこりや虫が入らないようにしたり、商品が傷まないよう紫外線をカットしたりと、商品を守るためのあらゆる工夫をしています。

専門的な商品を取り扱う物流センターでは、指紋認証や監視カメラでセキュリティを強化し、不審者の侵入を防ぎ、取り扱い商品の保管を実施しています。

事業継続計画(BCP)

物流センターは、災害や緊急事態が起きても事業を続けられるよう準備しています。

災害対策として、地震に強い建物にし、停電時でも動く自家発電機を備え、緊急時の連絡手段や食料・水などの備蓄も用意しています。まるで防災センターのような機能を持っているのです。

リスク分散では、1つの物流センターが使えなくなっても、他の拠点と連携して業務を続けられる仕組みを作っています。複数の場所に在庫を分けて保管することで、リスクを減らしています。また、コロナのようなパンデミックのような状況に備えて、人と人の接触を減らす作業方法や、作業場所を分ける、清潔を保つルールなど、長期間安全に運営できる体制を整えています。

これらすべてを、緊急時の対応マニュアルや定期的な訓練、関係者との連絡体制と組み合わせることで、社会的な側面を満たしつつ物流センターの運用は行われています。

商品の加工機能

物流センターでは、商品をただ保管するだけでなく、発送拠点としての役割も果たしています。

取り扱い商品によって、個別に包装したり、複数の商品をセットにしたり、季節やイベントに合わせた特別なパッケージに変更し出荷業務を実施しています。

また、効率化の取り組みでは、作業の手順を統一し、機械でできることは機械に任せ、品質管理の仕組みを整えることで、安定して高品質なサービスを提供し続けてるような物流作業標準化も行われている物流センターも多くあります。

自社内で物流センターなどを保有している場合、物流作業の標準化は効果的な物流センター運用に必要になってきます。以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせてお読みください。

物流現場の生産性を向上させる「作業標準化」とは

物流センターの種類と特徴

物流センターは、その主要機能と運営目的に応じて複数のタイプに分類されます。各タイプは独自の強みと適用領域を持つため、事業特性に応じた適切な選択が成功の鍵となります。

センター種別 概要 主な機能 活用事例
DC(Distribution Center / 配送センター) 商品を在庫として保管し、受注内容に応じて出荷する「在庫型センター」 ・在庫保管
・受注に基づくピッキング
・出荷
・大量調達や製造受け口として機能
・EC業界のロングテール商品管理
・製造業や卸売業の供給拠点
TC(Transfer Center / 流通加工センター) 商品を在庫せず仕分けして配送トラックに渡す「スルー型センター」 ・納入商品の方面・店舗別仕分け
・迅速な通過型オペレーション
・宅配・路線便の全国方面別仕分け
・流通小売業の店舗別納品仕分け
FC(Fulfillment Center / フルフィルメントセンター) EC特化型センター。商品の受注から出荷、返品まで一気通貫で対応 ・在庫管理
・受注処理
・ピッキング
・顧客データ管理
・返品・クレーム対応
・決済処理
・EC通販事業(Amazonなど)
・D2Cブランド

配送センター(DC)の機能

DCとは商品を在庫として保管し、受注内容に応じて出荷する物流センターを指します。

「在庫型センター」と呼ばれることもあります。

 DCは広く一般的に活用されている運用形態であり、ロングテール商品を扱うEC業界、お客様への迅速な商品の供給が求められる製造業や卸売業などで活用されています。

DC活用の期待効果として、在庫を保有しているために急なオーダーにも対応が可能である点、保管機能を持つためにボリュームディスカウントを利かせた大量調達や製造の受け口となることも可能である点があげられます。

流通加工センター(TC)の機能

TCとは商品を在庫せず、納入された商品を効率よく迅速に仕分けして配送トラックに受け渡す機能を持つ物流センターを指します。

「スルー型センター」や「通過型センター」と呼ばれることもあります。 

TCの代表的な活用事例は、宅配/路線会社で集荷した貨物の全国方面別仕分けや、多数の店舗を持つ流通小売業への納品店舗別仕分けといった業務です。
TCを活用することで、方面や配送先別に貨物をまとめることによる配送車両台数圧縮や、在庫削減が期待できます。

フルフィルメントセンター(FC)の機能

インターネット通販の普及で大きく様変わりした物流業界ですが、この時代に注目を集めているのが「FC(フルフィルメントセンター)」です。

 「FC(フルフィルメントセンター)」は、ECにおける商品の管理・ピッキング・配送を行う物流センターです。エンドユーザーから受注を受けて迅速に発送するという販売業務を行う物流センターとも言えるでしょう。

そのメリットは、商品の仕入れやエンドユーザーから受注、包装、発送、在庫管理、顧客データ管理、返品対応、クレーム対応、決済処理まで、すべて物流センターで完結するということです。

自社物流センターの選び方

これまでは、物流センターの役割、どのような物流センターになるのかについてご紹介してきました。ここからは、物流センターの選定について解説します。

まず、物流センターそのものを自社資産とするか? という視点での検討が必要です。
利用方法は、大きく2つに分けられます。

1つ目は自社専用の物流センターを用地買収・建設して新規で用意する方法です。自社の業務に合わせた専用物流センターを手にすることができる一方で、大きな投資を伴う方法です。

2つ目は、外部企業との取引を通じた賃貸利用です。こちらは初期の費用を圧縮することができる一方で、既存の建物構造の制約を受けやすくなります。

今回の章では、自社専用の物流センターを作成する場合において重要となる立地条件・コスト・安全性を解説しつつ、次の章で外部企業との取引き(3PL)との比較を解説していきます。

立地条件

物流センターの立地は、配送効率とコストに直結します。主要な高速道路や空港・港湾に近いエリアは、配送リードタイムを短縮し、輸送コストを抑える効果があります。

立地については事業分野によって優先度が異なりますが、EC事業の場合、主要消費地(関東・関西など)に拠点を置くことで「即日配送」や「翌日配送」といったサービス競争にも対応しやすくなります。

反対に、発送のスピード感をそこまで重視しない形態であれば、立地の優先度を下げることで、初期投資のコストを引き下げることも可能となっています。利便性とコストはトレードオフの関係性のため、どこまで妥協できるのかを綿密に想定することが重要になってきます。

以下の記事では、物流拠点の選び方や都内に物流拠点を構えるメリット・デメリットなどを解説しています。物流コストの削減や物流拠点に興味がある方は参考にしてください。
物流や倉庫の拠点選びのポイントとオススメの立地を紹介

コスト

物流センターのコストは、「初期投資」「運営費用」という2つの側面から捉える必要があります。

まず初期投資については、設備導入と将来的な拡張性のバランスを意識することが重要です。過剰な設備投資を行えば、財務負担が大きくなり、短期的な経営を圧迫する可能性があります。しかし逆に設備が不十分だと、事業が拡大した際に対応できず、機会損失につながるリスクがあります。そこで、事業の成長段階に合わせて設備を追加していけるよう、段階的な投資計画を立てることが望ましいといえます。

運営費用については、人件費や光熱費、システム利用料、保守費用など、日常的に発生するコストの見積もりが重要です。
効率化の取り組みや自動化投資の効果を正しく評価し、無理なく持続できる運営体制を整え運営費用の最適化も必要になってきます。

つまり、自社の物流センターを選ぶ際には、目に見える建設費や設備投資額だけでなく、日々の運営コストまで含めて総合的に判断することが不可欠です。

設備機能

設備機能については、EC事業や食品事業での物流センターなのかなどの条件によって設備投資の費用は変化してきます。

たとえば食品や医薬品を扱う場合には温度管理機能が不可欠であり、取り扱う商品に応じて最適な環境を整える必要があります。
食品と医薬品の温度管理の最大の違いは、管理の厳格さ目的にあります。食品は鮮度維持と腐敗防止が主目的であるのに対し、医薬品は有効性の維持と安全性の確保が最重要ですそのため、医薬品を管理する場合、設備だけでなく、医薬品製造業・医薬部外品製造業・医療機器製造業・化粧品製造業などの資格も合わせて必要になってきます。

参照:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

また、様々な種類のラックを導入することで空間効率を高められるほか、仕分け機やコンベア、無人搬送車などのマテハン機器を導入すれば作業効率を大幅に改善できます。自社センターであれば商品特性に合わせて設備を設計できる一方で、導入にかかる投資額は非常に大きくなります。

初期投資に関しては、最低限必要な設備機能の実装していくのが無駄なく物流センターを運用するポイントになります。

労働力の確保

労働力不足が続く物流業界において、安定した人員の確保は大きな課題となります。

自社で物流センターを構える場合には、採用から教育までを自社で担う必要があり、人件費や育成コストが大きな負担となりますが、その分、業務品質の均一化やノウハウの蓄積といった長期的な強みを築くことが可能です。

安定的な労働力の確保のためには前述したような立地条件を意識することで新規従業員の確保だけでなく、継続年数を上げることのできる要因にもつながってきます。
ただ、注意点として倉庫や物流センターが密集している場合、結果的に競争率が高く賃金が高くなってしまう傾向があるのでその点は注意が必要となってきます。

安全性

物流センターにおいては、安全性も無視できない重要な観点です。

商品の保管に関する防火・防災体制や盗難防止の仕組みはもちろんのこと、作業員が安心して業務に従事できる労働環境を整備することが欠かせません。
自社で物流センターを設ける場合には、防犯カメラや入退館管理システムの導入といったセキュリティ対策に加え、労働安全衛生に基づいた作業環境の整備を自ら行う責任があります。そのため、一定の投資や体制構築が必要となります。

総じて言えるのは、自社物流センターは長期的な投資として事業特性に合わせた最適化を図れる一方で、初期投資や柔軟性、安全性確保の面で大きな負担を伴うという点です。
自社の事業戦略や商品特性を踏まえたうえで、物流体制を中長期的な視点から構築することが求められます。

自社物流センター導入と3PLの活用の比較

企業の物流戦略を考える上で、自社物流センターを構築するか、それとも3PL(Third Party Logistics)を活用するかは大きな分岐点となります。両者には異なる強みと課題があり、事業フェーズや競争環境、そして経営資源の状況によって最適な判断は変わってきます。

こちらがメリット・デメリットの一覧となっています。それぞれ解説していきます。

項目 自社物流センター 3PL(Third Party Logistics)
メリット ・物流機能を自社管理下に置ける
・配送品質やサービスレベルを自社基準で統一可能
・コスト構造を把握し効率化
・物流ノウハウや人材スキルの蓄積
・顧客データの活用による長期的資産化
・初期投資を抑えられる
・柔軟に事業拡大・縮小が可能
・コア事業に経営資源を集中できる
・最新技術や業界のベストプラクティスを活用可能
・保管・在庫管理もリアルタイムで対応可能
デメリット ・巨額の初期投資が必要
・高い固定費負担が継続
・需要減少時の財務リスク拡大
・労働力確保や災害リスクへの対応が必要
・技術革新への対応が遅れる可能性
・物流品質が委託先に依存
・改善スピードが自社基準に届かない場合あり
・情報連携やシステム統合の複雑さによる課題
・長期的には委託コスト増加の可能性
・契約終了時の切り替え負担が発生

 

自社物流センターのメリット・デメリット

自社物流センターを導入する最大のメリットは、物流機能を完全に自社の管理下に置けることです。デメリットとしては、巨額の初期投資や高い固定費負担となります。

配送品質やサービスレベルを自社基準で統一できるため、柔軟性が高くなります。さらに、コスト構造を詳細に把握できることから、継続的な効率化やコスト削減の取り組みが可能です。加えて、物流ノウハウの蓄積や人材スキルの向上、顧客データの蓄積など、長期的な企業資産を形成できる点も大きなメリットといえます。

しかし同時に、巨額の初期投資や高い固定費負担は大きなデメリットとなります。需要が減少してもコスト負担は続き、財務リスクが拡大する可能性があります。加えて、労働力の確保や災害リスク、さらには急速に進む技術革新への対応遅れなど、経営上の柔軟性を損なう要因も少なくありません。

これに対し、3PLを活用することで物流の専門性を効率的に取り込みつつ、自社の経営資源をコア事業に集中できます。保管や在庫管理においてはリアルタイム管理は3PLを利用しても問題なく実施できます。

3PLのメリット・デメリット

3PLを利用するメリットは、初期投資を抑えることができる点です。
デメリットとしては、外部委託になることによる柔軟性の無さや情報セキュリティ面となります。

3PLを利用することで、初期投資を抑えつつ事業の柔軟性を確保することができます。成長段階や新規事業展開時には、資金をコア事業に集中できるのは重要なメリットとなり得ます。また、業界の最新技術やベストプラクティスを取り入れられる点は、競争力の維持・強化に繋がる要素となります。

一方で、外部委託によるデメリットも無視できません。物流品質や改善スピードは委託先の能力に左右されるため、自社が理想とする基準との差が生まれる可能性があります。また、情報セキュリティに関しても、あくまで外部委託の形になるため、一定数のリスクがあるのもデメリットとなり得ます。

さらに、長期的には委託コストが膨らみ、自社運営よりも費用効率が下がる点や、契約終了時の切り替え負担といった点への考慮が必要です。

「自社に最適な物流の形がわからない」「発送業務の効率化に悩んでいる」といった課題をお持ちの方は、ぜひ一度ウルロジへご相談ください。物流のプロが貴社の課題に合わせた最適な物流プランをご提案いたします。

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物流センターの今後と業界のトレンド

物流業界は今、大きな変化の波の中にあります。AIや自動化などの新しい技術の普及、環境問題への対応、働き方改革といった社会的な要請によって、物流センターは従来の「保管と出荷の場所」から、持続可能で効率的な拠点へと変化することが求められています。

ESGに向けた取り組み

物流センターでは、環境・社会・ガバナンス(ESG)に対応することが重要な経営課題になっています。これは単なる社会貢献ではなく、事業の成長や競争力に直結する取り組みです。

まず環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて省エネ対策や再生可能エネルギーの導入が進んでいます。LED照明や太陽光パネル、蓄電池を組み合わせてエネルギーを自給する物流センターもあり、最新の施設では「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の認証を目指す例もあります。

参照:「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名南」竣工 (2024年3月31日)

資材の面では、段ボールや梱包材を減らしたり、再生素材や生分解性の包装を取り入れる流れが広がっています。さらに、センター内での分別回収を徹底することでリサイクル率を高める試みも一般化しています。

次に社会面では、労働環境の改善が大きな課題です。かつての物流センターは、「3K(きつい、きたない、きけん)」という言葉で表現されることもありましたが、これらの概念は変わりつつあります。

代表的な例として、物流センターで働く人が昼食や休憩時間を過ごせるよう、コンビニやカフェを併設したり、レストランや清潔でおしゃれな食事専用スペースを設置したり、子育て世代が安心して就労できるように託児所を設置したりするケースがあります。

地域とのつながりも重要なテーマです。物流センターは地域の雇用を支えるだけでなく、災害時には物資拠点としての役割を果たすことも期待されています。交通渋滞や騒音といった地元への影響に配慮し、自治体や住民との協力関係を築くことも欠かせません。

物流センターに限らず、物流業界全体として社会問題への貢献は意識されています。
以下の記事では、解決策となるサステイナブル物流の基本やメリット、導入事例までご紹介しているので併せてお読みください。
サステイナブル物流とは?企業が知っておくべき基本や導入メリットを解説

省人化を目的としたDX化

近年、少子化や労働人口の減少に伴い、物流業界でも人手不足が顕著になっています。そうした社会事情を見据え、物流センターでは省人化・効率化を実現する自動化設備の開発・普及が急速に進んでいます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、労働力不足の解決手段となり得る可能性を持っています。代表的な取り組みとして、自動搬送ロボット(AMR)やAGV、無人フォークリフトの導入が進んでいます。これにより、倉庫内の搬送作業が自動化され、作業員の移動時間が大幅に削減されます。

例えば、Amazonは2012年にKiva Systemsを買収して以来、自社の物流ネットワークに750,000台以上のロボットを導入しており、社員の作業負荷を軽減しつつ処理速度と精度を向上させています。

参照:Amazon Robotics deploys these 9 robots across its operations globally

省人化を進めるDX化には、初期導入にかかる高コストや、システム・ロボットの運用・保守に関する専門知識の必要性など、いくつかの課題があります。
また、ECなどで繁閑差が激しい業態では、ロボットやシステムの最適な規模をどう設計するかが、ROI(投資対効果)の鍵となります。

物流センターを正しく理解し、自社物流の改善へつなげよう

物流センターは、単なる保管や出荷の拠点ではなく、企業の競争力を左右する重要な要素です。配送スピードを重視したいのか、付加価値を生みたいのか、あるいはEC事業を支えたいのかなどの目的に応じて、DC・TC・FCといったセンターのタイプを選ぶ必要があります。

自社で物流センターを構築すれば、高い自由度やノウハウの蓄積といった強みを得られますが、大きな投資や運営リスクが伴います。一方、3PLを利用すれば柔軟性や専門性を取り入れられますが、外部依存という制約もあるため、どちらを選ぶかは成長段階や経営方針に合わせて判断することが重要です。

また、これからの物流センターには環境対応やDX(デジタル化)への取り組みが欠かせません。省エネや労働環境の改善、AIやロボットの導入は効率化を進めるだけでなく、新しい価値を生み出す手段にもなります。

将来の競争力を見据え、自社に最適な物流戦略を構築していくことが重要になってきます。

タグ : 用語 在庫管理 業務効率化
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藤田直樹
国立大学大学院にて、工学修士課程を修了。大手企業のマーケティング支援を経て、ディーエムソリューションズが運営するEC物流代行サービス「ウルロジ」に参画。 現在はウルロジのマーケティング責任者として戦略から実行までを統括する傍ら、物流倉庫の作業標準化や品質改善プロジェクトも主導。工学的な知見、マーケターとしての顧客視点、物流現場の視点を掛け合わせ、EC事業の成長を加速させる実践的ノウハウを提供する。