美術品・骨董品の輸送(配送)・保管で気をつけるべきポイント

2021.11.29物流・フルフィルメント
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輸送・配送業務では、あらゆるものを扱います。その中でも特に慎重に輸送しなければいけないものが、「美術品」「骨董品」です。

美術品や骨董品は一点ものの作品が多いです。そのため、破損・汚損などのリスクを最小限に抑える必要があります。今回は、モノの輸送でも特に特殊な美術品・骨董品の輸送・保管についてみていきましょう。

輸送(配送)で気をつけたいポイント

美術品・骨董品の輸送は、企画展を行う際や売買の際などに発生します。

慎重に運ばなければいけないのは分かっていますが、具体的に美術品・骨董品の輸送で気を付けたいポイントはどのようなものがあるのでしょうか。

梱包

まず重要なのが、梱包です。美術品や骨董品はそれぞれ大きさや形が異なるため、しっかりと包める梱包資材を用意することが重要です。

輸送時の衝撃

美術品や骨董品の大敵な物理的な衝撃です。そして、それが最も受けやすいのが輸送時です。梱包をしっかりと行うことは勿論ですが、エアーサスペンションのついた車両を使うなど、衝撃を和らげることが重要です。

輸送時の温度・湿度管理

美術品・骨董品は温度変化や湿度変化に弱いです。保管時や展示時には気を付けますが、輸送時にもしっかりと温度管理・湿度管理をすることが重要です。温度・湿度調整が出来る空調設備を持った専用車両もありますので、有効に使いましょう。

搬入と設置

美術品の搬入や設置は、単純に見えて技術のいる作業です。美術に精通したスタッフに行ってもらうことが大切です。

美術展によっては、輸送業者が指定されていることがあります。美術品の輸送は、それほど技術のいる作業なのです。

保管で気をつけるべきポイント

美術品や骨董品は、輸送時だけでなく、保管時にも気を付けなくてはいけません。

実際にどのようなポイントを気を付けた方が良いのかご説明します。

保管温度を気を付ける

美術品や骨董品には、高温・低温に弱いものや、温度変化によって劣化してしまうものがあります。

種類によって最適な温度は様々ですが、例えば絵画の場合は18~20度が最適と言われています。倉庫などは、夏は暑く、冬は寒くなりがちです。

しっかりと年間を通して温度管理をされている場所に保管しましょう。

保管湿度を気を付ける

日本は高温多湿な気候です。また、鉄筋コンクリートなどでは湿気がたまりやすく注意が必要です。

保管に最適な湿度は、美術品・骨董品の素材によって違いますが、以下が最適と言われています。

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最適な保管物
湿度100% 出土遺物(防カビ処理が必要)
湿度55~65% 紙・木・染織品・漆でつくられた品
湿度50-65% 象牙・皮・羊皮紙・歴史的資料
湿度50~55% 油絵
湿度45%以下 金属・石・陶磁器

保管したい美術品・骨董品にあった湿度を保てる場所に保管しましょう。

紫外線に気を付ける

美術品・骨董品を劣化させてしまう大きな原因のひとつが紫外線です。

紙素材のものは、紫外線により日焼けしてしまいますし、絵の具なども紫外線によって色が変わってしまったり、劣化が進み崩れてしまいます。直射日光でなく、蛍光灯などでも少なからず劣化は進んでしまうため、美術品や骨董品をしっかりと紙や布などで覆って保管することが大切です。

地震・火事に気を付ける

美術品・骨董品の一番の大敵が物理的衝撃と火です。

日本は災害大国です。しっかりと耐震構造の建物内に保管をし、落下や衝撃を受けにくくすることが重要です。また、美術品同士がぶつかって破損しないよう、保管方法にも気を付けなければいけません。

耐火・消火設備も非常に重要です。耐火構造の建物であることはもちろんですが、忘れてはいけないのが消火設備です。紙素材の美術品の場合、スプリンクラーの水で濡れて傷んでしまう可能性があります。また、粉末の消火剤などの場合も、美術品を汚してしまう可能性があります。たとえばアルゴナイトという、特殊なガスを使った消火剤などが存在します。こういった美術品にやさしい消火設備を持っているかどうかも重要なポイントです。

カビ・虫に気を付ける

長期保管の場合は、カビや虫・獣害対策なども重要なポイントです。その場合、燻蒸設備を備えた倉庫で保管することが有効です。

燻蒸とは、密閉空間を薬剤やガスなどで満たし、作品の殺菌殺虫を行う処置のことです。昔は特殊な薬剤を使用した燻蒸が行われてきましたが、環境や人体への配慮から近年では窒素を利用した低酸素濃度殺虫処理が行われていることが多くなっています。

これらのポイントを抑え、最適な保管方法を選びましょう。

業者を選ぶ際のポイント

さて、ここまで美術品・骨董品の輸送と保管についてご紹介してきました。実際に輸送・保管業者を選ぶ際は、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
送・保管する美術品の特徴をしっかり調べて、最適な方法を選ぶことが重要です。

取り扱える品の内容

ひとくくりに美術品・骨董品といっても、大規模なモノから小さいもの、絵画などの軽いものから陶磁器などの壊れやすいものなど非常に様々です。また、モノの価値も大きく違います。

まずはその業者がどのようなものは扱えるのか、どのジャンルが得意なのかをしっかりと調べましょう。

梱包、搬入、設置など業務範囲がどこまであるか

輸送においては、梱包、搬入、設置など様々な作業が発生します。梱包ひとつにおいても、モノに持って必要な梱包資材も異なります。その業者はどの業務を行ってくれるかをしっかり確認することが重要です。

美術品輸送専門車を持っているか

美術品・骨董品の車を使っての輸送が、最も気を付けるべき項目の一つです。

輸送業者が普通のトラックではなく、美術品輸送専門車を持っているかは非常に重要なポイントです。美術品輸送専門車は通常のトラックと違い、下記のような特徴があることが多いです。

  • 温度・湿度を一定に保つ空調設備を持っている
  • 輸送中の振動をやわらげるエアサスペンションを装備している
  • 荷台部分の壁や床がカーペットなど柔らかい素材でおおわれている

輸送する美術品の種類などから、最適な美術品輸送を出来る車両を選びましょう。

美術品保険の有無や内容

美術品は一点物のため、保険をかけることが非常に重要です。

美術品の保険は、作品種別・評価額・保管期間などによって保険の種類や保険料率が異なります。最適な美術品保険を選ぶことが重要です。また、美術品保険は、輸送業者でなく専門業者にかけてもらうことも出来ます。

おわりに

モノの輸送・保管は、あらゆるもので慎重に行う必要がありますが、文化的・絶対的価値のある美術品・骨董品は特に慎重に行う必要があります。輸送・保管する美術品の特徴をしっかり調べて、最適な方法を選ぶことが重要です。

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。