物流アウトソーシングで気をつけたいメリット・デメリットとは?

2023.11.20物流・フルフィルメント
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物流アウトソーシングで気をつけたいメリット・デメリットとは?
商品の管理や出荷作業などを専門業者に委託する物流アウトソーシングは、今では一般的となってきており、何らかの形で物流アウトソーシングを利用している企業は多くなっています。物流アウトソーシングを利用する際には、その仕組みやメリット、注意点を知っておくことがサービスを有効利用し、トラブルの未然防止に役立ちます。

物流アウトソーシングのメリットと注意点についてご紹介します。

物流アウトソーシングとは何か?

物流アウトソーシングとは何か?
物流アウトソーシングとは、物流システムの構築と管理、そしてそのシステムの運営という物流に関わる業務のすべてを専門業者に委託する外部委託のことです。

専門業者に委託することで、スムーズなビジネスを展開することができます。

物流アウトソーシングにおけるサービス範囲

物流アウトソーシングの業務範囲は一般的なもので以下のようなサービスとなります。

  • 検品
  • 保管、在庫管理
  • ピッキング
  • 梱包
  • 出荷

検品に関しては、一般的な製品の個数管理という検品業務に加えて、クリーニングやラベルチェック、金属探知などのサービスを提供しているケースもあります。また、製品によっては温度管理サービスなどもセレクトすることができます。

物流アウトソーシングのメリット

物流アウトソーシングのメリット
自社で検品や流通、梱包、出荷を行わずに外部委託する物流アウトソーシングのメリットとはどのようなものなのでしょうか。

コスト削減と明確化

物流アウトソーシングの最大のメリットはコスト削減です。倉庫や配送ルート、トラックなどの準備、そして人材と物流を自社で賄うためにはコストと時間がかかります。専門業者に委託することで、そのコストを大幅にカットすることができるのです。

業務を効率化

複雑な作業とシステムが必要になる物流をアウトソーシングすることで、物流に関する負担を軽減し会社全体の作業効率をあげることができます。

また、物流システムを構築する時間を短縮できるので、より早くサービスを提供して利益を上げることができるのです。

サービスの質の向上とリスクの回避

物流アウトソーシングでは、専門業者に業務委託することになるのでサービスの質の安定を図ることができます。自社で物流システムを構築し運営する場合、専門業者と比べるとサービスの質などが低下しがちです。

その点、始めから専門業者に任せることで、質の高いサービスを業務開始直後から提供することができます。専門業者は、物流に関するあらゆる知識とノウハウを持っていますので、長年の営業で培ってきたサービスとノウハウを利用できるのは、大変大きなメリットです。

専門スタッフが丁寧に梱包や検品を行い、スピーディーに発送できるので顧客に提供するサービスの質が全体的に向上することとなります。

特に、サプライチェーン管理(SCM)が進化している現在、配送業務と製品サービスは一体化したイメージが強くなっています。物流アウトソーシングで物流サービスの質を向上させることは、直接的に自社の顧客満足度の上昇につながります。

信頼を損ねるきっかけになりかねない業務をプロである専門業者にアウトソーシングすることで、ミスを回避することができます。

自由度の高さ

物流機能を自社で賄う場合、サービスが固定化してしまうというデメリットがあります。物流アウトソーシングのメリットは、物流機能に関して融通が利く専門業者のサービスを受けられるという点にあります。

物流の専門業者に委託することで、物流をひとつの商品や方法に固定化させない柔軟な対応が可能になります。従来の保管方法や配送方法では対応できない商品を取り扱う際にも、臨機応変な対応をすることができます。

物流アウトソーシングで気をつけるべきポイント

物流アウトソーシングで気をつけるべきポイント

物流アウトソーシングはいいことばかりのようにも思えますが、デメリットや注意点もあります。物流アウトソーシングの注意点を確認しましょう。

情報漏洩のリスク

物流アウトソーシングの際には、委託先の業者に企業の秘密に当たる部分を提供する必要があります。

場合によっては長年のノウハウや入れ先などの情報を共有する必要が出てきます。そうなったときに、情報漏洩のリスクが付きまとうことになります。

また、梱包や発送に必ず必要な顧客情報が漏洩するリスクがあることに留意しておきましょう。

責任の所在があいまいになりがち

メリットの項目で「リスク回避」を上げましたが、トラブルが起こった時の責任の所在が分かりにくいというデメリットがあります。自社で物流システムを構築した場合は、責任の所在は非常に明確です。トラブルで被害にあった顧客に対して、責任の所在を明らかにして再発防止を確約するという対応をスピーディーに行うことができます。

その反面、アウトソーシングし場合には、責任の所在がどこあるのかという検証に時間がかかるケースがあるのです。

「契約時にしっかりと確認しておけば問題ない」ようにも思えますが、どのような時にどんな状況下でトラブルが起こるかは、誰にも解らないのです。

物流アウトソーシングのデメリットを軽減するために

物流アウトソーシングのデメリットを軽減するために
物流アウトソーシングには、コスト削減やサービスの質向上といったメリットがある反面、デメリットもあります。

デメリットを軽減して物流アウトソーシングを利用するためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

業務の複雑化を避ける

物流アウトソーシングの場合、業務委託後の自社の業務の変化やお互いの作業範囲を明確にすることか非常に重要です。

責任の所在を明確にさせるという点でも有意義ですが、お互いの業範囲を作業の流れに沿って確認することで、業務の複雑化を避けることがポイントです。

秘密保持契約は必ず結ぶ

デメリットの項目でご紹介した、情報漏洩のリスクを軽減するために必ず必要なのが「秘密保持契約」です。
物流アウトソーシングの場合、つい「業務委託契約書」に注目が集まりがちです。情報漏洩のリスクを減らすためにも、秘密保持契約の締結は、業務委託契約の内容と同じくらい重要です。

秘密保持契約の際には、契約の有効期限や内容、範囲などを入念に確認しましょう。

業務委託契約の内容にも注意

企業同士の業務委託ですから、契約書を交わすことになります。その際には、業務委託の範囲や料金、有効期間や解約の際の取り決めなどの加えて、損害賠償の項目も必ず追加しておきましょう。損害賠償に関する取り決めをしておくことで、損害を与えないようより注意深く業務にあたることにもつながります。

そして、請負契約か委任契約という点もポイントになります。同じようにも思えますが請負契約と委任契約は全く異なる契約です。

請負契約は「仕事の完成」を目的とした契約のことで、委任契約とは、「一定の行為」の遂行を目的とした契約です。つまり、請負契約の場合は委託した仕事が完成することが必要ですが、委任契約の場合はある程度の作業をしていればそれで足りるということになります。

つまり、委託先の業者の責任の範囲も変わってくることになります。請負契約では結果についての責任、委任契約は過程について責任が委託先の業者に発生するのです。

どちらの契約がよりお互いのニーズに合っているかをしっかりと確認して契約に臨みましょう。

物流アウトソーシングを利用するまでの流れ

物流アウトソーシングを利用するまでの流れ
物流アウトソーシングは、どのように利用すればよいのでしょうか。ここからは、利用の流れを解説します。

STEP1 情報収集と問い合せ

最初に、物流アウトソーシング業者に関する情報を収集します。事業者により得意分野やサービス内容などは異なるためです。例えば、食品関係を得意にしている事業者もあれば、アパレル関係を得意にしている事業者もあります。基本的に、得意分野に関してはノウハウが豊富です。

自社が扱う商品に関する実績が豊富な事業者を選ぶと、質の高いサービスを利用しやすくなるでしょう。気になる事業者を見つけたら、公式サイトや電話などで問い合わせをします。

STEP2 打ち合わせ

続いて、依頼先候補の物流アウトソーシング業者と打ち合わせを行います。この時点で、依頼先候補を1社に絞り込む必要はありません。気になる事業者が複数ある場合は、このことを説明したうえで各社と打ち合わせをするとよいでしょう。

打ち合わせのポイントは、依頼したい業務の内容と自社が抱えている課題をできるだけ正確に伝えることです。現状を正確に伝えられると、依頼先候補が行う提案の精度は高まります。打ち合わせの前に、これらの点を整理しておくとよいかもしれません。

STEP3 提案書と見積書を受け取る

打ち合わせ後に、依頼先候補の事業者から提案書と見積書を受けとります。まずは、依頼した業務、解決したい課題に対応していることを確認しなければなりません。もちろん、見積金額についても確認が必要です。疑問点や不満点があるときは、納得できるまで話し合いましょう。

ポイントは「大丈夫だろう」などと考えて、疑問点や不満点を放置しないことです。認識にずれが生じると、後に大きなトラブルに発展する恐れがあります。例えば、提供される業務の範囲やオプションの必要性など、気になるポイントをしっかりと確認しておくことが大切です。

STEP4 依頼先事業者の決定

提案書と見積書の内容をもとに、依頼する物流アウトソーシング業者を決定します。提案内容と見積金額を照らし合わせて、自社の目的に合致している事業者を選ぶことが重要です。また、長期的な視点も欠かせません。

ビジネスの成長に対応できない事業者を選ぶと、上記の作業をもう1度行うことになります。当然ながら、追加のコストも発生するでしょう。長く付き合える物流アウトソーシング業者を選んでおくと安心です。

STEP5 契約締結

納得できる物流アウトソーシング業者と契約を締結します。サービス導入後のトラブルを防ぐため詳細を確認しておくことが重要です。確認しておきたい主なポイントは次の通りです。

【確認したいポイント】

  • 業務内容
  • 業務委託料
  • 契約期間
  • 中途解約
  • 秘密保持契約
  • 損害賠償請求

上記の内容などに問題がないことを確かめてから契約を締結します。契約締結後、サービスが導入されるタイミングはケースにより異なります。数カ月を要することもあるため、スケジュールを確認するとともに早めに行動することが大切です。

物流アウトソーシングの費用相場

物流アウトソーシングの費用相場

物流アウトソーシングを依頼するうえで押さえておきたいのが費用相場です。この点を曖昧にしていると、見積金額を正確に評価できない恐れがあります。物流アウトソーシングにかかる費用の内訳とそれぞれの相場は次の通りです。

【費用の内訳と相場】

  • システム利用料:2~5万円/月
  • 保管料:1坪あたり4,000~7,000円/月
  • 入庫料:10~80円/個
  • デバンニング料:2~3万円/コンテナ
  • 検品料:10~100円/個
  • ピッキング料:10~30円/個
  • 梱包料:100~300円/個
  • 発送料:400~1,500円/個
  • 返品料:20円~/個

デバンニング料は、トラックなどに積まれた荷物をフォークリフトで降ろす作業にかかる費用です。一定の経験と技術を要するため、入庫料とは別に費用がかかります。上記の合計が物流アウトソーシングの費用相場です。具体的な費用はケースで異なるため確認が必要です。

物流アウトソーシング業者の選び方

物流アウトソーシング業者の選び方

ここからは、物流アウトソーシング業者の選び方を紹介します。

対応できる業務をチェック

物流アウトソーシング業者が対応できる業務は、業者によって異なります。自社が希望している業務を提供できることを確かめておかなければなりません。例えば、検針の可否、注文処理の可否などが考えられるでしょう。この作業を怠ると、必要なサービスを受けられないこともありえます。

サポート体制

サポート体制も確認しておきたいポイントです。日々の業務はもちろん、トラブル発生時の対応を確認しておかなければなりません。物流業務は顧客満足度に直結する大切な業務だからです。過去の事例などをもとに、具体的な対処について確認しておくと安心です。

実績

信頼できる物流アウトソーシング業者を選ぶため、実績の確認も欠かせません。ポイントは、自社とよく似た案件の実績を確認することです。例えば、同業種の案件、同規模の案件などが考えられます。これらの実績が豊富であれば、一定のノウハウを蓄積していると考えられます。

おわりに

物流アウトソーシング
物流アウトソーシングには、コスト削減や作業効率化など、様々なメリットがある一方で、情報漏洩や責任の所在などのリスクが生じます。

デメリットを軽減し、物流アウトソーシングをうまく利用するためには秘密保持契約の締結や業務委託契約の内容の確認などが重要です。

しっかりと委託先と打ち合わせをすることでリスクを軽減することができます。

タグ : コスト削減 ECお役立ち情報 EC運用 発送・梱包 業務効率化 EC物流用語
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。