日本・海外の物流業界におけるシェアリング・エコノミーとは?
2021.11.29物流・フルフィルメントインターネット及びスマートフォンの普及により、モノや資産を「所有する」という考え方が変わりつつあります。
近年、急速に発展してきた分野のひとつに「シェアリング・エコノミー(共有経済)」というモノの所有と貸し出しに関する事業やサービスがあります。
目次
シェアリング・エコノミーとは?
シェアリング・エコノミーとは、個人や法人が保有する遊休資産(時間やスキルのような無形のものも含む)の貸し出しを仲介するサービスのことです。貸主は遊休資産の貸し出しによる収入が得られ、借主は所有することなく比較的リーズナブルにサービスやモノの利用ができるというメリットがあります。
遊休資産の貸し借りが成立するためには信頼関係が必要になってきますが、それを補てん・担保するために仲介サービスや、ソーシャルメディアを活用したコミュニティ機能が活用されています。
シェアリングエコノミーの始まりは、2008年から開始された民泊サービス「Airbnb」と言われており、そこからシリコンバレーを中心に大きく発展していきました。
市場規模としては、2013年に150億ドルだったものが、2025年には3,350億ドルになると見込まれています。
シェアリング・エコノミーは、主に以下の5つの領域に分けられています。
シェア×モノ
個人や法人が所有しているモノを貸し出したり、販売するサービスです。
フリマサービスやレンタルサービス等があります。
シェア×空間
空いている空間を共有するサービスです。
ルームシェアや駐車場、貸し会議室サービスなどがあります。
シェア×移動
人の移動を伴うサービスです。
ライドシェアやカーシェアサービスなどがあります。
シェア×スキル
個人の持つスキルを貸したり、販売するサービスです。
家事代行やクラウドソーシングサービスなどがあります。
シェア×お金
お金を共有するサービスです。
クラウドファンディングサービスなどがこれにあたります。
不動産や車などの有形のものから、スキルやお金など無形のものまで様々な分野においてシェアリング・エコノミーは進んでいます。
物流におけるシェアリング・エコノミーとは?
シェアリング・エコノミーは、物流業界においても広がっています。
モノの保管や移動が伴う物流業界ですが、倉庫やトラックなどの設備や資産などに大きな費用が掛かり、初期投資や維持費が多くかかります。
その資産を活用して売上を生み出すため、いかに非稼働時間を減らすか。が重要になってきます。トラックなどが稼働していないときに、好きな時に好きな分だけ貸し借りが出来るシェアリング・エコノミーの仕組みは、物流業界に非常に相性が良いのです。
物流業界におけるシェアリング・エコノミーが活用されているサービスをいくつかご紹介します。
トラックの空き時間を利用して、配送を受託できる荷物配達サービス「ハコベル」
「ハコベル」は、印刷会社の持つ印刷機の空き時間を利用する印刷業界のシェアリングサービス「ラクスル」の運営会社が始めた、配送におけるシェアリングサービスです。
ハコベルに登録した運送業者の空きトラックなどと、荷物を運びたい荷主をオンラインでダイレクトに繋げて、マッチングさせることが出来ます。
運送業者にとっては、トラックなどの非稼働時間を有効に使うことが出来、荷主にとっては荷物を運べる事業者を一つ一つ探す手間が省けるので便利です。
必要な時に、必要なだけ倉庫を借りられるシェアリングサービス「souco」
「souco」は、空きスペースを持つ倉庫業者と、モノを預けたい事業者をマッチングさせるシェアリングサービスです。
倉庫事業者は空きスペースがあれば、soucoに登録することが出来ます。モノを預けたい事業者はsouco上で空きスペースを検索でき、条件に合った倉庫事業者にモノを預けることが出来ます。
Amazonの荷物を運ぶことが出来る「Amazon Flex」
Amazonもシェアリングエコノミーサービスを提供しています。それが、Amazonの荷物を誰でも運ぶことが出来るサービス「Amazon Flex」です。
Amazon Flexに登録出来れば、誰でもAmazonの荷物を運ぶことが出来、ドライバーは配送料を受け取ることが出来ます。
陸・空・海それぞれのシェアリング・エコノミーの実態とは?
倉庫・運輸業界のシェアリング・エコノミーをご紹介してきましたが、陸運以外の物流におけるシェアリング・エコノミーはどうなのでしょう?
空におけるシェアリング・エコノミーは進みつつあります。
LCCの台頭により、航空業界は価格競争が過熱しています。航空事業者にとって、高額な航空機の購入は容易ではありません。そんな中、リース機を利用する航空会社も増えてきており、2010年にはリース比率が35%を突破しています。
また、海外では「ライズ」という特定区間における飛行機乗り放題サービスも始まっています。このライズも1台も航空機を所有しておらず、チャーター機会社の航空機を利用してサービスを提供しています。
海におけるシェアリング・エコノミーの動向はどうなのでしょう。
実は海運業界では、シェアリング・エコノミーはあまり浸透しておりません。世界経済の減速や貿易に関する法や税金の問題で、投資家などの目も向きづらく、古い業界ということもあってなかなか浸透していないのです。
海外におけるシェアリング・エコノミーの実態
日本国内でも生活に浸透しつつあるシェアリング・エコノミーですが、AirbnbやUberなど海外発祥のサービスが多いことから、海外でのシェアリング・エコノミーの盛り上がりは国内よりも大きいことが分かります。
日本国内におけるAirbnbの規制などからも分かるように、日本国内では法整備などが進んでおらず、海外に比べ、遅れています。
北ヨーロッパ最大のシンクタンクTimbroが、国や企業のシェアリングエコノミーの規模を明らかにする世界初の指標「Timbro Sharing Economy Index」を発表しました。国別上位にはアイスランド、タークス・カイコス諸島、モンテネグロ、マルタ、ニュージーランドがランクインしており、日本は何と91位という結果でした。北欧・ヨーロッパを中心にシェアリング・エコノミーが普及していっていることが分かり、地域によってもシェアリング・エコノミーの受け入れ方の差があることが分かります。
おわりに
社会は生産と所有の時代から、共有・再利用の時代に切り替わりつつあります。
物流業界においてもシェアリング・エコノミーは、労働力不足や環境問題の観点からメリットの多い仕組みです。シェアリング・エコノミーが普及することで、経済の発展に大きく貢献すると考えられています。運用のアイデア次第ではこれからのライフスタイルが大きく変化することになるでしょう。
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