物流の歴史とこれからの物流の未来について
2021.11.29物流・フルフィルメントamazonや楽天などネット通販での買い物が一般的になり、通販業の規模がどんどん拡大している昨今、それに伴い商品を保管や運搬する物流企業も成長しています。この「物流」という言葉ははるか昔から存在しているような気がしますが日本でこの物流という概念が誕生したのは意外にも最近のことなのです。
今回はこの物流という概念が誕生した歴史について物流の誕生と歴史、現代の物流、未来の物流に分けてご紹介します。
目次
今までの物流の歴史
日本でも遥か昔から陸路や水路を開拓し、農作物などを運んで商売を行うという物流や流通の元となる作業は存在したのですが、「物流」という言葉や業務が確立されたのは意外にも最近で戦後の1950年代になります。
1950年代
戦後の爪痕が残る1950年代の日本は、まだまだ道路の整備が追いついておらず、国内の主要な道は殆どが未舗装で小石などが散乱し、自動車でも人力の荷車でも商品を運ぶ際の破損が一番の悩みでした。
そのため当時の運搬で最も費用がかかったのは燃料費でも人件費でもなく梱包費であり、悪路でも商品が破損してしまわないように厳重に梱包をすることが最も重要であったと言われています。
これでは商品が多くの人に行き渡り景気が潤っていくことへの弊害になってしまうと考えた当時の日本政府は先進国であるアメリカに物流の視察団を送り商材の運搬を勉強させることにしました。
当時商品の生産に重きを置いていて運搬にはあまり目を向けていなかった日本にとっては画期的な研修となり、下記のようなことを学びました。
- 「生産も物流も同等として考え、設備や技術への投資を行うこと」
- 「物流技術を専門とした企業の基盤を作ること」
- 「物流技術を発展させるために梱包から運搬に関する技術を公共化させること」
- 「物流技術を安定させるための拠点を設けること」
- 「物流効率を向上させるために交通網の整備を強化すること」
アメリカではこれら物流業務のことを「Physical Distribution」と呼んでおり、この言葉を日本に持ち帰り「物的流通」という物流の語源になる言葉に訳したのです。
1960年代以降
高度経済成長により商品の大量生産化、大量消費化が進むと同時に東京オリンピックの開催も決まり日本の陸路や水路、空路などの整備が急ピッチで進められました。交通網が整備されると同時に大量生産されるようになった商品を運搬する物流拠点も多く建設され、陸路の物流が発達していったのです。
高度経済成長により大量生産、大量消費の時代となり、1960年代は日本の物流が効率化され、飛躍的に伸びた時代でした。
2000年以降の現在
バブル経済が崩壊し、それ以前の大量生産、大量消費で商品を作れば作るほど売れていた時代とは異なり、消費者が商品を厳選する多品種少量生産へと時代が変わったため、物流業もより細かい拠点への配送に力を入れるようになりました。チェーン小売業への各配送や、一般家庭に迅速に荷物を配達するための物流網などに対応できるよう、一度に大量の荷物を輸送するだけではなく、小規模の物流に重点を置くようになりました。
これまでは荷物を多く運ぶため倉庫や道路などのインフラ整備に力を入れていましたが、コンビニやネット通販などの拡大により配達先が細分化されるようになったことで、細かい少量の商品を複数の配達先に効率よく届けるためのシステムが注目されるようになったのです。商材を届ける物流という業務だけではなく、倉庫内での在庫管理から対象商品のピッキング、梱包から出荷など配送業を一括管理するロジスティクスという業務が一般的になりました。
そしてそのロジスティクス業務専門の業者が多く生まれ、元々ロジスティクス機能を持っていなかった運送会社や通販会社などに委託され、物流を管理・運営する「サードパーティー・ロジスティクス」専門の企業なども誕生し、2000年代は通販業、コンビニなどの発展により物流業が大きく変わった時代でもあるのです。
現在の物流
通販業が成長を続ける現代では、商品の保管や効率よく配送できる3PLが重要視されていきます。
多品種少量生産時代
高度成長期の日本は商品を作れば売れる大量消費時代とも言われており製造すること、一度に大量の商品を運搬することに重きをおいていました。
しかし現在は情報が溢れ、消費者たちは商材を厳選するようになったため、本当に価値のあるものだけが選ばれる多品種少量生産の時代になりました。交通インフラはすでに高度成長期やバブル期でかなり整備されてきたため、2000年代はより細分化された発送先への配達をするためシステムの開発、整備が重要な時代になったのです。
3PLの活用
2000年代以降ネットやカタログなどの通販業が大きく伸び、またコンビニやチェーン店などの台頭により宅配や各店舗への配達など小口配送の割合が高くなりました。
それに伴い商材を適切に保管し、効率よく消費者や得意先へ配送する物流専門である「サードパーティーロジスティクス」、通称「3PL」と呼ばれる企業が重宝されるようになりました。ネット通販が一般化したことにより、海外に拠点を持つ通販会社なども国内にある3PLに委託して入荷から商品管理、顧客への発送を簡単に行えるようになり、3PLの誕生は通販業の飛躍に大いに役立ったのです。
未来の物流
現在の物流業において最も問題視されていることが「人員不足」です。配達するトラックドライバーや倉庫内での作業スタッフなどの人員が通販業の発展に追いつかず、慢性的な人員不足に陥っているのです。
将来人員不足がさらに悪化しないために、未来に向けて物流業界では様々な業務のオートメーション化を研究しています。
倉庫業務のオートメーション化
物流業務は運搬用のトラックドライバーの他に商品を納品、または検品させるスタッフ、保管や管理するスタッフ、顧客や企業に出荷するスタッフなど倉庫内にも多くの人員を必要とします。通販業が急激に伸びたため常に人員が足りない状態である物流企業では業務のオートメーション化を研究しています。
かつては全て手作業で行っていた入出荷も、現在はシステム上で保管場所やピッキング場所を指示したり、ベルトコンベアでの商品梱包や出荷ラベル貼りなど、可能な限りオート化を進め人員不足の対策を行っています。
また、大手倉庫では商品のピッキング自体を全てオートメーション化することに成功しており、将来は倉庫業務のほとんどがオートメーション化されると言われています。
自動運転による配送
物流業を支えるトラックドライバーの人員不足や高齢化なども深刻な問題となっており、大手物流企業などはシステムや自動車業と協力し、自動運転による配送の研究を行っています。
さらにドローンで山間部などのトラックが行きにくい場所に配達するシステムなども大手通販企業がドローンの企業と共同研究を行っており、物流企業が公共交通機関と協力し合い、バスなどを使って共配システムを開発するなど、人員不足への取り組みが始まっています。
おわりに
物流業務は戦後の日本で誕生し、高度成長期によって発展した後、ネット通販などの台頭により小口配送にも対応しながら発展し続けてきましたが人員不足の解消が未来への課題となっています。今後さらに労働人口は減少し、物流企業の人員不足はより深刻になると予想されています。
現在研究している人員不足対策の実現が物流業務の発展には欠かせないのです。
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