物流の在庫管理におけるABC分析とは?パレートの法則を活用した在庫管理
2024.10.02物流・フルフィルメント
物流システムには、効率よく管理を行うために、物流の「ABC分析」を行うことが必要になります。最適な物流管理を行い、不要なコストや倉庫スペースの削減など、無駄を省く役割があります。
ここでは物流管理を効率化するための分析方法を紹介します。物流の在庫管理におけるABC分析について理解を深めたい方は参考にしてください。
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目次
効率のよい物流を目指すための「ABC分析」とは
物流における分析は、月ごと、年度ごとなど、細かく分析する必要がある業種の一つとされています。そのため、定期的に効率化を目指したり、課題になる点を改善したりするのは重要です。そこで役立つのが、「物流管理のためのABC分析」です。
例えば、下記のように「ABC分析」を実施するのは効果的です。
Aランク | 平均的に多量販売される商品 |
Bランク | 季節ものもしくは一時的なヒット商品 |
Cランク | 毎月少しだけ売れる商品 |
商品の在庫状況、出荷ベースによる売れ筋や保管状況を分析することで、物流内でも重要度や優先度をはっきりと明示することができます。その結果、在庫量の修正、倉庫スペースやピッキング作業の効率化などにより、無駄を省く役割があるのです。これが、中小の規模を問わず、物流企業におけるコストに直結します。
パレートの法則「80対20」を活かした分析で効率UP
ポーカーなどのカードゲームを5名で行うと、5人中1人、つまり「5分の1」の20%の人が賭けられた金額の80%を受け取ります。この原理と同じ法則が「パレートの法則」と呼ばれる80対20、つまり「80%の結果が20%の原因から生じる」というものです。
管理業務では、車両が動かなくても、人が関与しなくても、商品が動かなくても費用が発生しやすいという特徴があります。ですから、物流管理に当てはめれば、「過剰在庫」や「非効率な作業」、「物流管理のクレーム」もコストとなるため、常に分析することが重要です。
例えば、在庫や出荷が忙しいからといってマンパワーを導入するだけでは、作業員が増えることによる業務が増え、人件費が余計にかかります。そこで、「80対20」を適用し、20%と思える比較的小さなパワーでも、80%に相当する成果を達成するために、業務の管理を分析するのです。80人分の仕事を20人でこなす、または20人でできる作業に再編成するという考え方です。
在庫数や保管スペース、作業内容を含め、「物流管理」という仕事を分析して、「行動を軽減する」ことを目指して、効率よくすることが分析の目的になります。
物流の在庫管理におけるABC分析の方法
物流管理は、各企業が扱っている在庫商品や現行のシステムによって、管理方法が異なります。この分析により、売上高を含む販売金額とともに、商品管理や在庫や、保管をどのように進めていくか、どの項目を改善すべきかが明確になります。
在庫管理の重要性について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
物流の在庫管理におけるABC分析の手順
物流の在庫管理におけるABC分析はエクセルを用いて行えます。ここでは、エクセルを用いたABC分析の手順を紹介します。
① 分析に必要なデータを収集する
まず、ABC分析に必要なデータを集めてエクセルでまとめます。ここでは、架空のアパレルショップAのデータを使ってABC分析を行います。
今回の分析で使用するデータは次の通りです(分析の目的で収集するデータは変わります)。
【使用するデータ】
- 商品名
- 単価
- 出荷数
- 売上
まずはエクセルの左から、商品名・単価・出荷数・売上の項目を作り、値を入力します。
次に入力したデータを降順に並べ替えます。売上に対する貢献度を可視化するためです。
売上の列内のセルを1箇所選択したうえで、「並べ替えとフィルター」から「降順」を選択します。
すると、このように簡単に商品を売上が高い順に並べ替えることができます。
また、在庫管理システムのデータ抽出機能がある場合は、活用することでデータの収集を簡単に行えます。
➁ 累計売上・累計売上構成比を算出する
次に、各アイテムの売上を上から順に足して、累計売上を算出します。累計売上を計算式を利用して出す方法は以下の通りです。
①F列に「累計売上」の項目を作成する
②一番上の売上と累計売上は同じ数値になるため、F3に『=E3』と入力する
③F4に『=F3+E4』と入力して、ドレスシャツとTシャツの売上の合計値を出す
④F5以降の計算式はF4と同じになるため、オートフィル機能(※)で計算する
※オートフィル機能:規則性のある数列または文字列を自動入力する機能
すると、以下のように自動で数値が入力されます。
次に、累計売上構成比を算出します。累計売上構成比の計算式は「累計売上÷売上合計」です。累計売上構成比を計算式を利用して出す方法は以下の通りです。
①G列に「累計売上構成比」の項目を作成する
②G3に『=F3/(累計売上の一番下の数字)』と入力する
※自動パーセンテージ変換を使用するため*100の入力は不要
※累計売上列の一番下の数字は今回の場合1709600
※計算後の数値が0になる場合は、数値内の「小数点以下の表示桁数を増やす」をクリックして、少数第三位まで表示させる
③数値内のプルダウンから「パーセンテージ」を選択する
④数値内の「小数点以下の表示桁数を増やす」をクリックし、少数第一位まで表示させる
⑤G4以降の計算式はG3と同じになるため、オートフィル機能で計算する
ここまで対応すると、各商品の累計売上構成比が分かります。
③ 累計売上構成比を元にグループ分けを行う
以上の結果をもとに、「A」「B」「C」のグループ分けを行います。ここでは、以下の基準を設定します。
グループ | 基準 |
---|---|
Aグループ | 累計売上構成比が70%未満 |
Bグループ | 累計売上構成比が70~90% |
Cグループ | 累計売上構成比が90%以上 |
ちなみに、グループ分けの基準に明確な決まりはありません。累計売上構成比を変えることや、さらに細かくグループを分けることも可能です。以上の基準をもとにグループ分けを行うと次のようになります。
Tシャツに次いで出荷数が多いハンドタオルはグループCに分類されました。累計売上構成比を基準にすると、ハンドタオルの重要度は低いと判断されます。
ABC分析は「区分」がポイントとなる
Aランク、Bランク、Cランクの商品は、以下のように区分されます。
Aランク | 主力商品、または、平均的に多量に販売されている商品 |
Bランク | 一時的なヒット商品や定期的に販売される季節商品 |
Cランク | 毎月少しだけ売れる商品 |
上記のように分類を行った後、各ランクをグラフ化して、参考資料を作成しましょう。商品名を横軸(行)に入力し、縦軸(欄)に販売数(物量)を入力します。
各ランクの商品に合わせた在庫の保管を考えます。
「Aランク」の商品は、販売数の多い商品、または主力商品なので、在庫管理は最重要事項です。欠品を防ぎ、商品価値の低下を避け、品質保持を徹底します。納期は、支払いに多大な影響があるため、重点管理が必要です。
「Bランク」の場合、平均的に販売されていても一時的なもの、または定期的に販売される季節商品など、定量不定期な商品を管理します。頻繁に出入りしなくてもよい場所で、保管する方法が採用できます。
AランクやBランク以外の「Cランク」では、在庫シェアを少なくし、手間のかからない発注方法を採用します。
ABC分析に基づく改善のステップ
管理業務では、問題点が明らかになった際に、PDCAサイクルを回すことで、物流の流れを明確にすることができます。
問題の原因究明
問題が明確になると、なぜその問題が発生するのか、原因究明が重要なポイントです。物流の場合には、問題の原因が2つ以上、または複数発生することが多いです。そこで、正しい手順で改善を進めることが大切です。
とくに多い事例としては、倉庫内で保管されている実在庫数と、PCに入力されている在庫数が異なる場合です。この場合の原因は、入庫時点での入荷数の違い、営業マンや担当者の持ち出し分が未入力、誤出荷、棚卸計上ミス等などがあります。
改善案の作成
問題の原因に対する改善方法や再発を防ぐ対処方法を検討します。これは、問題点と改善案をセットで考えるように意識することで、スムーズに進行できます。
例えば、入庫時点での二重チェック(搬入車両から降ろした際の数量確認や、倉庫に保管する際の数量チェックなど)、営業マンや担当者が持ち出す際の伝票管理などを挙げるができるでしょう。
一般に多いのは、改善案を作っても実践しなかった、もしくは改善案が徹底されないということです。これでは、問題がなくならないので、物流管理に変化が見られず、在庫差異が減少しません。
在庫がしっかりと管理されていれば、「80対20の法則」における80%の割合が増します。そのためにも、可能な限り問題の原因を把握しておくことが必要です。
改善案に基づく改善策
3番目の点として、原因を追究した後、改善策を立てます。問題の原因が複数であれば、改善策も複数であることが一般的です。誤出荷を防止する場合には、「検品の強化」や「システムの導入」など改善方法もさまざまです。
改善策が見つかった場合、全てを実行するか、優先順位をつけて順番に実行するかを決める必要があります。また、費用が発生するか、どのくらいの費用がその改善に必要となるかもポイントです。こうした点を踏まえ、実行可能性、改善の効果の大きさ、改善までの期間(スピード)などを検討します。
具体的な実行計画
「だれが」「いつ」「何を」「どのように」行うかを決定し、「どのくらいの期間(時間)をかけて」改善策を実施するか、具体的な実行計画を立てます。ここでどの程度まで細かく決定するかを明確にし、実行担当者(個人名がおすすめ)や所用時間を決めておかないと、計画が進まなくなる可能性が高くなります。
物流管理で分析結果を実行するメリット
実行計画を立てたなら、実施した結果の効果を検討します。効果が薄いと感じる場合や効果が見られない場合は、改善策を基に再検証することが必要です。
たとえば、改善策を立てた後にも、誤出荷がなくならない際は、日ごとの出荷状況を徹底的に調べ、出荷伝票の再確認などから始めます。物流は物の流れがあり、数値化できるため、原因を追究し始めると、改善方法が見えてくることもあります。
物流管理で分析結果を実行するさらなるメリットは「製品・サービス・受注」にかかわるコストが明確になります。また、このコストが明確になれば、適正な価格や単価設定が可能です。
さらに、コスト面で不要な付加価値を生まないものを省ける手段を講じられます。そして、ビジネスプロセスの低生産性がはっきりと見えてくるので、物流管理業務全体の効率化につながるのです。
ABC分析を活用すれば在庫管理を最適化できる
問題を把握できれば、改善案が立てられるので、改善のPDCAサイクルを回しやすくなります。実施していくうちに、日々の作業効率が向上したり、他の改善点が見えてきたりすることもあるでしょう。
一歩踏み込んだ分析方法を用いて、問題の原因究明、改善案の作成、改善策や具体的な実行計画を進めていけば、結果や進展がまったくないという事態は避けられるでしょう。
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