倉庫業法とは?倉庫を利用する時に抑えておきたいポイント

2023.12.04物流・フルフィルメント
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近年物流業界ではネット通販関連の倉庫が急増しています。

自社で通販業からストックや入出荷業務を行う大手の企業も存在しますが、中小のネット通販の業者は倉庫業を委託する事が多くなっています。

委託先は他社の商品を扱うため取引先との間でしっかりとルールに則った管理や情報共有が必要になってきます。

きちんと商品を管理してくれているか、または安全な倉庫環境であるかどうかは委託するのであれば必ず把握しておきたいところです。

そのため安全で高品質な倉庫運営をしているかどうかの判断基準として、倉庫業法という厳しい法律を遵守し、国から承認された倉庫を委託する企業が増えてきています。

そこで、今回はその倉庫業法について解説します。

倉庫業法とは

倉庫業者が他社の商品を扱うということは報酬を得て貴重な商品をお預かりするということなので、きちんとした管理者がいるのか、倉庫自体の施設内での管理方法や安全面は基準に従っているかなどが重要となってきます。

ただ単純に倉庫になる建物を所有しているので他社の商品を有償で預かりますという企業はいくら委託金が安くても大きなリスクを伴うのです。

例えればただ人を運ぶ乗用車で報酬を得てお客様を運搬すれば法律違反になり事故のときには保証されず自己責任、バスやタクシーなど法的に登録された業者の車であれば報酬を得て人を運搬することができ、万が一のときにも企業から保証が下りるという事に似ています。

自社の商品管理を任せるのであれば登録されている倉庫とされていない倉庫、どちらを選ぶほうが安全であるかは一目瞭然であると言えます。

なぜこの法律があるのか

倉庫

通販業者などが倉庫業者に委託したい場合、倉庫業法がないと危険な管理をしていたり、商品管理がずさんだったりする信頼性の低い倉庫であるという見分けがつきにくくなります。

現に今も国土交通省に営業倉庫としての登録をしていないのに相手先と契約し、倉庫業を営んでいる業者も多く存在します。

しかしそのような企業で火災、管理不足などにより商品劣化などの事故があった場合、認可された倉庫ではないため相手先に責任追及をする事が難しくなったり保険が下りないなどのリスクが伴います。

倉庫業法を遵守していない倉庫は経費を削減させるために商品を詰め込みすぎたり、危険な商品を何の対策も無いスペースに保管している事が多いのです。

実際日本国内の倉庫火災は年平均500件前後発生していますが、倉庫業法に則り国土交通省の認可が下りているいわゆる営業倉庫は年間2件程度と安全性はかなり高くなります。

業者が安心して委託できる営業倉庫業者がすぐわかるようにこの倉庫業法は存在するのです。

そもそも倉庫業とは

そもそも倉庫業とは大切な商品を保管、または入出荷する作業のことで、取扱商品に見合った規模の倉庫が必要になり、それを自社の倉庫で賄う企業、または倉庫業を専門としている業者に委託する企業など様々です。

それらの倉庫のことを自家用倉庫、営業倉庫と倉庫業では二種類に分類しています。

自家用倉庫とは

自家用倉庫とは自社の製品をそのまま会社が保有する建物で倉庫業を行うための施設です。

メリットとしては自社の倉庫であるため取扱商品に合わせた環境づくりができたり、営業部門や店舗部門に近い場合が多いので、商品移動時間も少なくてすみます。

デメリットは専用の倉庫を丸々1棟用意する必要があるため、建設費や賃料、または内部の設備に多額の予算を割かなくてはならなくなります。

中小企業や通販店舗などは自家用倉庫を持つほどの予算を組めないことが多く、商品単位スペース単位で倉庫業を外部委託することができる営業倉庫を選択する企業が多くなっています。

営業倉庫とは

営業倉庫とは倉庫業法により国土交通省に定められた倉庫でで、外部から商品を委託され入出荷や保管を行う専門の施設になります。

メリットとしては商品の数量単位、スペース単位で倉庫業を借りることが出来るため、コストに無駄がありません。

また法律に従い管理方法が安全かつ高品質なため事故が起こりにくく、万が一の事故に備えて保険などの保証も受けることができます。

棚卸しなどの作業も委託することができ、倉庫業を安全に丸投げできるのが強みです。

デメリットとしては必ずしも営業倉庫が近くにあるとは限らないため商品を運ぶまでに時間やお運賃がかかったり、営業部門の社員がお問い合わせ対応などで商品を直接見に行く事が難しいなどの欠点もあります。

ただ自社とは離れてしまってもそれ以外でのメリットが多く、安全性が高い正式な営業倉庫を選ぶことが企業の発展には重要なのです。

外注する時に抑えておくべきポイント

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企業が倉庫業を営業倉庫に委託する場合、料金が安いからと言って国から正式な認可を得ていない倉庫に委託してしまうとずさんな管理をされたり事故の際に保険が下りなかったりする場合があります。

そのため今後倉庫業を委託したいと考えているのであれば抑えておきたいポイントが「国土交通省から正式に認可された営業倉庫か」を確認するという事です。

正式に国土交通省に登録されている営業倉庫であれば倉庫業法に準じた安全性、信頼性の高い倉庫業を行い、継続されているという証になるので大切な商品を委託する上で重要です。

営業倉庫に委託する場合は必ず倉庫寄託約款があり、業務の内容や委託費はもちろん、損害賠償における責任の所在契約をも交わす事が鉄則のため、商品に万が一のことがあった場合でも安心です。

また国に登録されている営業倉庫は一般的な建物よりも細かい審査を経て建てられているため事故や火災が起こる確率が極めて低くなっています。

倉庫業で最も恐ろしい事故の一つが火災により取扱商品すべてを失ってしまうということですが、営業倉庫は火災保険の加入が義務付けられているため、保証を受けることが出来るのです。

安全性や信頼性を考えると国の認可が下りている営業倉庫のほうが認可下りていない倉庫よりも確実に上なのです。

委託する際に最初の委託料金だけで決めてしまうと商品の品質低下や事故の際の保証をうけられないなどのリスクを背負うことになりますので、きちんと国土交通省に登録されている営業倉庫かどうか確認するようにしましょう。

おわりに

倉庫業法を遵守し国の認可を得ている営業倉庫も、認可を得ていない倉庫業者も物流業界の成長に伴い年々増加しています。

例えば通販業界などでは中小の店舗がネット通販を始め、その商品が当たり事業を拡大するため急に専用の倉庫が必要となるケース。

または全国のデパートや大型モールなどに出店しているアパレルブランドで、大量にある店舗への商品の振り分けや、メーカー内でまた細分化されたブランドが立ち上がった時の倉庫の拡大が必要となるケース。

これらのように倉庫業を臨機応変に拡大、または時には縮小させるなどして変化をしていくことが業界で生き残る為に必要になってきます。

このような時いわゆる倉庫業のプロである営業倉庫に委託することで、リスクを最小限にして安全な商品管理を行うことができるのです。

タグ : 用語 ECモール EC物流初心者向け EC物流用語
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。