IE(インダストリアルエンジニアリング)とは?工学を活用した改善について

2021.11.29物流・フルフィルメント
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突然ではありますがIEという言葉をご存知でしょうか。

IEとはインダストリアル・エンジニアリングの略称で「アイ・イー」と呼ばれており、直訳すれば産業工学と訳せますが日本では「生産工学」と呼ばれて、製造業や物流業など様々な企業での業務改善に役立つ手法なのです。工場や物流倉庫などの工程や作業を分析し、一から見直し改善することができるIEは国内最強の生産工場と言われるトヨタ式の工場にも用いられています。

今回はこのIEとはどういうものなのか、またIEのメリットについて詳しくご紹介します。

IE(インダストリアルエンジニアリング)とは

IEとは米国で開発された業務改善手法の一つになり、生産工場や物流倉庫などの各工程でスピードや品質を測定し、その結果から改善点を導く方法の事です。

自社のコストを削減したい、生産性を向上させたいと毎日卓上で議論しても具体的な案を得ることは難しいのです。

作業工程を全て洗い出し、各工程の人件費や生産性を数値化させて比較することで成績の良い部署や以前に比べ悪化している部署を把握し、それら数値が変動した原因を追求することで改善点を見つけ出す方法をIE活動、またはIE手法などと呼んでいます。

IEとはすなわち自社の業務を数値化させて実態を把握し、生産性を改善や標準化をさせる事なのです。

IEを取り入れた業務改善はトヨタ方式の工場や大手通販倉庫など様々な現場で取り入れられています。
物流倉庫であれば商品の入荷からストック、ピッキングから梱包、そして出荷と言った作業全体の流れの中で人材は足りているか、スタッフのスピードや正確性は良いかを調査、また製造業であれば各部署の設備の稼働効率、また不良品が出てしまう割合なども数値化して分析します。

インダストリアルエンジニアリングを活用するメリット

IEは主に生産性や品質の向上、またはコストや人件費の削減に役立つため、自社の利益や品質に不満を持っている物流業や製造業、従業員の質を向上させたいと考えている企業に活用されており、次のようなメリットがあります。

自社の生産性、業務全体の実態を把握することができる

各工程の作業スピードや不良品発生率、または人件費やスタッフごとのミス率などを数値化し他の部署や前月比などと比較することができます。

また設備のランニングコストも数値化して生産性と照らし合わせることでコストが高い工程などを割り出すこともできます。
これら業務全体を数値化することで現場はもちろん現場以外の社員も現状を把握することができるのです。

無駄な業務やコストを発見できる

各業務の生産性が数値化できればコストと照らし合わせることで効率の悪い部署を明確にすることができます。
人件費や設備費などが割高な部署、または工程のみを集中して洗い直すことができるのです。

改善点を具体的にすることができる

業務を数値化して効率の悪い部署や工程を見つけることができ、さらに具体的にどこが悪かったのかを検討することができます。

他工程に比べ設備費や人件費、時間ごとの生産性などどこが悪いのかを明確にすることで人員の増減、またはスタッフの異動、設備の見直しやレイアウト変更など具体的な改善策を挙げることができます。

インダストリアルエンジニアリングの種類

業務を数値化し把握するIEの分析方法には様々なものがあります。

各作業の分類

各部署のスタッフが業務時間中にどのような作業を行っているかを洗い出します。

例えば製造業であればラインで加工する「主作業」と呼ばれる業務。
さらにその主作業を行う前後に機材を操作したり物品を運んだりする付随業務や毎日業務がスタートする際に行われる準備作業など、一日の従業員の作業内容の割合を算出します。
もちろん業務時間内であれば水分補給やトイレなどの小休憩も平均してどのくらいの時間を要しているのかを割り出します。

その各作業の平均時間を割り出し生産性と照らし合わせれば各部署で怠けているスタッフが多いか少ないかがわかり、少ない人員でも高い生産性を出す優秀な部署がわかるため手本にして改善点を探すことができます。

各工程の解析

製造業や物流業の各工程の種類は大きく分けると「運搬」「検査」「加工」「待機」と4つに分けられます。

運搬は商品や設備を移動させ、検査は入出荷時のチェックや品質管理、加工は商品を製造するまでの業務全般を指すのですが、そこにさらに「何もしない待機時間」がどの工程でもどうしても存在してしまうのです。
生産性が全く無いこの待機の時間を各工程で洗い出すことで改善が必要な部署が明確になります。

また運搬や検査、加工といった業務も前述した「各作業の分類」で分けられた業務ごとの平均時間を割り出すことで工数を減らす、機械の配列を変更するなどの改善点を見つけ出すことができます。

時間の分析

機械は1時間に何件の処理ができるかの数値が明確になっているので実際にその性能通りに動いているかチェックすることで生産性がわかりますが、マンパワーが必要な工程ではどうしてもスタッフごとに作業スピードの偏りが出てしまいます。

そのため製造や物流業の各工程でスピードを割り出し、スタッフの1件あたりの作業時間や移動に使う時間などを計測し、平均値を出すことで正確な生産性を割り出すことができ比較が容易になります。

時間の計測の仕方にはいくつか方法があり、作業スタッフの各業務の平均時間を割り出したいのであればシンプルにストップウォッチを使用する、またはビデオ撮影をして時間を計測するなどの分析方法が一般的です。

前述した「各作業の分類」で仕分けられた業務ごとにスタッフがどのくらいの時間をかけているかを計測して平均を出し、問題のあるスタッフや部署などを特定します。

作業ごとにスタッフの平均作業時間を割り出すことができれば改善点を見つけられるだけではなく、今後入社してきた従業員たちへに周知させることができ研修や目標管理にも役立ちます。

通販物流大手のamazonの倉庫ではスタッフのIDをオンライン管理して業務中にどこのドアを何時に通り、作業場で何件の処理をしたのかが管理者間で共有できるようになっており、自動で従業員の生産性を数値化できるようになっているのです。

おわりに

自社の生産性や品質を向上させたい、もっとコストを削減したい、でもどうやって取り組めばいいのかわからないという場合、IEは業務改善の為に有効な手段になります。

ただ闇雲に会議をするよりはIE手法で業務全般を数値化して悪い部分を洗い出し、検証して悪かった部分の数値が改善されれば、誰が見ても業務改善ができたと納得できるのではないでしょうか。

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。