物流管理指標(物流KPI)の種類と設定する方法について
2021.11.29物流・フルフィルメント物流業界では、労働力不足に対応する為の業務効率化や、企業競争を勝ち抜くためのサービス品質向上が課題になっています。その改善に役に立つのが物流管理指標(KPI)の導入です。
目次
物流管理指標(物流KPI)とは?
まずKPIとは「KeyPerformanceIndicator」の頭文字を取った略語で、日本語では「重要業績評価指標」といいます。
企業においては様々な指標を用いますが、その中でも重要な(Key)指標のことを指します。
物流業界の一般的な物流フローで主に使われるKPI(物流KPI)は「コスト・生産性」「品質・サービスレベル」「物流条件・配送条件」の3つの視点に分けられます。
国土交通省の資料で説明されている各視点におけるKPI指標は以下の通りです。
コスト・生産性
保管効率
倉庫などの保管スペースの保管効率を測る指標
人時生産性
ピッキング、仕分け、梱包作業等の生産性を測る指標
数量当たり物流コスト
物流センターで発生している総物流コストを数量当たりで管理するための指標
日時収支(物流センター)
財務会計上の収支単位は四半期、年次単位などで算出されるが、収支の悪化を未然に察知し業務改善につなげるために日時単位での収支を算出するもの
実車率
車両の無駄な空車走行を減らすために、稼働状況を計測する指標
実働率
車両の非稼働を減らすために、稼働状況を計測する指標
積載率
車両の積載効率を改善するための指標。ルート別、顧客別などに把握し、車格の見直し、配車・ルートの見直し、物流条件の見直しなどに活用される
日時収支(トラック)
車両1台毎に、日次の収支を算出し、=1日当たりの収益-1日当た配車・ルートの改善等に活用する
品質・サービスレベル
棚卸差異
在庫の紛失、盗難、誤出荷等による帳簿在庫と実在庫の差異を計測し、在庫管理の改善に活用する
誤出荷率
誤出荷(品違い、数量違い、出荷先違い等)の発生率
遅延・時間指定率
遅延(納期遅延)、時間指定違反の発生率
汚破損率
汚破損(商品の汚れ、破損、温度管理ミス等)の発生率
クレーム発生率
顧客クレームの発生率。誤出荷等は上記の通りであるが、その他、書類のミス、作業者の挨拶・服装等サービスの官能評価にも用いられる
物流条件・配送条件
出荷ロット
輸送効率、車内作業効率等を改善する観点で、顧客別・納品先別の出荷ロットサイズを計測するもの
出荷指示遅延件数
出荷指示の遅延は物流効率を阻害することから、顧客別等で計測し、遅延を改善するために活用される
配送頻度
多頻度納品を改善するため、配送先当たりの配送頻度を計測するもの
納品先待機時間
納品先で指定時間に到着したにも関わらず待機が発生する場合、その改善のために待機の発生状況を計測するもの
納品付帯作業時間
納品先で契約外の荷役、開梱、検品、網入れといった付帯作業が発生する場合、その作業時間を計測するもの。契約外の作業が発生している場合にそれを是正するため等に活用される
納品付帯作業実施率
前項と同様、契約外の付帯作業を実施している場合、物流効率を阻害することから、それら付帯作業の実施状況を計測するもの
様々な指標がありますが、特に「コスト・生産性等」の指標を重視している企業が多いようです。
物流KPIの必要性とメリット
現在物流業界は通販の発展による物量の増加・荷物の小ロット化や、ドライバー不足、燃油価格の高騰など厳しい状況に置かれています。
この様な状況においては、状況改善のために過剰な人件費の切りつめなど誤った経営のかじ取りをしてしまうことも少なくありません。
そんな状況だからこそ、自社内の物流業務フローにKPIを設定して定量的に測定することで、健全な問題解決や業務効率化を行う必要があるのです。
物流KPIを設定することの具体的なメリットとして以下の3点があげられます。
問題の見える化
業務フローが複雑化した物流業務の中で、業務プロセスの優れている点や悪い点を見つけるのは非常に困難です。
そこでKPIを設定して主要な業務プロセスを定量的に測定することで、業務プロセスの良い点と悪い点が「見える化」することが出来るのです。
特に目に見える問題点には改善の動機づけが生まれるため、問題の改善に非常に役に立つのです。
コミュニケーションの促進
物流業界はモノの移動を伴う非常に広い業務です。単純な業務であっても、離れた拠点や社員やパートなど立場の違う担当者が関与することが多いです。
また、委託元、荷主、トラック会社、倉庫会社など様々な会社とのやり取りが多く発生します。
その際に客観的なデータであるKPIはコミュニケーションツールとして役立ちます。
多様な関係者と現状を共有することで、合理的かつ効率的に改善を進めることが出来ます。
合理的で公平な評価につながる
実際に業務改善を行うのは、各現場の担当者です。実際に手を動かす担当者の努力が報われなければ、改善は進みません。
そんな時にKPIは「正当に努力した人(組織)が評価される仕組み」をつくることが出来ます。
物理的な距離や、立場の違う関係者が入り混じる物流業界において、主観的な評価は偏りが生じてしまいます。
定量的に様々な視点から評価をすることが出来るKPIは公平な評価につながり、結果的に効率的な業務改善につながるのです。
KPIの利用例
KPIの概要やメリットは分かってきましたでしょうか。ここでは物流KPIを利用した代表的な事例をご紹介します。
大手トラック企業の事例
日用品メーカーの輸送業務を受託している大手トラック企業は、荷主と連携した物流品質改善にKPIを活用しました。
着荷主である卸・小売業者は、納品遅延により業務が契約通りに進まない、いつ到着するか分からないことによる機会損失に対し不満を持っていました。
しかし、納品遅延の理由は道路工事や天候による渋滞、別の納品先での待機発生など様々で合理的な対策が困難な状況でした。
そこで、発荷主である日用品メーカーと共同で、リアルタイムに遅延情報を把握し、KPIとして遅延状況を確認できるシステムを構築しました。
上記システムにより、データに基づいた合理的な原因分析が出来るようになりました。その結果、遅延の多発するルートの見直しなどの対策により、遅延発生件数を大幅に抑えることが出来ました。
さらに、遅延の発生情報をリアルタイムに把握することにより、遅延発生の際に迅速に対策を打てるようになりました。
事故渋滞などの遅延が発生すると、ドライバー端末から日用品メーカーに即座に情報が入り、着荷主である卸・小売業者に納期変更などの依頼が出来るようになりました。その結果、クレームの大幅削減につながりました。
KPIによる客観的かつ合理的なデータにより、荷主とトラック企業が効率的に改善に取り組むことが出来たのです。
おわりに
物流業界は、メーカー等の発荷主、トラック会社、小売りなどの着荷主、倉庫会社など多種多様な企業との関係性が重要な業界です。
物流業務の上流から下流まで、効率的かつ合理的な改善を行うためには、客観的データであるKPIの設定は必須といえます。
さらにKPIの設定は、業務効率化だけでなく、社員のモチベーションアップにもつながります。
KPIの指標には様々な種類がありますが、少しずつやりやすいものから取り入れてみてはいかがでしょうか。
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