【2022年最新】EC物流の市場規模は拡大か?動向と今後の成長予測

2022.08.02物流・フルフィルメント
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国内のBtoC(ビジネスから消費者)向けのECの市場規模は、直近の10年で約2倍の20兆円規模 [※] へと拡大しています。
特に物販系分野のEC市場は、外出規制などの時勢もあり、伸長率が顕著です。

物販系分野を扱うEC事業に携わる方であれば、商品の保管・梱包・配送などを行う物流業務への対応が急務となり、
今後の市場の動向が気になるのではないでしょうか。

本記事では、EC業界の急成長を支えるEC物流の市場規模について、2022年現在の動向と今後の成長予測を解説します。

※出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました – 経済産業省

EC物流の市場規模は拡大傾向にある

2022年現在のEC物流の市場規模について、
「物流業界の売上」「物流施設への不動産投資」「3PL市場」の3つの視点で調査したところ、
拡大傾向にあることが分かりました。
詳細は、下記のとおりです。

物流業界の売上と宅配便取扱個数の増加

国内の物流業界全体の営業収入は、約24兆円にのぼります。
海上輸送や航空運送などと比較して、トラック運送事業の営業収入が圧倒的に多いことから、
1度の運送で運ばれる貨物の重量は減少傾向にあり、小口配送が増えていると言えるでしょう。

また、2020年の宅配便取扱個数は約48億個で、前年度と比較して5億個以上(約11.9%)の増加となっており、EC市場規模の拡大と近似した推移となっています。

※画像引用元:物流を取り巻く動向について(令和2年7月) – 国土交通省(11ページ)

物流施設特化型REIT(リート)への期待感

不動産投資においては、物流施設特化型のREIT(リート)に注目が集まっています。

2016年に三井不動産ロジスティクスパーク投資法人が上場したことを筆頭に各社が上場し、
昨今では2021年に東海道リート投資法人が上場を果たしました。

好調が続くEC業界に付随し、EC物流への期待感が反映された結果と考えられます。

出典:REIT(種別・物流施設・インフラ) – 日経テレコン

3PL市場規模の拡大

昨今、荷主企業が物流業務を3PL業者へ委託し、業務削減によってコアビジネスへ注力する動きも定着しつつあります。3PL(Third party logistics)とは、効率的な物流の企画立案や物流代行を一貫して行う業者です。

国内の3PL市場規模の推移は、2005年から2015年の10年間で約2.5倍に拡大しており、物流業務の専任性が高まっていることを示しています。


※画像引用元:物流不動産の隆盛の背景や理由(サマリー) – 国土交通省(4ページ)

EC物流の市場規模が拡大している2つの理由

EC物流の市場規模が拡大している理由として、下記の2つが考えられます。

  1.  物販系のEC市場の成長率が前年比21%増加
  2.  EC各社が配送サービスなどの充実に取り組んでいるため

1. 物販系のEC市場の成長率が前年比21%増加

経済産業省のデータによると、物販系・サービス・デジタル分野全体の市場規模は、2019年が19.3兆円、2020年が19.2兆円と横ばいです。(図表1)

旅行サービスなどのサービス分野のEC市場規模が激減した一方で、物販系分野は伸長率21.71%と急成長を遂げています。(図表2)

特に、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」の市場規模が2兆3,489億円と、
2019年から2020年にかけて約30%の伸長率です。
「食品、飲料、酒類」「書籍、映像・音楽ソフト」は、共に前年比20%以上の増加と、市場規模全体の拡大に寄与しています。

物販系分野が伸びた理由は、これまで実店舗で購入されていた生活家電、家具、インテリア、PC・周辺機器、書籍、映像・音楽ソフトなどの製品が、オンラインのECサイトでも購入しやすくなったからではないでしょうか。

これは、国の政策としてICT(インターネット通信を介した物やサービスのやり取り)を推進していることや、
スマートフォンの普及、また外出自粛要請などで外出できない期間が増えたことも要因となり、
消費行動のEC化が進んだと考えられます。

このような物販系EC市場の拡大に伴い、
商品の保管・梱包・配送などを行うEC物流への需要が高まっているのが現状です。

図表1)BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)

図表2)BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率

※画像引用元:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました – 経済産業省
※出典:第1章 ICTによるイノベーションと経済成長 – 総務省、令和2年度 産業経済研究委託事業 – 経済産業省

2. EC各社による配送サービスなどの充実への取り組み

EC各社が配送サービスなどの充実に取り組んでいることも、EC物流の市場規模が拡大している一つの理由でしょう。Amazon、楽天、ヤフージャパンなど、各社ともに配送サービスの拡充を推進しています。

例えばAmazonでは、年会費を払うとお急ぎ便や通常配送料が無料になるサービスや、
「当日お急ぎ便」所定の時間内の注文で当日配送が可能になるサービスの提供をスタートしました。

楽天「あす楽配送遅延の保証」翌日に届かない場合に、
代金の5%をポイントでキャッシュバックなどのサービスを行っています。

このようなサービス拡充に伴って煩雑化した業務の軽減のために、
外部のEC物流サービスの利用を検討するEC事業者が今後ますます増えるでしょう。
EC物流代行業者選びの際には、下記の記事を判断材料にしていただければと思います。

物流アウトソーシングのメリットと注意点を様々な視点からご紹介
EC物流代行企業12社を項目別に比較!各社の強みや検討時の注意点を徹底検証

※出典:Eコマース市場の拡大と物流業への影響 – 日本政策投資銀行(DBJ)(図表3-4)

日本国内と世界におけるEC物流の市場規模の動向

物販系EC市場の拡大に伴ったEC物流の動向は、国内と海外で違いはあるのでしょうか。
ここでは、日本国内と世界におけるEC物流の市場規模の動向について、物流施設の稼働状況や新規開発のデータを元に見ていきましょう。

日本国内のEC物流の市場規模の動向

日本国内の物流施設の空室率は減少傾向にあり、大規模マルチテナント型物流施設の空室率は1%未満と、常に満室状態です。
そのため、大規模物流施設を新たに新設する開発事業への取り組みが進んでおり、
大手不動産会社各社が物流施設開発事業へ参入しています。

これらのことから、日本国内のEC物流の市場規模は供給も拡大している一方で、それ以上に需要が旺盛な状況といえるでしょう。

※出典:
Eコマース市場の拡大と物流業への影響 – 日本政策投資銀行(DBJ)(図表5-1, 5-3)
拡大するEC市場と物流マーケットのこれから – CBRE
空室率・実質賃料指数・平均募集賃料-2022年第4四半期 – CBRE(首都圏 大型マルチテナント型物流施設(LMT) 空室率)

世界のEC物流の市場規模の動向

世界のEC物流市場を見てみると、大規模な物流拠点の新設やスタッフ増員などの動きが目立ちます。
例えば、Amazonは2020年以降、世界中に多数のデリバリーステーションや物流拠点のフルフィルメントセンターを新設するなど、
物流ネットワーク全体の面積を50%増加しました。

それに伴い40万人以上の社員を雇用し、インセンティブやボーナスとして25億ドル以上の投資を行っています。
これらのことから、世界でも大手ECが市場の拡大をけん引しているといえるでしょう。

※出典:Amazonニュース

EC物流の今後の市場規模の成長予測と2つの根拠


EC物流の今後の市場規模の成長予測は、今後も拡大傾向と考えられます。
その根拠となる事項は、下記の2つです。

  1. 世界規模でのEC化率の上昇
  2. 大型マルチテナント型物流施設(LMT)の新規需要増加

1つずつ解説していきます。

根拠① 世界規模でのEC化率の上昇

世界のBtoCのEC市場規模は、2020年で4.28兆米ドル、EC化率は18.0%と推計されています。
EC化率とは、すべての商取引のうちEC市場で取引される割合です。
経済産業省の調査報告によると、世界のEC化率は2024年までに21.8%へ上昇すると予測されています。
2020年時点の日本国内のEC化率は8.08%となっており、今後の成長の余地が大きい状態です。

※画像引用元:令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査) – 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課(図表 7-4:世界の BtoC-EC 市場規模(単位:兆 US ドル) )

このようなEC化率の上昇により配送量が増えた結果として、実際に輸送コストが増加した例を見てみましょう。
世界最大級のECサービスのAmazonは、2021年の第4四半期決算報告書の中で、輸送コストについて次のように報告しています。

※出典:AMAZON.COM ANNOUNCES FOURTH QUARTER RESULTS(17ページ『WW shipping costs』)を元に加工して作成(単位:百万米ドル)

このデータによると、2020年4期が$ 21,465(約2兆4,674億円) で、1年後の2021年4期は$ 23,656(約2兆7,192億円)と、約10%の増加です。

EC市場をけん引する大手企業の輸送コストが増加傾向にあることは、
EC物流の市場規模拡大へ大きな影響を与えると考えられます。

※出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました – 経済産業省

根拠② 大型マルチテナント型物流施設(LMT)の新規需要増加

物件検索サイト「CBRE」がまとめたデータによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設(LMT)の空室率は、
2020年から2021年にかけて、東京ベイエリアや圏央道エリアで、空室率が1%を下回っているとされています。

グラフ)首都圏LMT市場の需給バランス(年)

※画像引用元:拡大するEC市場と物流マーケットのこれから – CBRE(【図9】首都圏LMT市場の需給バランス(年))

また新規供給は、2022年には89万坪と過去最大になる見込みで、近年の供給よりも需要が上回っている現状を見る限り、
需要・供給共に上昇基調が続くと考えて間違いないでしょう。

おわりに

ここまで、EC物流の市場規模について、2022年現在の動向と今後の成長予測について解説してきました。
EC物流の市場規模は、生活家電・PC・周辺機器、書籍、映像・音楽ソフト、食品、飲料、酒類といった物販系のEC市場の急成長に伴い、国内外共に増加傾向にあります。

また、EC各社が配送サービスなどの充実に取り組んでいることや、Amazonなど大手ECが順境であること、大型マルチテナント型物流施設(LMT)の新規需要が増幅していることからも、EC物流の市場規模が拡大傾向にあると予測可能です。

オンラインショッピングなど消費のEC化を支えるEC物流の市場の成長に、今後も注目していきましょう。

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ウルロジ 編集部

ウルロジ 編集部

ディーエムソリューションズ㈱のEC事業特化型物流アウトソーシングサービス「ウルロジ」のエキスパートメンバーで結成。通販エキスパート検定1級・2級を保有。長年物流戦略をサポートしてきた実績と確かな知識をもとに、EC事業者様に役立つ情報を発信していきます。