SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の必要性と導入事例とは?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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SCMという言葉をご存知でしょうか。これは、物流だけにとらわれずに、生産や販売のシステムなどすべてを一体のものとしてとらえることです。生産を全体的なものとしてとらえ、全体的な効率化を計るという経営手法のひとつです。

現在、特に大企業でSCMが盛んにおこなわれています。なぜ、SCMが必要なのか…その背景などもご紹介します。

サプライ・チェーン・マネジメントってなに?

サプライ・チェーン・マネジメント”supply chain management”の略で、SCMと略されることが多い言葉です。

SCMは、いわゆるMBA用語ひとつなのですが、簡単にまとめるなら、供給業者から最終消費者までのモノの流れを全体的に見直して効率化するというものです。モノの流れを一部分ではなく、販売や生産なども含めた一体的なものをして考えて、根本から見直しを行い効率化するという経営手法のひとつです。

SCMを始めたのは、K.R.オリバーとM.D.ウェバーという人物です。出来上がった製品だけでなく、開発や生産段階まで視野に入れた効率化をすることで、経費削減だけでなく、商品管理や販売計画をひとまとめにして経営の効率化を図っています。

時には、会社という垣根を越えて行われることもあるSCMは、物流の効率化を図る上においてとても効率的で重要な手法といえます。

サプライ・チェーン・マネジメントの具体例

SCMは、大企業でも積極的に取り入れられている経営手法です。SCMの導入には、資金や人材が必要となるため、中小企業より大企業での採用が目立っています。

福岡県のある鮮魚店がSCMを導入するべく、費用等の試算を行ったところ年商の約半分の資金と現在より30%人材を増やす必要があるという結果となり断念したというお話もありました。
全体的な改革となるSCMには費用や人材が必要という側面があります。

現在、取り入れられているSCMとしてはアメリカのPCメーカーDELLコンピューターが代表的な成功例と言われています。DELLコンピューターでは、SCMを取り入れることで今までは見込生産だった生産システムを受注生産に切り替えました。つまり、SCMを取り入れるにあたって、経営そのもの仕組みだけでなく、コンピューターの生産の仕組みまでも変化させたことで、在庫を最小限にし生産から販売までのリードタイムを短縮し、結果として成功をおさめました。

参考文献 : マーティン・ピュリス著「リーダーシップ」朝日新聞社刊、ひと・モノ・資源をつなぐ生産スケジューラー

サプライ・チェーン・マネジメントの必要性

現在、ブームだといわれるSCMですが、その必要性はどこから生まれているのでしょうか。経営を変革させる必要があるその背景はどんなものでしょう。

グローバル化

昨今、SCMの必要性が高まっている背景には急速に進むグローバル化があります。このグローバル化の波は、確実に日本企業にも影響を与えています。輸入自由化や物流の発達で、単なるモノの販売経路だけでなく、生産や材料の調達、生産拠点までもがグローバル化しています。

このような、グローバル化が進めば進むほど、モノの流れを管理し効率化することが重要になってくるのです。インターネットが普及し、輸出入がさかんに行われている今、生産や販売、調達のすべてを国内あるいは近隣で行うというスタイルは、大企業ではメジャーではありません。つまり、グローバル化が進めば進むほど、SCMによって効率化を計ることが必要になってくるのです。

物流業界での人手不足

2017年に話題となった宅配ドライバーの人材不足…。これも、SCMの必要性を再認識するものでした。

現在の日本では、少子高齢化が進み、働き方は実に多様化しています。このような社会情勢の中で、トラックを運転して家々を回り荷物を届けるという”きわめてアナログ”で体力が必要な仕事は、高齢者はもちろん、若い方からも敬遠される傾向があります。

物流の縁の下の力持ちとして必要不可欠なドライバーの人材不足は、物流の効率化を図り、物流のあり方そのものを見直さざるを得ない状況を生み出しています。

特に、大量のモノを流通させる大企業が根本的に物流を販売や生産段階から見直すことは、急務といえます。

ビジネスモデルの変化

従来のモノの売り方は、基本的にモノを消費者に届けることとは切り離して考えられていました。

例えば従来は、消費者がAを購入する…という時には、Aを生産しているメーカーから購入します。ですが、それを消費者に届けるのはBという宅配会社であるという考え方でした。この方法であれば、一旦、モノをB社に引き渡した時点でメーカーの仕事は終わり…ということになります。消費者側からすれば、Aの商品とBの宅配サービスという二つの買い物をしたということになります。つまり、従来は販売と物流は別のものとして捉えられていたのです。ですが、現在のビジネスモデルは販売と物流が一体化しつつあるのです。

一例として、ドライバー不足のニュースで取り上げられた大手インターネット通信販売のAmazonを例にあげてみましょう。Amazonでは、モノを販売することに消費者にモノを届けることがサービスとして付帯されていると認識できるサービスを展開しています。

Amazonで提供されている”ボタンを押すだけで商品が手元に届けられるシステム”や”会費を支払うことで”おいそぎ便”という速達のようなシステムを利用できる”というシステムがこの代表例です。つまり、モノを販売するだけでなく、消費者に迅速に”届けること”も販売店であるAmazon商品の一つであるというサービスを展開しています。

このように、販売と物流を一体化させて人策のサービスを実現するためには、必然的にSCMによる効率化が必要となります。Amazonに代表される、従来とは異なるビジネスモデルの出現も、SCMの重要性をより押し上げる要因となっています。

消費者のニーズの変化

かつては、量販されているもののなかから自分の生活スタイルや必要な機能が揃ったものを購入するというのが、一般的な買い物のスタイルでした。

ですが、昨今では、自分だけのオリジナルをつくる…いわゆるカスタマイズが注目を集めています。

VAIO株式会社が行っている、PCのオーナーメイドなどがその流れに乗ったもののひとつといえます。これは、パソコンの性能を左右するCPUやメモリーの種類、ソフト、カラーなどをユーザーがカスタマイズできるというものです。

従来、デフォルトのものだけを生産していたはずのパソコンなどでも、ユーザーからはカスタマイズの需要があるということです。このような、生産スタイルの変化や、在庫をできる限りか変えずに、生産から販売までを手掛けるという販売形態も、SCMの必要性を押し上げている要因となっています。

今までの、何がどのくらい売れるのか…とい予測生産から、確実に売れるものを生産していくという計画段階の変化も含めて物流システムを効率化するのもSCMです。日々変化するユーザーのニーズに答えるためにもこのような改革は極めて重要です。

おわりに

SCMとは、生産や販売、調達などと物流を一体化したものと捉えて効率化を図るという経営手法です。

生産から販売、消費者に届けるというすべての工程を見直すことで、生産から販売までのプロセスを最適な状態で行うことを目的としています。

グローバル化やビジネスモデルの変化、消費者のニーズや物量業界の人材不足など、様々な変化の中でSCMの必要性は着実に増しています。

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。