【自社物流向け】自社EC物流センターのトラブル事例。対策は?

2022.03.28物流・フルフィルメント
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自社で物流業務を行っている際に最も避けたいのが配送ができない状況に陥ることです。しかし、現実に様々なトラブルにより配送不能が続いた事例が存在します。
今回は大手企業の自社EC物流センターで発生したトラブル事例を紹介します。
そこから、小規模で物流業務を行っている場合にも、気を付けるべきポイントを解説します。

自社EC物流センターのトラブル事例

自社EC物流センターでこれまで発生したトラブル事例にはどのようなものがあったのでしょうか。
倉庫やシステムというどこの企業でも当たり前のように使用しているインフラに、ある日突然異変が起きるリスクを感じられる内容です。

オイシックス・ラ・大地の移転に伴うトラブル

有機栽培の青果を中心に生鮮食品加工食品の宅配事業を展開するオイシックス・ラ・大地では、2022年1月の新物流センター移転時に出荷トラブルが発生し、大規模な遅延、欠品、キャンセルという事態に見舞われました。このトラブルの影響は経営ダメージも大きく、2022年2月に開催された決算発表会において、2022年3月期は売上高で約15億円減少、利益で約15億~20億円損失という見込みが発表されています。

移転は旧海老名ステーションから新海老名ステーションへ行われました。当初は2024年の移転を予定していましたが、コロナ禍で繰上げでの移転になったということです。2021年11月から段階的に移転作業が行われ、問題なく出荷できるとの判断の上で稼働開始となりました。

しかし、移転当日、旧拠点からの納品が予定の時間に行われない事態が発生。商品の入荷がされないという入り口でのつまずきによって、その後の工程が全て混乱します。入荷後の在庫管理やピッキングは当然進みません。

また、オイシックス・ラ・大地が導入していた物流システムは、システムに登録されている在庫データと実際に棚に入っている品目や数量が合わないとラインが稼働しないものでした。大規模なEC物流においては、全てが一つのシステムで連動し間違いのない効率的な稼働を行う仕組みが構築されているケースが多いですが、今回の件ではそれが仇となりました。融通を効かせることはできなかったということです。

入荷済みの製品から順次ラインを稼働させて出荷を進めるということにはならず、入荷が予定通り終わりデータ数量と同じ商品が棚に補充されるまで、物流ラインは稼働しませんでした。

この事態に社員総出で手作業で在庫整理及び棚移動、発送業務を行い、ようやく少しずつ出荷が始まります。しかし、1/18〜24までは遅延、欠品、キャンセルが続き、1/25にようやく通常の出荷状況に戻りました。

この期間に商品が届かないというクレーム以外にも消費者に届いていた荷物に様々なトラブルが発生していたことがわかりました。
・欠品連絡がされていた商品以外にも入っていない商品があった
・発送の連絡や欠品の連絡が深夜に送られてくる
・空箱が届いたりチラシだけ入っている箱が届いた
・欠品により何も届いていないにも関わらずシステム上で送料が課金される表示になっている

全てをシステムに依存している状況は、イレギュラーな事態に弱いということを再認識する結果となりました。

参考
Oisix|当社の物流センター移転トラブルに関してのお知らせとお詫び
Oisix|【FAQ】物流センター移行に関連するご質問と回答
ネットショップ担当者フォーラム|オイシックス・ラ・大地の物流センターで起きたトラブルの売上損失は15億円。発生理由とその後のリカバリー
ITmedia|オイシックス配送トラブル「高精度な物流システム」が原因 「イレギュラー対応難しく」
J-CAST|オイシックス「大量欠品」騒動、運営会社が謝罪 空箱が届いた人も…「判断の甘さがあった」

アスクルの倉庫火災

2017年2月にオフィス通販最大手のアスクルの埼玉県三芳町倉庫で大規模火災が発生しました。この火災による損害額は最大121億円にも及んだということです。

火災の原因は古紙回収業者が運用していたフォークリフトのマフラー付近が高温になり、それがダンボールに触れたというもの。アスクルは古紙回収を委託していた株式会社宮崎に対して、2020年8月6日に約101億円の損害賠償訴訟を起こしました。

該当のセンターでは東日本エリアの物流を担っていたましたが、出荷能力が失われたため
このトラブルの対応策として他の物流センター6拠点が配送を代替しました。
「アスクル」では埼玉、山梨、長野、群馬、栃木で1日の配達の遅れが生じたものの
12日後の時点で一部エリアを除き遅れは解消されました。
「ロハコ」では、東日本エリアで最大2日の遅れが生じ、
また、該当のセンターだけが扱っていた約3万種類の商品は出荷できない状況が続きました。
3月下旬には注文時間を制限していましたが、4月に新たな物流拠点が本格稼働し、出荷体制が整ったことから5月には注文制限を解除しました。

この火災では倉庫の安全管理の課題が浮き彫りになりました。原因となった古紙回収における運用状況に加え、出火後に工場内の防火シャッターの約60%が作動しなかったということです。これは工場内の障害物や火災時に電気系統のトラブルが発生したことが原因と見られています。

防火シャッターが作動しないことで工場内に火災が広がりやすくなること、さらに倉庫自体の密閉性が高いことから消化活動が難しく非常に長期間火災が続く結果となりました。

参考
日経クロステック|埼玉県三芳町のアスクル倉庫火災、太陽光は翌日までに遮断
通販通信ECMO|アスクル、火災原因の古紙回収業者を提訴…損害賠償額は101億円
防災意識を育てるWEBマガジン|12日間燃え続けた「アスクル倉庫火災(2017年)」の教訓
ネットショップ担当者フォーラム|アスクルの「LOHACO」が24時間注文受付を再開、倉庫火災後のサービス復旧進む
日流ウェブ|アスクル/埼玉物流倉庫 資産121億円/保険金最大で46億円

コープデリのシステムエラー

生鮮食品を中心に定期商品配達をしているコープデリでは、2021年5月にシステムエラーが発生し5/10~5/14配送予定だったほとんどの商品が配送不可となりました。

原因は老朽化していた物流システムを新しいシステムに入れ替えたこと。新システムに入れ替えた後、倉庫でどの箱にどの商品を入れたらいいか作業員が確認するための集品セットデータが作成できなくなったということです。

コープデリは定期購入のため、配送不可になった分に関しても事前に請求済み。そのため返金対応も発生しました。システムはその後旧システムに戻して5/17から配送が再開されています。

参考
コープみらい|物流システムトラブルの影響によるお届け商品に関するお詫びとお知らせ(5月11日16時更新)
日経クロステック|コープデリ連合会の宅配サービスが終日配送をほぼ停止、新物流システムが正常稼働せず
日経クロステック|コープデリ連合会の宅配は5月17日週に再開か、システム障害の復旧状況は明らかにせず

白鳩のオートストア導入に伴うトラブル

倉庫内のピッキング作業をロボットが行うことで業務効率化と稼働力アップを実現できるオートストア。
女性下着のEC販売を手がける白鳩ではオートストア導入によるトラブルが発生しました。

当初、白鳩では需要の拡大に対応し、出荷量を従来の2倍に引き上げるためにオートストアを導入する計画を立てていました。
しかし、2020年8月にオートストアを導入すると、想定していなかった不具合が発生。出荷数が著しく減少したといいます。

その後、オートストア導入前の出荷量には戻るものの、想定していた2倍の出荷量には至らず。
コロナ禍で売り上げはアップしているものの、導入に際して膨大な投資額となっているため、
赤字は前年比2.2倍程度の0.8億円まで膨らみ、最終損失は0.9億円となりました。

参考
LogisticsToday|白鳩の新物流拠点で混乱、オートストア運用ネック

トラブルが起きる理由

ここまで4つの自社EC物流センターのトラブル事例を紹介しました。それぞれの発生理由を改めて分析してみます。

突発的なトラブルに高度に自動化されたシステムが対応できなかった

オイシックス・ラ・大地の出荷トラブルについては、システムの仕様が稼働初日にしか起こり得ないトラブルと結びつき発生したものと捉えられます。
倉庫に品物がないというのは移転初日しかあり得ませんし、移転先が旧拠点と同じ海老名エリアということで
入荷が遅れることも想定しづらかったかもしれません。
シミュレーションが難しい側面があったことは事実でしょう。

そして、高度に自動化が進んだシステムは、このような初期条件を満たさないトラブル
への対応力が非常に弱いことが実証されたともいえます。

安全管理不足

アスクルの倉庫火災は日常の安全管理や工場内の環境整備が重要であることを再確認できる事例といえます。
直接の火災原因が委託先の作業によるものということで、出入りの業者に課すルールの整備も自社でEC物流倉庫を運営するなら必要です。

新システムのシミュレーション不足

コープデリのシステムエラーは、旧システムを一気に新システムに乗り換えることで発生しています。
システムの乗り換えは少しずつ行うのは難しく、多くの場合は一回で一新されます。
実業務に多大な影響がある分、業務フローに沿って厳密なシミュレーションを行う必要があると言えるでしょう。

新ソリューションのシミュレーション不足

白鳩のオートストア導入時のトラブルに関しても、想定外のトラブルやオペレーションの遅滞が発生したということで、
シミュレーション不足が考えられます。

特にオートストアに関しては既存の人力のオペレーションを全てロボットに置き換えることになるため、
想定外のことが多発する可能性は高いです。

自社物流の場合に普段から行っておくべきトラブル対策

自社で物流業務を行っている場合に普段からどのようなトラブル対策を行っておくべきなのでしょうか。
事業が発展していく中でのシステムの新調や入れ替えは、いつかは必ず検討していくことになるため、それを見据えて日常業務を行うことも重要です。

日程に余裕を持ち準備を行う

移転や導入の日程が決まっているのであれば、余裕を持って準備を進めましょう。
急なリソース不足が発生しないように、社内のスタッフやパートナー企業の稼働を確実に抑えておくことも必要です。
また、運搬の遅れ等物理的なトラブルが発生することを想定し、工程には余裕を持たせましょう。

小規模な拠点でシミュレーションを

いきなり大規模拠点でシステムやソリューションの導入・入れ替えを行った場合、トラブルによる被害の規模も大きくなります。
まずは小規模拠点で問題なく稼働するかシミュレーションを行い、発生しうるトラブルや解決策を洗い出した上で本格導入するのが安全です。

システムが稼働しない場合のマニュアルを作成する

万が一システムが稼働しない場合、全ての工程が止まってしまうというのも現在の自動化された工程では珍しくありません。
いよいよとなれば手動で作業をしなければなりませんので、その際のマニュアルも用意しておく必要があります。

普段からスタッフに複数工程を経験させておく

トラブルの際には問題の箇所をカバーするためには何が必要か想像力が必要です。
普段から1つの工程しか担当していなければ、自分の工程以外の事は解決できません。
しかし、複数工程を経験していればどのように工程がつながっているのか、どのような仕組みで動いているのかを理解しやすくなります。
万が一システムの不具合が発生しても、補う動きを発想できるのです。

導入に向けては関係する部署を参画させヒアリングを

IT系のソリューション導入において、一部のIT系の部署が中心で話を進めてしまい、
導入の段階で現場に即していないことがわかったということもよくある話です。
現在の課題や現実の作業状況、環境などをしっかり把握するために、
システム・ソリューション導入においては、業務で触れる可能性のある部署・担当は必ず参画させるようにしましょう。
また、従業員への作業状況のヒアリングなども適宜行いましょう。

事故や災害時のマニュアル頒布、安全対策を徹底

事故や災害時にどのような対応をすればいいのかを従業員が把握していないことで、不適切な対応になってしまい、
従業員の生命が脅かされたり被害が広がることもあります。普段から緊急事態用のマニュアルを頒布し安全教育を行いましょう。
また、倉庫内の行動のルールを出入りするあらゆる人に徹底することも必要です。

まとめ

自社で物流業務を行っている場合には事故や災害を除けばシステムの入れ替えや新ソリューションの導入時にトラブルが発生しやすいです。
何もなく導入できればいいですが、必ず何かトラブルは発生すると言う意識で準備しておくに越したことはありません。

また、事業の発展に伴い物流業務が拡大していくと、システムや新ソリューションのアップデートだけではカバーしていくことが困難になり、
運営体制を大きく見直す必要が出てくる段階に入ります。
そのようなときには、物流業務のアウトソーシングの検討をお勧めいたします。
ディーエムソリューションズ(弊社)が提供するウルロジではシステム連携して出荷業務を遂行することが可能です。
自社では難しい業務もウルロジにアウトソーシングすることで業務効率化やリスク回避につながりますので、是非ご検討ください。

ウルロジへのお問い合わせはこちらから

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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。