IoTとAIが変える物流の未来とは?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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「物流」という業界をイメージしたときに、古くアナログなイメージがまずは浮かぶと思います。

しかし、近年は物流業務にIoTやAI(人口知能)を活用する事例が増えてきています。

「IoT」とは「Internet of Things」の頭文字を取った単語です。日本語では一般的に「モノのインターネット」と呼ばれています。IoTを簡単に説明すると、「身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる」仕組みのことです。

実際にどういった活用方法をされているのかご紹介していきます。

物流業界の課題とは?

近年、物流業界にIoTやAIの活用が進んでいる背景には、物流業界の課題が大きく関係しています。
実際にどういった課題があるか見ていきましょう。

労働力の不足

数ある課題の中でも、特に深刻なのが労働力の不足です。

例えば宅配便の取扱個数は、平成10年には1,833百万個でしたが、平成28年には4,019百万個を突破しています。(※1)

運ぶ荷物の増加量に、労働力の確保が追いついていないのです。最近では外国人スタッフを積極採用数する動きがありますが、それでも依然として労働力は足りていません。

人の力が必要な部分はもちろん残りますが、機械やインターネットによる業務効率化が必要不可欠なのです。

※1 引用元 平成28年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法 – 国土交通省

リードタイムの短縮

インターネットの普及により、モノの動きが急速に早くなりました。通販でも注文の翌日に届くことが当たり前になり、物流においてはいかにも早くモノを運ぶか。が重要になってきています。

リードタイムの短縮には、リアルタイムに状況を把握し、最適な運用をすることが必要です。また、業務スピードを上げる一方で、いかにミスを少なくするか。が課題になっています。

物理的距離や時間的距離

物流業務の本質は物理的・時間的な距離を克服することにあります。そのうえでの課題が、距離的に離れた人や物をいかに管理するかです。業務の中で、遠くの人とやり取りをしたり、保管する時間を管理したり、そういった業務をミスなく行うことが重要です。

遠い場所の人やモノをいかに繋げてミスなく管理できるかが、業務を効率化するうえで重要になっているのです。

IoTとAIを活用した改善方法とは?

それでは、実際に現場ではIoTやAIはどのように使われているのでしょうか?技術や実例を見てみましょう。

RFID

RFIDとは「Radio Frequency Identification」の略で、小さなICチップに記録されたデータを電波や電磁波などの無線通信によって読み取り、管理する技術です。

身近な例では、駅の自動改札機で使われています。

同じように、モノを読み取って管理する仕組みにバーコードがありますが、RFIDはバーコードとは異なり、離れた場所から複数のICタグ情報を読み取ることが出来ます。

これにより、倉庫の入庫時の検品作業やロケーション管理が効率的かつスピーディーに行うことが出来るようになりました。

WMS(倉庫管理システム)

WMSとは「Warehouse Management System」の略で、倉庫管理システムのことです。

倉庫での入荷~出荷までの業務を効率化するためのシステムで、主な機能としては入荷時検品、入庫、ロケーション管理、出庫、出荷時検品、在庫参照などがあります。

従来は倉庫内の情報管理は紙やエクセルなどが用いられてきましたが、WMSという倉庫管理専用のシステムを使用することにより、バーコードスキャンによる情報入力や実在庫のリアルタイム把握などを行うことが出来、誰でも正確な情報を管理することが出来るようになりました。

現在では多くの倉庫で導入されており、様々な企業がWMSサービスを提供しています。

EDIシステム

EDIシステムとは「Electronic Data Interchange」の略で、取引を標準的な書式に統一して、企業間で電子データとして交換する仕組みです。

物流業界では、今まで電話やFAXなどで行っていた受発注や帳票の取引をコンピュータネットワークを介して行い、オンラインで行うことを指します。

EDI化によりデータ共有を運送業者と荷主間で電子的に行うことで、輸配送、指示、追跡を容易に行うことが出来ます。また、電子化により人的ミスによるリスクが低減し、業務の効率化を行うことが出来ます。

スマートロジスティクス

スマートロジスティクスとは、直訳すると賢い物流という意味ですが、物流業界では、最新技術を用いて物流コスト・業務時間の最適化、貨物のセキュリティの向上などを目指す仕組みという意味で用いられます。

倉庫内では、ロボットやベルトコンベヤーを利用した自動搬送や、ロボットアームを利用した自動ピッキングや仕分け、メガネ型ウェアラブルデバイスを用いた人的作業の効率化などを行っています。

輸送網の効率化の部分では、トラックの自動走行やドローンを利用した輸送などの実現が目指されています。

ドローン

スマートロジスティクスの項目で出てきた「ドローン」ですが、もう少し詳しくみていきましょう。

「ドローン」とは、小型の無人航空機のことです。現在では、空撮や農薬の散布などの活用が広がりつつありますが、物流においても活用が期待されています。

具体的には、ドローンを用いた荷物の配送です。

無人で荷物配送が可能なため、物流業界の労働力不足に対する対策や、インフラ整備を必要とせずに空を飛んで荷物を配送できるなどのメリットがあります。

国土交通省では、早ければ2018年中にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指し、事業化に向けた検討を進めています。

AI

AIとは「Artificial Intelligence」の略で人工知能のことです。

通常のコンピュータープログラムとは異なり、経験から学習したり、理論的な推測を行うことが出来ます。

様々な分野での応用が期待されていますが、物流業界でも活用が始まっています。
具体的な事例では、倉庫内のピッキングの際に回転率のいい商品のスペースで渋滞が起こることがあります。そこでAIを導入することでピッキングの作業順を最適化し、渋滞を起こりづらくする仕組みなどが活用されています。

まだ導入事例が多くはありませんが、今後はより多くの業務でAIが活用されることが予測されています。

活用事例

上記では、IoTやAIの仕組みをご紹介しましたが、ここでは実際に企業で用いられている例をご紹介します。

ヤマト運輸が2013年にオープンした日本最大級の物流センター「羽田クロノゲート」では、様々な最新技術が使われています。

スパイラルコンベア

クロノゲートでは、荷物の上下移動にスパイラルコンベヤが使用されています。従来のエレベーター搬送では実現できなかった「止まらずに上下移動」が可能になり、スピードと品質が向上しています。

クロスベルトソーター

ベルトコンベヤ-の枝分かれの部分で、アームや段差などを使わずに底面をスライドさせることで仕分けをします。そうすることでより丁寧に荷物を取り扱うことが出来ます。

前詰め搬送機

荷物が積まれたロールボックスパレットの移動を機械化し、自動搬送することで省力することが可能になっています。

ロボットアーム

荷物を適切に認識し、ロボットアームを用いてベルトコンベヤ-などに移すことによって省力化と丁寧な荷扱いを実現しています。

フラットソータ

冊子型の荷物を自動で仕分けることが出来る機械です。自動化によりスピーディかつ高品質な仕訳を実現しています。

おわりに

物流業界は、人の力に頼ることが多い、古い業界だと思われるかもしれませんが、様々な業務でIoTやAI等の最新技術が使われています。

最新技術の導入により、人の力がゼロになることはありませんが、人と最新技術の共存が始まっているのです。

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角田和樹
上場企業の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。通販エキスパート検定1級・2級を保有。 現在は物流代行サービス「ウルロジ」のマーケティング全体設計を担う。自社でEC事業やクラウドファンディングも実施しており、ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流だけでなくEC事業者の両面から情報発信を行う。