工程・品質管理におけるトレーサビリティとは?

2021.11.29物流・フルフィルメント
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最近、スーパーの食品などで産地や生産者が顧客にも分かるように、トレーサビリティを強化している店舗や企業をよく見かけます。

作り手が見える食品の方がそうでない商品に比べ信頼度が格段に高くなるため生鮮食料品を取り扱う企業では重要視されていますが、通販倉庫や物流倉庫などの流通業でもこのトレーサビリティはとても重要で、どの物流業も積極的に取り入れています。

今回は物流業のトレーサビリティを中心に、近年注目されているIT業界まで、それぞれの業種で取り入れられているトレーサビリティとはどんなものなのか、またなぜ重要なのかについて解説します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは直訳すれば「追跡が可能な」という意味になります。

例えば加工肉ではどこの牧場で飼育された個体番号何番の牛や豚がどこで加工され、どのような商品になりどこの店頭に並ぶか、という一連の商品が生産され消費者に販売されるまでの流れを可視化したものになります。

家畜や野菜を育てたりなど生産までは行っていないレストランや食料品店でも、生産企業から加工業者、一般のお客様に提供するサービス業までの異業種の企業間で情報を公開し、どの材料がいつどこで加工され出荷されたのかが共有されるシステムをチェーントレーサビリティと呼び、各企業一つ一つの社内での流れの情報を内部トレーサビリティと呼びます。

物流や製造業の場合は商品がどこでどの部品を使われて製造され、どの倉庫に保管されどの店舗やお客様、または企業に出荷されるか、と言った一連の情報を可視化する事が物流や製造業のトレーサービリティーになります。

また、商品が廃棄や返品されたものに関してもどのような場所を通って商品が移動したかも記録が残るようになっています。

物流や製造業のトレーサビリティは顧客に商品に関しての情報開示をするだけでなく、社内で働くスタッフたちにも商品のストック位置を一目で把握できたり、不具合のある商品を発見した場合、どの段階で不具合が発生したかが追求できるため、顧客だけでなく従業員にとっても欠かせないものになっています。

そしてお客様や相手先の企業に配達するため物流倉庫から出荷された商品は、運送会社のトレーサビリティシステムにより、お客様側からも出荷元の企業からもリアルタイムで荷物の追跡ができるようになっています。

かつては商品が実際に届けられるまで現在荷物がどこにあり、どのような状態であるかは知ることができなかったため企業も顧客も不安でしたが、トレーサビリティを取り入れることによって、顧客からの信頼を得ることができ、今日のEC業界の成長などに繋がっています。

トレースフォワード(追跡)とトレースバック(遡及)とは?

トレーサビリティで製品の流れを確認するには「トレースフォワード」と「トレースバック」という二種類の方法が存在します。

トレースフォワードとは

トレースウォワードとは商品が生産されてからお客様に届くまでの情報を時系列順に追ってチェックする方法になります。

例えば大量に存在する商品全てに同じような不良箇所が見つかった場合、原因を究明するために製造段階から現時点までの商品の流れを確認することで不良が発生した段階がわかり、そこからどの部品、またはどの作業方法に不具合があったのかが明確になります。

トレースバックとは

トレースバックとは反対に現時点から時系列とは逆に遡って順番に商品の流れをチェックする方法になります。

食品に異物が混入していた場合などはトレースバックで商品の流れを巻き戻して確認し、どの段階で、どこの製造元で作られた商品なのかがわかりやすく、同じ個体番号の材料で製造された商品の出荷をストップさせることができます。

国による法規制

世界標準で品質管理が正しく行われ、信頼のおける企業に与えられるISO9000シリーズという世界共通の規格、またはその日本国内版であるJIS Q 9000シリーズにもトレーサビリティを必ず取り入れるように定義されています。

ISO9000シリーズの中の品質マネジメントシステムに関する事項であるISO9001の中には規約として、倉庫業、製造業、小売において商品の製造過程から商品を保管、出荷や販売するまでの全ての工程で情報を記録し、保管しておく義務があるとされています。

流通・EC・ITにおけるトレーサビリティ

お客様にサービスを提供する企業としてトレーサビリティは流通業やECの他に、IT業界でも重要視されています。

流通業界のトレーサビリティ

流通業界では商品の運送状況、どこの営業所を何時に出発してどこに何時に入荷されたのか、などの商品の所在や移動経路はもちろんのこと、加工食品を流通させる場合でも生産前の原材料からトレーサビリティを取り入れています。

食品を生産、加工する際の牛や豚などの原材料は識別番号で管理されており、どこの材料をいつ入荷させ作られたのかが明確に分かるようになっており、そのような商品は安全性が高いと認識され、企業の信頼度も高くなります。

また万が一食品に異物混入や品質が悪いものが見つけられた場合全ての流通をストップするのではなく、加工した企業や、材料を生産した牧場など、不具合が特定された企業のみの生産をストップすることができるため、販売する方もリスクが少なくなります。

EC業界のトレーサビリティ

EC業界のトレーサビリティは商品、またはお客様の出荷荷物全てにおいて二次元コードによる管理がされており、社内の現場のスタッフから責任者まで、商品がどこにあり、どのような状態で保管されているのかが分かるようになっています。

また出荷したお客様の荷物の行方がスタッフも顧客にも容易にわかるようになっており、配送遅延やトラブルなどもどこで発生したのかが即分かるようになっています。

IT業界のトレーサビリティ

物流や通販、製造業と同じ様にIT業界でもトレーサービリティは重要で、ホームページやIT機器の開発、製造においての全段階で情報共有ができるようにする必要があります。

ホームページやシステム開発におけるソースコードや設計書などの完成前の情報や、テスト結果やそれぞれの業務でかかったコストなど完成後の情報も全て社内や顧客に共有できるようにし、自社の信頼度を上げているのです。

おわりに

スーパーやファミリーレストランでは、近年、どの牧場のどこの個体番号の牛や豚、鶏を使用した商品なのを明確にするようになってきています。

このようなトレーサビリティは導入すればもちろんコストがかかるのですが、それ以上に顧客の信頼を得ることができます。

どの業界においても安価であることよりも信頼性、高品質なサービスが求められるようになっており、今後もトレーサビリティは、様々な業界で取り入れられて行くことでしょう。

タグ : 用語
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。