滞留在庫とは?EC事業者向け具体的な改善方法と成功事例

2025.01.29物流・フルフィルメント
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滞留在庫とは?EC事業者向け具体的な改善方法と成功事例

「在庫が売れ残って困っている」「滞留在庫を抱えて売上が伸び悩んでいる」

ECサイトを運営する中で、このような悩みを抱えている方は少なくないのではないでしょうか。滞留在庫は、保管コストの増加や商品価値の低下を招き、最悪の場合は廃棄処分を余儀なくされます。

この記事では、滞留在庫の基礎知識や具体的な対処方法、改善方法を解説します。すでに滞留在庫の問題を抱えているEC事業者の方はもちろん、今後の対策を検討している方もぜひお役立てください。

なお、ウルロジでは倉庫管理システム(WMS)の導入により、ロット管理や消費期限管理、在庫数チェックなどを行い、在庫管理にかかる手間やコストを大幅に削減できる環境を整えています。在庫管理だけでなく、商品の入庫・保管から梱包・発送まで全ての物流に対応可能です。ウルロジのサービスについて詳しくは、以下のページよりご覧ください。

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滞留在庫とは?

滞留在庫とは?

滞留在庫とは、長期間販売されずに倉庫に置かれたままの商品のことです。ECサイトを運営していると、売れると思って仕入れた商品が予想以上に売れ残ってしまうことがあります。

例えば、人気が出ると思って大量に仕入れたにもかかわらず売れなかったアパレル商品や、賞味期限までに売り切れなかった食品などが滞留在庫になります。放置すると保管コストがかさみ、最悪の場合は廃棄せざるを得なくなるため、EC事業者にとって大きな課題となっています。

余剰在庫・不良在庫との違い

在庫管理で似たような言葉として「余剰在庫」や「不良在庫」があります。

余剰在庫は、需要予測より多く持っている在庫のことで、まだ通常価格で販売できる可能性がある商品を指します。不良在庫は、品質が悪化して商品価値が大きく下がった在庫のことです。

一方、滞留在庫は長期保管が特徴で、このまま放置すると余剰在庫から不良在庫へと状態が悪化していく可能性がある在庫を意味します。つまり、滞留在庫は問題が深刻化する前の警告サインといえます。

EC事業者が滞留在庫を抱えるリスク

EC事業者が滞留在庫を抱えるリスク

滞留在庫は、EC事業の収益性と成長を直接的に脅かす重大な経営課題です。特にEC事業では、資金繰りや倉庫運営、商品価値など、さまざまな面でリスクが生じます。ここでは、早急に対応が必要な滞留在庫のリスクを詳しく解説します。

キャッシュフローに影響する

滞留在庫は、商品仕入れに使用した資金が長期間動かせなくなる状態を引き起こします。例えば、100万円分の商品を仕入れたものの売れ残った場合、その資金は倉庫に眠ったままとなり、新商品の仕入れや広告宣伝費として使用できません。

特にEC事業では、市場トレンドの変化に合わせたタイムリーな商品展開が不可欠です。季節商品やトレンド商品は、適切なタイミングでの仕入れが売上に直結するため、資金が固定化されると競合他社に後れを取ったり、売上機会を失ったりするリスクが高まります。

結果として、事業の成長機会を逃すことにつながるでしょう。

保管コストが高くなる

滞留在庫の保管には、想像以上の費用がかかります。まず、倉庫のスペース料金は保管量に応じて発生するため、売れない商品を置いておくだけで毎月の固定費が増加していきます。その他に、以下のコストも必要です。

  • 在庫管理システムの利用料
  • 商品の状態を定期的にチェックする人件費
  • 棚卸作業の工数 など

特に温度管理が必要な商品や、傷つきやすい商品は、より丁寧な管理と適切な保管環境が求められるため、コストは更に上昇します。滞留在庫が占めるスペースは、新商品の保管場所を圧迫し、倉庫全体の運営効率を低下させる原因となるでしょう。このようにして、事業の収益性を徐々に蝕んでいきます。

商品価値の低下を招く

長期保管は、商品価値を大きく低下させます。具体的には、以下のとおりです。

  • アパレル商品は季節が過ぎると大幅な値下げを余儀なくされる
  • 食品類は賞味期限切れのリスクを抱える
  • 電化製品は新モデルの発売により旧モデルの価値が急速に下がる
  • 化粧品は保管期間が長くなると品質劣化の可能性が高まる

例えば、定価1万円の商品を5,000円まで値下げしても売れない場合、最終的に原価以下での販売や廃棄処分を検討せざるを得ません。商品価値の低下は、直接的な損失だけでなく、ブランドイメージの低下にもつながり、長期的な事業価値を損なう恐れがあります。

滞留在庫が発生する原因

滞留在庫が発生する原因

滞留在庫は、単一の要因ではなく、複数の問題が重なって発生することが一般的です。需要予測の誤りや在庫管理の不備、組織的な課題など、その原因は多岐にわたります。ここでは、EC事業者が特に注意すべき4つの主な発生原因を解説します。

需要予測を誤った

需要予測の失敗は、滞留在庫発生の最も一般的な原因です。EC事業者は、過去の販売データや市場トレンド、SNSでの反応などを参考に商品の需要を予測しますが、実際の売れ行きは予想と大きく異なることがあります。特に新商品の場合、参考となる過去データがないため予測が難しく、安全を見越して多めに発注してしまいがちです。

また、季節商品は天候の影響を受けやすく、アパレル商品はSNSでのバズり具合で需要が大きく変動します。競合他社の動向や経済状況の変化なども、需要予測を困難にする要因となります。

在庫管理がうまく機能していない

効果的な在庫管理システムの欠如は、滞留在庫を生み出す重要な要因です。EC事業者の中には、エクセルでの手作業管理や、複数の倉庫での分散管理により、正確な在庫数の把握ができていないケースもあるでしょう。

そうすると、すでに十分な在庫があるにもかかわらず追加発注をしてしまったり、逆に在庫切れに気づくのが遅れて急いで大量発注したりするケースが発生します。また、商品の入出荷データがリアルタイムで更新されないことで、販売機会の損失や過剰在庫を招くことも少なくありません。

結果として、適切な発注タイミングを逃し、滞留在庫が徐々に蓄積されていきます。

在庫管理については、下記の記事も併せて参考にしてください。

>>在庫管理の重要性と適切に管理する方法とは?

部門同士の連携がうまくできていない

EC事業運営において、販売部門・仕入れ部門・物流部門の連携不足は深刻な問題を引き起こします。例えば、販売部門は売上目標達成のため大量発注を望みますが、物流部門は保管スペースの制約から在庫抑制を求めるなど、部門間で相反する要求が生じるケースがあります。

また、各部門が独自の予測や判断基準で行動するため、全体最適な在庫計画が立てられません。特に複数の倉庫で在庫を保管している場合、各倉庫の在庫状況や入出荷予定が共有されないことで、一部の倉庫で在庫過多が発生し、滞留在庫につながります。定期的な部門間会議の不足も、滞留在庫の問題を悪化させる要因の一つです。

季節・トレンドが影響している

季節商品やトレンド商品は、販売可能な期間が限られているため、滞留在庫のリスクが特に高くなります。例えば、以下のようなケースです。

  • 夏物水着は秋以降になると急激に売れ行きが落ちる
  • 冬物コートは春を過ぎると需要がほぼなくなる
  • SNSで話題になった商品は、ブームが去ると急速に売れなくなる

その他に、天候不順による季節の遅れや早まりも、販売計画に影響を与えます。ECサイトは実店舗と違い、季節外れの商品は検索に表示されにくく、在庫が残りやすい傾向にあります。その結果、倉庫で1年以上眠る商品が発生してしまうこともあるでしょう

滞留在庫への対処方法

滞留在庫への対処方法

滞留在庫は、早期に対応すれば損失を最小限に抑えられます。セール販売や専門業者への売却、新たな販売方法の工夫など、状況に応じた適切な対処が重要です。ここでは、効果的な3つの対処方法を具体的に解説します。

セール価格で販売する

滞留在庫を抱えた場合、最も一般的な対処方法は値下げによる販売です。具体的には、以下の方法があります。

  • セール価格での販売
  • 期間限定タイムセール
  • アウトレット販売 など

利益率は低下しますが、在庫を長期保管するよりも損失を最小限に抑えられます。ただし、値下げ幅や実施タイミングは、慎重に検討する必要があります。極端な値下げは商品価値やブランドイメージを損なう可能性があり、一方で小幅な値下げでは在庫削減の効果が限定的です。

また、定期的なセールに頼りすぎると、顧客が値下げを待つようになり、通常価格での販売が困難になるリスクもあります。

専門業者に買い取ってもらう

在庫買取業者への売却は、迅速な資金回収が可能な対処方法です。買取業者は独自の販路を持っており、通常の小売市場では売りにくい商品でも買い取ってくれる可能性があります。また、大量の在庫を一括で売却できるため、保管スペースの確保と運転資金の回復を同時に実現できます。

ただし、買取価格は市場価格を大きく下回ることが一般的で、高額商品の場合は大きな損失につながることも少なくありません。ブランド価値の保護や取引先との関係維持の観点から、安易な買取業者への売却は避けた方が良いケースもあります。

クロスセル・アップセルに活用する

滞留在庫を単体で売るのではなく、人気商品とセット販売したり、付属品として活用したりして、新たな商品価値を作り出すのも対処法の一つです。例えば、以下の方法があります。

  • 売れ筋商品とのセット販売
  • 限定商品としての再パッケージ化
  • ノベルティとしての活用 など

このようなクロスセル・アップセルへの活用は、単なる値引き販売と比べて商品価値やブランドイメージを維持しやすい利点があります。人気商品の販売促進効果も、期待できるでしょう。

ただし、セット商品の価格設定や組み合わせ方には工夫が必要で、在庫状況や市場ニーズを考慮した戦略的な販売計画が重要となります。

クロスセル・アップセルについて、以下の記事も併せてご覧ください。

>>クロスセルとは?事業の総売上額の増やし方を紹介

>>アップセルとは?ECにおける顧客購入単価の向上方法を紹介

滞留在庫に対するEC事業者の対処事例

滞留在庫を公式ECサイトでアウトレット販売した事例

引用:アウトレット | 花王公式通販【My Kao Mall】

滞留在庫を抱えた企業は、実際にどのような対策をしているのでしょうか。ここでは、花王株式会社を例にご紹介します。

花王は2023年8月から、自社工場や物流拠点で発生した滞留在庫を公式ECサイト「My Kao Mall」でアウトレット販売を開始しました。ケイト(化粧品)、フリープラス(スキンケア)、ビオレ(ボディケア)などの商品を通常価格より安価で提供し、商品は毎月入れ替えています。

これまで社員向け販売や廃棄処分で対応していた滞留在庫を、一般消費者向けに販売することで、資源の有効活用と廃棄コストの削減の実現を目指しているようです。改良やパッケージ変更による旧商品、安定供給のための余剰在庫など、さまざまな理由で発生した滞留在庫の新たな販路として注目されています。

滞留在庫を未然に防ぐための対策

滞留在庫を未然に防ぐための対策

滞留在庫は、発生してからの対処より、未然に防ぐことが重要です。適正在庫の把握や定期的な在庫チェック、システムの活用など、予防的な対策を講じることで、滞留在庫のリスクを大きく減らせます。ここでは、EC事業者が実践したい予防策を解説します。

適正在庫を把握・見直しする

適正在庫を維持するためには、商品ごとの在庫回転率を継続的に分析することが欠かせません。在庫回転率の計算式は、在庫数による計算と金額による計算の2通りがあり、以下のとおりです。

▼在庫数による計算

在庫回転率 = 出庫量 ÷ 平均在庫数

▼金額による計算

在庫回転率 = 売上原価 ÷ 棚卸資産

在庫回転率が高いほど、在庫管理が効率的に行われていることを示します。ただし、適切な在庫回転率は、商品カテゴリーごとに異なります。定期的に在庫回転率を計算し、基準値を下回る商品は、発注量の見直しや販売促進策の実施を検討すると良いでしょう。

在庫回転率について、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

>>EC物流で在庫回転率を上げて仕入れの適正化やロス削減を!

>>【具体的な計算例付き】在庫回転期間と在庫回転率をわかりやすく解説!

定期的に棚卸しをして在庫数をチェックする

定期的な棚卸作業は、滞留在庫の早期発見と予防につながります。実地棚卸を通じて、在庫管理システム上の数値と実際の在庫数を照合することで、データの正確性を確保できます。

棚卸し作業では商品の保管状態や劣化状況も確認でき、品質管理の面でも重要です。特にECサイトで取り扱う商品は、実店舗と比べて商品の現物を日常的に確認する機会が少ないため、定期的な棚卸の重要性が高くなります。

在庫管理は少なくとも年1回は行う必要がありますが、徹底的に行いたい場合は半年に1回や四半期に1回の頻度で行いましょう。棚卸データを分析することで、商品ごとの滞留期間が可視化でき、早期対策につながります。

倉庫管理システムを導入する

倉庫管理システム(WMS)の導入は、滞留在庫の発生を効果的に防ぐ対策です。WMSは入出荷データをリアルタイムで管理し、在庫状況を正確に把握できます。また、商品ごとの在庫回転率や保管期間を自動で計算し、滞留リスクの高い商品を早期に特定することも可能です。

AIを活用した需要予測機能により、適切な発注量の設定や、季節商品の計画的な入れ替えにも対応できます。バーコードやRFIDを活用した在庫管理により人的ミスも減り、より精度の高い在庫管理を実現できます。導入時には初期費用やスタッフのトレーニングコストが必要ですが、長期的には人件費削減や在庫最適化による大きなコスト削減効果が期待できます。

WMSについて詳しくは下記の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

>>WMS(倉庫管理システム)の機能とメリット・デメリットについて

ウルロジでは倉庫管理システム(WMS)を導入し在庫管理を効率化している

なお、EC物流代行サービス「ウルロジ」では、約20種のAPIと連携可能な倉庫管理システム(WMS)を導入しているため、以下のような在庫管理の手間やコストを大幅に削減できます。

  • ロット管理 / 消費期限管理
  • セット商品設定・商品一括登録
  • 在庫数チェック

在庫確認がオンラインで完結するため、状況の把握や社内での共有が容易になり、普段の業務負担が軽減できます。ウルロジのサービス内容について詳しくは、以下ページよりご覧ください。

>>徹底した在庫管理が可能なEC物流代行サービス「ウルロジ」の資料をダウンロードする

EC物流代行サービスで在庫を最適化する

EC物流代行サービスの活用は、専門的なノウハウを持つ事業者に在庫管理を任せることで、効率的な在庫運用を実現できる方法です。物流代行業者は多数のEC事業者から預かった在庫をまとめて管理することで効率化を図り、その結果として保管コストを抑えることができます。

また、最新の倉庫管理システムを導入していることが多く、リアルタイムでの在庫状況確認や出荷状況の把握が可能です。特に季節商品や消費期限のある商品は、専門スタッフによる徹底した在庫管理により、滞留在庫の発生を未然に防げます。需要の変動に応じて柔軟に保管スペースを調整できるため、固定費の抑制にも効果的です。

ウルロジでは物流のプロである専門スタッフが物流業務を伴走サポート

ウルロジでは、倉庫管理システム(WMS)の導入により在庫管理を徹底しているのはもちろんのこと、物流のプロである専門スタッフが物流業務を伴走し、サポートします。

チャットツールによる連携で円滑にコミュニケーションが取れる体制を整えておりますので、いつでも気軽に業務について相談していただけます。EC物流代行サービスの導入を検討されている方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。

>>自社の在庫管理を含む物流状況をウルロジに相談する

滞留在庫対策にはEC物流代行サービスのウルロジを活用しよう

滞留在庫対策にはEC物流代行サービスのウルロジを活用しよう

EC事業における滞留在庫の問題は、適切な管理体制の構築により防ぐことができます。ウルロジでは、最新のWMSを導入しており、在庫状況や出荷状況をインターネット上でリアルタイムに確認できます。

また、在庫状況や出荷状況は社内で簡単に共有できるため、部門間の連携強化にも役立つでしょう。専門スタッフによる徹底した在庫管理と、豊富な実績に基づく需要予測により、滞留在庫の発生を未然に防ぐことが可能です。EC事業の成長に伴う物流管理の課題解決について、まずは無料相談から始めてみませんか?

「現在の条件の金額が知りたい」「システムの詳しい説明が聞きたい」など、いつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。

タグ : ECお役立ち情報 在庫管理 EC物流
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角田和樹
上場企業であるディーエムソリューションズ株式会社の物流関連サービスで15年間、営業やマーケティング、物流企画など様々なポジションを経験。 現在は物流・発送代行サービス「ウルロジ 」のマーケティング全体設計を担う。通販エキスパート検定1級・2級を保有し、実際に食品消費財のEC事業も運用。ECノウハウに対しても深い知見を持ち、物流事業者としてだけでなく、EC事業者の両面からnoteウェビナー等での情報発信を行う。