チャージバックとは?発生する要因とEC事業者の対応について解説
2024.01.16店舗運営チャージバックとは、商品の不良やクレジットカード不正利用などの理由により、
クレジットカードの名義人であるお客さまが支払い拒否の請求を行い、クレジットカード会社が加盟店に対して代金の支払いを取り消すことをいいます。
代金の支払いが取り消されてしまうと、商品が配送済みであるにも関わらず売上が回収できない事態となり、EC事業者にとっては大きな損失となります。
総務省の情報通信白書令和3年度によると、インターネットで商品やサービスを購入する際の決済方法は、約8割がクレジットカード決済。
この事実からも、EC事業者がお客さまのニーズに応えながら売上を伸ばしていく上で、クレジットカード決済の導入は欠かせないものですが、
チャージバックによって大きな損害を被るリスクもはらんでいます。
したがって、EC事業者にとっては、チャージバックについて理解を深め、事前の対策を講じることが必要不可欠です。
今回の記事では、チャージバックが発生する要因から、実際に発生した場合の流れ、EC事業者がとりうる対策までわかりやすく解説していきます。
目次
チャージバックとは?
チャージバックとは、クレジットカード名義人からの支払い拒否の請求を受け、
クレジットカード会社が事実関係を調査した上で、一定の条件下で加盟店に対して支払いを拒否することです。
VISAやMastercardなどといった、クレジットカード国際ブランドが定めるルールにのっとり、
クレジットカード会社が利用者を不正利用から保護するために採用している仕組みです。
チャージバックが発生すると、商品が配送済みであるにもかかわらず売上金が回収できない事態になるなど、
EC事業者に大きな損害を与えるリスクがあります。
チャージバックが発生する要因
チャージバックが発生する要因としては、
「商品の不良や未配送」といった取引上の理由によるものと、
「クレジットカード不正利用」という第三者の悪意によるものの2つに分かれます。
商品の不良や未配送
商品の不良や未配送によって、お客さまがチャージバックを請求することがあります。
具体的には、商品が壊れていたり、ECサイト上の宣伝内容と実際の商品が著しく異なっていたり、
また支払いを済ませたにもかかわらず商品が一向に届かない場合などにお客さまが支払いを拒否することがあります。
クレジットカードの不正利用
チャージバックの要因として一番多いのが、クレジットカードが第三者により不正利用されたことにより、
クレジットカード名義人がチャージバックを請求するケースです。
近年では、E-コマースの拡大に伴い、クレジットカード決済の利用額も増え、
それに伴いクレジットカード不正利用の被害も拡大しています。日本クレジットカード協会の調査によると、
過去5年でクレジットカード不正利用の被害総額が倍増しており、2020年は被害総額が253億円にものぼります。
加盟店であるEC事業者は、対面取引の場合と同様、クレジットカード名義人本人が利用しているかどうかを確認する義務があります。
しかしながら、多くのECサイトではコストや煩雑な手続きによる顧客の離脱抑制の観点で、本人確認が十分にされていないケースが多いです。
悪意を持った第三者が不正に取得したクレジットカードの情報をもとに、
脆弱なECサイトで決済し、商品を転売して利益をあげるような悪質なケースにより、チャージバックが発生しています。
参考:経済産業省 令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)
チャージバック発生時の流れとEC事業者の対応
実際にチャージバックが発生した場合の流れと、EC事業者がとるべき必要な対応を解説していきます。
チャージバック発生時の流れ
1.クレジットカードの保有者がクレジットカード会社へ異議申し立て
クレジットカードの名義人であるお客さまが商品に不服を感じたり、第三者からの不正利用の発覚を理由に、クレジットカード会社へ支払い拒否の旨、異議申し立てを行います。
2.クレジットカード会社が調査、異議申し立てへの対応を決定
クレジットカード会社は、クレジットカード名義人からの申し立てを受け事実関係を調査し、加盟店と協議なく一方的にチャージバックの対応可否を判断します。
3.チャージバックを実行
クレジットカード会社は、加盟店であるEC事業者にチャージバック実行の旨、理由とともに通知します。
チャージバック発生時のEC事業者の対応
1.クレジットカード会社がEC事業者の売上を取り消す
クレジットカード会社がチャージバックの実行を決めると、商品発送済みであるかどうかに関わらず、EC事業者に通知後、EC事業者の売上を取り消します。
このとき、EC事業者は、クレジットカード会社に対して不服申し立てができますが、申し立てが受理されないケースも少なくありません。
2.EC事業者がクレジットカード会社へ利用代金を返金する
チャージバック実行時に、すでにクレジットカード会社から売上代金が支払い済みであれば、EC事業者はクレジットカード会社へ返金をする必要があります。
3.商品の不良が原因の場合は、EC事業者がクレジットカードの保有者へ商品の返送を依頼する
商品の不良が原因でチャージバックが実行された場合、EC事業者はクレジットカード保有者へ商品の返送を依頼します。
商品の返送については、クレジットカード会社は仲介せず、EC事業者が直接お客さまに返送を依頼する必要があるため、注意が必要です。
クレジットカード不正利用によるチャージバックでは、商品は悪質な第三者に渡っているため、商品が返送されず、売上代金も失うことになります。
チャージバックを未然に防ぐ方法と起きた場合の対策
ここまでお伝えしてきた通り、EC事業者にとって、チャージバックが発生すると大きな損害となってしまうため、未然に対策を講じることが重要です。EC事業者に求められる3つの対策をご紹介します。
商品の検品と適切な梱包発送スキームの確立
商品の不良や、配送遅延などの要因でチャージバックが発生しないようにするために、商品の検品や梱包発送スキームを、今一度見直しましょう。
具体的には、商品の不良や配送遅延はどの程度発生しているかという現状を把握した上で、顧客が満足する商品を、顧客が望むスピード感で提供するためにどのような対策が必要か検討していきます。物流管理のシステムを導入したり、検品を他社に外注することも1つの選択肢かもしれません。
検品や梱包発送スキームの見直しについては、下記も併せてご覧ください。
最適なセキュリティサービスの利用
コストの面や顧客体験の観点でデメリットはあるものの、ECサイトにおいて第三者による不正利用・チャージバックによる事業損失を防ぎ、そして事業の信頼性を保つ上でも、セキュリティ対策は必須です。
本人認証サービス(3Dセキュア)
本人認証サービス(3Dセキュア)とは、VISAなどの国際クレジットカードブランドが設定している、非対面取引のクレジットカード不正利用を防止するための認証サービスのことです。3Dセキュアの認証方式は、現在過渡期にありますが、基本的にはクレジットカード情報とは別に事前に登録しておいたパスワードを入力することでクレジットカード決済を可能にする方式をとります。
3Dセキュア方式を採用することで、不正利用の確率を0にはできませんが、この場合にクレジットカード決済の不正利用が発覚したとしても、EC事業者に対してチャージバックは実行されないのが最大の特徴です。
お客さまがパスワードを覚えていない場合に商品の購入を取りやめてしまうケースが発生するなど、デメリットもありますが、不正利用のターゲットになりやすい業種や不正利用の場合の損失リスクが大きい場合、導入を検討することをおすすめします。
セキュリティコード
セキュリティコードとは、クレジットカード裏面に記載されている下3桁の数字のこと。クレジットカードの実物を保有している人しか知り得ない、セキュリティコードの入力を求めることで、決済を可能にする認証方式を指します。この方式を採用していても、不正利用が発生した際にはチャージバックの対象となってしまう点に注意が必要です。
不正検知
ビッグデータを活用し、クレジットカード不正利用の特徴を捉えた上で、不正利用を検知するサービスも存在します。不正検知サービスを利用することで、商品発送前に不正に気づく可能性が高まり、損害を抑えられます。
参考:日本クレジットカード協会 クレジットカード・セキュリティガイドライン
チャージバックの保険に加入する
様々な対策を講じても、チャージバックの発生可能性を0にすることは難しいでしょう。実際に発生してしまった場合の損害をカバーする保険に加入することもおすすめです。
チャージバック保険は大手損害保険会社や決済代行会社など、各社が商品を提供しています。
ただし、チャージバック保険に入ることで、不正利用のリスクを減らすことができるわけではなく、根本的な解決にはなりません。また、一度被害に遭うと保険料が高くなる点や、実際に保険加入後にチャージバック被害に遭った場合に、支払い確定まで手続きや時間を要する点に注意が必要です。
おわりに
今回の記事では、チャージバックが発生する原因から、チャージバック実行の流れ、EC事業者がとりうる事前の対策まで、解説してきました。
チャージバックは、EC事業者にとって大きなリスクですが、チャージバックについて深く理解した上で、事前に対策を講じれば、リスクは抑えられます。
ぜひ今回の記事を参考に、チャージバックについての対策を検討してみてください。
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